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戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である―お釈迦様のことばに聴く
一〇三 戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である。
一〇四 自己にうち克つことは、他の人々に勝つことよりもすぐれている。つねに行ないをつつしみ、自己をととのえている人、―このような人の克ち得た勝利を敗北に転ずることは、神も、ガンダルヴァ(天の伎楽神)も、悪魔も、梵天もなすことができない。
岩波書店、中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』P24-25
今回の箇所は『ブッダのことば』の「犀の角のようにただ独り歩め」と同じように仏教において非常に有名なことばです。
最上の勝利者は戦場で100万人を倒した人間ではなく、たった一人、自分自身に打ち克った者である。
いくら他者と比べて勝ちを積み重ねても、そこに真の勝利はない。
自分自身と戦い、自分に打ち克つ者こそ真の勝利者にふさわしいとお釈迦様は述べるのです。
自分自身に打ち克つというのはどういうことかというと、「つねに行ないをつつしみ、自己をととのえる」ということになります。
戦場で敵をばっさばっさとなぎ倒していく豪傑的な強さとはまったく違った姿ですよね。
腕っぷしの強さではなく、どんなことにも動じない心の強さ、しなやかさを求めるあたり、お釈迦様の特徴が表れているなと感じます。
他者に打ち克つためにあれやこれやと心を向けるのではなく、自分の心とこそ向き合いなさい。お釈迦様の基本姿勢はいつもここにあります。
以前紹介した「他人の過失を見るなかれ。ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ」ということばもそうです。
自分が勝った相手が勝ったと周りのことばかり考えていても、そこに終わりはない。むしろそこにこそ苦しみがある。そこを離れて自分自身と向き合いなさい。
今回の「戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である」ということばは、仏教の基本姿勢が端的に現れたものとなっています。
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