MENU

牧本次生『IT立国アルメニア』あらすじと感想~急激に発展するアルメニアIT!日本はこれからどうなるのか

目次

牧本次生『IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』概要と感想~急激に発展するアルメニアIT!日本はこれからどうなるのか

今回ご紹介するのは2015年に東京図書出版より発行された牧本次生著『IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』です。

早速この本について見ていきましょう。

日本で「ミスター半導体」と呼ばれる著者が、世界のハイテク分野で脚光を浴びるアルメニアを紹介するユニークなアルメニアガイド。

IT立国で躍進するアメニア。如何にして独立後の苦難を乗り越えたのか?独立して四半世紀にも満たない小国が如何にして世界のIT分野のハブになりえたのか。日本の地方創生のための大事な教訓がここにある!

Amazon商品紹介ページより

私がこの本を手に取ったのは前回の記事でご紹介したG・ポゴシャン著『アルメニアを巡る25の物語』がきっかけでした。

あわせて読みたい
G・ポゴシャン『アルメニアを巡る25の物語』あらすじと感想~おすすめガイドブック!これを読めばアルメ... この本はアルメニアを知るためのガイドブックとしてとても優れています。アルメニアがとても魅力的に感じられ、ぜひぜひこの国に行ってみたいなという気持ちになります。歴史と文化、そして現在のアルメニアをわかりやすく解説してくれるありがたい作品です。巻末には旅のアドバイスも掲載されており、旅行のガイドブックとしてもとてもおすすめです。

この本の中で『IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』が次のように紹介されていました。

「ミスター半導体」と称される牧本次生博士は、ソニー半導体の社長や日立の社長などを務めてきた半導体業界の第一人者です。

2013年に、IT分野における彼の功績に対して、アルメニアの栄誉ある「グローバルIT賞」が贈られました。牧本博士は、その表彰式のために初めてアルメニアを訪れた際、アルメニアのIT技術が急速に発達していたことに驚き、この事実を日本に紹介したいと思いました。それが、2015年に出版された『lT立国アルメニア』(東京図書出版)という本です。私は本の扉に小文を掲載させていただきましたが、現代アルメニアのIT産業に関する非常にユニークな内容が記されているばかりでなく、アルメニアのガイドブックともなる本です。

和器出版、グラント・ポゴシャン『アルメニアを巡る25の物語』P37

ここで語られるようにこの本は日本のIT分野の第一人者牧本次生氏による作品になります。

日本の専門家から見たアルメニアのIT産業はどのようなものなのか、そしてその成長の原動力はどこにあるのかということをこの本では見ていくことになります。

私は以前、篠野志郎著『アルメニア巡礼 12の賑やかな迷宮』という本で経済的に取り残された、旧ソ連的なアルメニアの惨状を知ることになりました。

あわせて読みたい
篠野志郎『アルメニア巡礼 12の賑やかな迷宮』あらすじと感想~圧倒的な廃墟感!ダークでディープな旧ソ... 『アルメニア巡礼 12の賑やかな迷宮』はソ連崩壊後取り残された旧共産圏の姿を知る上でこの上ない作品なのではないかと私は思います。日本ではありえないインフラ事情がどんどん出てきます。あまりに異世界過ぎてかなりショックを受けました。先程はホテルの話を引用しましたが、他にも驚きの内容がどんどん出てきます。

この本では「アルメニアは今もなお経済的に悲惨で、一部の人は成功しているかもしれないが格差が拡大している」ということが語られていました。

前回の記事で紹介した『アルメニアを巡る25の物語』と今作『IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』はまさしくその成功者側の物語ということになるのでしょうか、旧ソ連的な雰囲気とはまったく違うアルメニアを知ることになります。

「国土も小さく、資源もないアルメニア。だからこそ重要なのは人的資源。教育を大切にし、優秀な人材の力によって国を守っていく。そしてそうした知的資源を最も生かせるのがIT産業であり技術開発である。」

こうした明確なビジョンをアルメニアは描いています。

これはまさしく日本と重なってくるものがあります。

ですがかつての日本と違い、今の日本はどうであるか・・・日本の没落が急速に進んでいるように感じているのは私だけではないはずです。

そうしたことも考えさせられるのがこの本でもあります。

また、この本の後半では著者の牧本次生氏の自伝的回想も語られます。著者がどのような経緯でIT産業に関わるようになったのか、そして日本の半導体業界がどのようなものだったのかということも知ることができます。普段なかなかこうした業界のことを知る機会がなかったのでこれは非常に興味深いものがありました。

最古のキリスト教国アルメニア、旧ソ連の雰囲気が残るアルメニア。

私はそのような面からアルメニアを知ることになりましたが、そこから最先端のIT立国アルメニアを知れたのがこの本でした。

様々な面からこの国のことを見ることができたのは私にとっても貴重な経験になりました。こうした経験を踏まえて実際に現地に行った時に自分がそれをどう感じるのか、そうしたことを大事にしていきたいなと改めて感じたのでありました。

以上、「牧本次生『IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー』急激に発展するアルメニアIT!日本はこれからどうなるのか」でした。

