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世界遺産セビリア大聖堂とコロンブスのお墓~『カラマーゾフの兄弟』とのつながりも スペイン編30

セビリア
目次

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』ともつながりあり!巨大すぎる世界遺産セビリア大聖堂へ! 僧侶上田隆弘の世界一周記―スペイン編30

セビリアはアンダルシアの州都でこの地方最大の都市。

16世紀から17世紀にはスペイン最大の都市となり、現在でもスペインで4番目の街だ。

セビリアと言えば闘牛やフラメンコ。

ぼく達がイメージするスペインらしさはここから発信されている。

コルドバからセビリアへはスペイン鉄道renfeで簡単にアクセスできる。

さて、そのセビリアの中でも今日の目的地はセビリア大聖堂。

セビリア大聖堂は1402年から建築が始まり1519年に完成した大聖堂。

「後世の人が正気の沙汰とは思えないと言うほどのカテドラルを建てよう」という言葉を合言葉に建築された巨大な大聖堂だ。

その規模はローマのサンピエトロ大聖堂、ロンドンのセントポール大聖堂に続く世界3番目の規模だそうだ。

そしてあまり知られていないが、ここセビリアはドストエフスキーの代表作『カラマーゾフの兄弟』のハイライトと言える「大審問官の章」の舞台となっている。

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このセビリア大聖堂がはっきりと物語中には出てこないとはいえ、大審問官たるセビリアの高位聖職者が主な登場人物の一人である以上、この建物もおそらく『カラマーゾフの兄弟』と無関係ではあるまいとぼくは思う。

19世紀のロシアの文豪ドストエフスキーにとっても、このセビリアという街は宗教的な問いを考える上では非常に重要な意味を持った場所だったのかもしれない。

コルドバ駅から出発。

アンダルシアの平原を突き進む。

コルドバから1時間ほどでセビリア・サンタフスタ駅へ到着。

そこから市バスに乗り、停車駅から徒歩10分ほどで大聖堂に到着。

噂に違わぬ巨大さだ。圧倒的な迫力。

写真に収まりきらない。

今日はこれから聖堂屋上見学ツアーを予約している。

このツアーは大聖堂の入場券とセットになったもので、大聖堂の職員さんが普通のチケットでは入ることのできないエリアを案内してくれるというものだ。

通常のエントランスとは違うこじんまりとした入場口に集合。

時間通りに入場。

入った瞬間思わず息を飲む。とにかく巨大な聖堂内部。

今すぐにでも隅々まで観て回りたいという気持ちを抑えつつ、ガイドさんの後ろを付いていく。

ガイドさんの先導でいざ屋上へ。

エレベーターがないのでひたすら階段を上っていく。

屋上に到着。

今日の最高気温は37度。それに加えて屋上は太陽の強烈な光でとんでもない暑さになっていた。

日陰に避難して休みつつ、屋上の景色を見て回っていく。

建物の下からではなかなか見れない景色。

大聖堂が巨大すぎるので屋上の装飾の細部まではまず見られないのだ。

一旦また屋内へ。

ここはどこかというと、

主祭壇の真裏。

主祭壇を裏から、それも上の方から見下ろすのはなかなかできない体験だ。

もう一度外に出てヒラルダの塔を見上げる。

これにて屋上ツアーは終了。

解散後は各々大聖堂内を見学。

とにかく巨大な聖堂内部。

当時の高位聖職者の衣が展示されていた。

さすがスペイン黄金時代。かなり豪華。

先程裏から見た主祭壇の前には席が設けられていた。

正面には鉄柵が設けられている。

不思議とアンダルシア地方の教会ではこのように祭壇の前が鉄柵で仕切られていることが多かった。

グラナダやコルドバでもこのような鉄柵をよく見た。

鉄柵の隙間から見た主祭壇。

何と形容してよいのかわからないほど、巨大で精巧な金細工。

他の教会の主祭壇とは一線を画す独特な構造の主祭壇だ。

15世紀から16世紀当時のスペインの圧倒的な国力がうかがえる。

そしてぼくがここセビリアまで来た最大の目的がこのコロンブスの墓だ。

1492年、コロンブスはアメリカ大陸を発見した。

ヨーロッパキリスト教世界とアメリカ世界の出会い。

ここからキリスト教世界は一気に様変わりした。

それまでの思想を一変するほどの衝撃がそこにはあった。

ヒエロニムス・ボスの記事でもお話ししたが、全てが神の下にわかりきっていた世界から未知の世界がコロンブスによってもたらされたのであった。

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教会が説く『聖書』は世界の全てを説いていた。

「世界中どこに行ってもわからないことなどありえない。

世界は神の下ですべて説明され解明され尽くしているのだ。

それに疑問を呈すことなど神に対する冒涜だ。

神の造りたもうた世界の成り立ちに疑問を持つことは反逆であり、異端である。」

かつての世界はこのような考えが実際に幅を利かせていた。

このような世界の中で、個人が世界の成り立ちを想像し実際に確かめようとなどすることがいかに困難なことだったか想像するのも恐ろしい。

世界の成り立ちや自然現象の仕組みを考えることは非常にリスキーな営みであったことは疑いようもない。

だが、そんな世界に修復不可能なほどの巨大な風穴を開けたのがまさしくコロンブスだったとも言えるのではないか。

『聖書』に説かれていない未知の大陸が実際に発見された。

地動説と違って実際に見て触ることができる大陸の発見はさすがに教会も無視できるようなものではなかった。

これをきっかけにヨーロッパキリスト教世界の住人は世界には「わからないこと」が無数にあることを確信する。

考えることをやめていた時代が終わりを告げ、人間が自由に思考し調査する時代の幕開けとなった。

私たちが生きる科学時代はここから爆発的に加速していったのだ。

それ以後の西洋社会の思考の枠組みを決定的に進路づけたコロンブスの航海は人間の歴史を考える上でも実に重要な出来事だ。(もちろん、この航海とその後の植民地支配の負の側面も忘れてはならない)

だからこそ、ぼくはそれをもたらしたコロンブスのお墓にどうしても行ってみたかったのだ。

帰りの電車からはアンダルシアの象徴、ひまわり畑を見ることができた。

セビリアへは日帰りでの弾丸旅行になってしまったが、コロンブスのお墓にお参りすることができてとても有意義な時間であった。

スペイン編もいよいよこれで終わり。

次なる国はアメリカ。

ニューヨークとワシントンへこれから向かう。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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