Amazon商品ページはこちら↓

IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー

IT立国アルメニア 中東・コーカサスに輝くシリコンバレー

次の記事はこちら

あわせて読みたい
森和朗『乗っ取られた箱舟 アララト山をめぐるドラマ』あらすじと感想~ノアの箱舟は『ギルガメッシュ叙... 現在トルコ領となっているアララト山は旧約聖書で「ノアの箱舟」が漂着した場所として知られる聖地中の聖地です。 ですがその「ノアの箱舟」の物語が実は紀元前3000年から2600年頃に繁栄したメソポタミア文明のシュメール神話『ギルガメッシュ叙事詩』から着想を得ていたという驚きの事実がこの本では語られます。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
G・ポゴシャン『アルメニアを巡る25の物語』あらすじと感想~おすすめガイドブック!これを読めばアルメ... この本はアルメニアを知るためのガイドブックとしてとても優れています。アルメニアがとても魅力的に感じられ、ぜひぜひこの国に行ってみたいなという気持ちになります。歴史と文化、そして現在のアルメニアをわかりやすく解説してくれるありがたい作品です。巻末には旅のアドバイスも掲載されており、旅行のガイドブックとしてもとてもおすすめです。

関連記事

あわせて読みたい
(25)アルメニアのわからなさ、ソ連的どん詰まり感にショックを受け体調を崩す。カルチャーショックの洗礼 アルメニア滞在の3日目、私はノアの箱舟の聖地アララト山や世界遺産エチミアジン大聖堂を訪れました。 しかし実はその前日の夕方から私の身体に異変が生じ、エチミアジンの辺りで完全にダウンしてしまったのです。 これは単に体調が悪くなったで済まされる話ではありません。私とアルメニアという国についての根本問題がそこに横たわっていたのでありました。 私の身に何が起こったのか、この記事でお話ししていきます。
あわせて読みたい
「インバウンド頼みのキューバの現状と格差、教育問題」日本も他人事ではない! キューバ編⑫ 「キューバにはいいところも悪い所もあります。いいところは教育と医療システムのすばらしさです。私もハバナ大学を6年、日本留学も1年しました。すべてタダです。誰にでも学ぶチャンスがあることはすばらしいことです。ですが現在のキューバには深刻な問題があります。経済と観光の問題です。」 現地ガイドはこう切り出し、私にキューバの厳しい現状を語ってくれました。観光業によって経済を成り立たせようとするあまり国の基盤が崩れかかっている恐ろしい現実をこの記事ではお話ししていきます。そしてこれは日本も全く他人事でありません。私はガイドの話を聞き戦慄を覚えたのでありました。
あわせて読みたい
篠野志郎『アルメニア共和国の建築と風土』あらすじと感想~世界最古のキリスト教国の独特な教会建築を... この作品は世界最古のキリスト教国として知られるアルメニアの教会群を取材した写真集になります。 アルメニアの首都エレバンからはあのノアの箱舟で有名なアララト山を望むことができます。私がアルメニアに興味を持ったのもまさにこのアララト山の存在があったからでした。 歴史ある建築物の写真を見ながら、独特な歴史を歩んできたアルメニアの文化を知れる貴重な作品です。
あわせて読みたい
篠野志郎『写真集 東アナトリアの歴史建築』あらすじと感想~知られざるトルコ、アルメニア、シリアの独... 今回紹介した『写真集 東アナトリアの歴史建築 Stone Arks in Oblivion』も非常に貴重な作品です。こうした作品に出会えたことはとても幸運なことに思えます。この本が世に出たということの意味を考えさせられました。 正直、かなりマニアックな本です。私もトルストイを通してカフカースを学んでいなかったら一生出会わなかったジャンルの本だと思います。ですが、この本のパワーは本物です。ぜひおすすめしたい作品です。
あわせて読みたい
篠野志郎『アルメニア巡礼 12の賑やかな迷宮』あらすじと感想~圧倒的な廃墟感!ダークでディープな旧ソ... 『アルメニア巡礼 12の賑やかな迷宮』はソ連崩壊後取り残された旧共産圏の姿を知る上でこの上ない作品なのではないかと私は思います。日本ではありえないインフラ事情がどんどん出てきます。あまりに異世界過ぎてかなりショックを受けました。先程はホテルの話を引用しましたが、他にも驚きの内容がどんどん出てきます。
あわせて読みたい
『カフカース 二つの文明が交差する境界』あらすじと感想~カフカースとロシア文学のつながりを知るのに... 私がこの本を手に取ったのはトルストイ伝記の金字塔、藤沼貴著『トルストイ』でこの作品が紹介されていたからでした。 この作品はそれぞれの分野の専門家による共著になります。この本では文学だけでなく様々な観点からカフカースを見ていくことができます。 私はトルストイとの関係性からカフカースに関心を持つようになりましたが、入り口は人それぞれだと思います。そんな中多様な視点からカフカースを見ていくこの本の試みは非常に面白いなと思いました。
あわせて読みたい
V・ベリゼ『ジョージアの歴史建築 カフカースのキリスト教建築美術』あらすじと感想~ジョージア観光の... この作品はジョージアの独特な教会建築を余すことなく解説してくれる非常に貴重なガイドブックとなっています。 日本ではジョージアの教会についてはほとんど知られていませんが、その独特な構造や美しさは写真を見ただけでもどきっとするほどです。 そしてこの本では教会建築の解説だけではなく、教会を巡るための旅のガイドまで掲載してくれています。 これは貴重な1冊です。
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次