MENU

カンポ・デ・クリプターナの夕焼けの風車 スペイン編⑨

目次

必見!言葉に尽くせぬ美しさ!カンポ・デ・クリプターナの夕焼けの風車 僧侶上田隆弘の世界一周記―スペイン編⑨

風車の丘で雄大な景色を楽しんだ後は一旦宿に戻って待機。

今回カンポ・デ・クリプターナに宿を取った理由は、なんと言っても夕日に照らされた風車を見るためだ。

カンポ・デ・クリプターナの風車の丘は夕陽で有名・・・というわけではない。

しかし、真っ白な風車が夕陽で真っ赤に染まっていく景色をぜひとも見てみたいとぼくは旅を始める前から考えていたのだ。

クエンカでもそうだったがスペインでの日没時間は日本と比べてかなり遅い。

夕焼けが始まる21時過ぎ頃までまずは待機。

そして21時15分頃、いよいよ出発。

風車の丘まで徒歩5分。

一度通った道なので気楽に歩くことができた。

そして間もなく到着。

すると想像をはるかに超える光景がそこには広がっていた。

写真では伝わりにくいが、昼間には緑の絨毯のようだった野原が夕陽に照らされて黄金色に輝いていたのだ。

まるでナウシカに出てくるワンシーンのよう。

昼間見た景色とはまったく別物だ。

はるか彼方まで広がる、ラ・マンチャの大地。

遮るもののない黄金色の野原を眺めながら、ゆっくりと散歩する。

いよいよ日が傾きだしてきた。

夕陽のオレンジ色が強くなってきたのを感じる。

つい先ほどまで黄金色だった野原が徐々に赤い色へと近づいていく。

風車の白い壁もオレンジ色に染まり始めてきた。

いよいよ日没が迫ってくる。

夕陽の赤が最も強くなる瞬間だ。

黄金色だった草原が今や真っ赤な大地に。

目に見える世界全てが赤色に染まる。まるで赤いヴェール越しに世界を眺めているかのよう。

日没間近の風車の丘は言葉に尽くせぬほどの美しさだった。

地平線に沈んでいく夕陽、そして真っ赤に染まった風車。

世界の色彩が時間と共に刻々と変化していく。

夕暮れの始まりから日没の瞬間までゆっくりと、そして確実に変わり続けていく景色。

そして自分がこの雄大な世界にぽつんと一人で立っているという事実。

自分がこの世界に飲み込まれてしまったかのような不思議な感覚。

うまく言葉にできないが、何かを感じずにはいられない。そんな体験だった。

ここに来て本当によかった。

日帰りではなく1泊という決断は大正解だった。

この日はこれにて風車の丘も終了。真っ暗になる前に宿に帰還する。

住宅街を歩いて行くと、住民の方達が道路わきにテーブルと椅子を出し、食事やお酒を囲んで楽しそうに話していた。

スペインの田舎町らしい風景。

帰る道すがら何軒もそういう家庭に出会った。きっとこうして夜の時間を家族や仲間とわいわい過ごすのが文化の一つなのだろう。

そしてこんな時間に一人で歩いている東洋人が珍しいらしく、彼らはものすごく不思議そうにぼくを眺めていた。

思い切って「オラー!(こんにちは)」とあいさつすると、笑って手を振って返してくれたのには思わず嬉しくなった。

ちょっとしたことだけれども、一人旅をしているとこういう何気ないあいさつだけでずいぶんと心がうきうきするものだ。

薄暗い中ぼくは温かい気持ちになりながら宿へと帰っていくのであった。

絶景を堪能!クエンカとカンポ・デ・クリプターナを動画でご紹介 スペイン編⑬の記事でも紹介しますが、動画でも撮影しましたのでこちらもご覧ください

そして翌朝、カンポ・デ・クリプターナを出発する前にもう一度風車の丘へ。

朝は朝でこれがまた素晴らしい。

スペインの強烈な日差しとカラッとした空気。

そして早朝の爽やかな風がなんとも心地よい。

道もないラ・マンチャの大地をあてもなく散歩する。

人もほとんどいない。

この雄大な大地を独り占めしている気分。

朝はほとんど観光客もいない。信じられないくらい静かだ。

有名な場所の割にはあまりに観光地っぽさがない。

だが、それが逆に素晴らしい。

それにしても、なぜこんなにも人がいないのだろう。

いくらなんでもいなさすぎだろうと思う。

もしかしてここは欧米人にとってはそこまで観光地として人気がないのではないだろうか。

カンポ・デ・クリプターナ近辺はドン・キホーテの風車で有名ではあるが、その他には良質なワインの産地としても有名だ。

現地のオプショナルツアーを見ても、風車の丘よりもワインのテイスティングの方に力点が置かれているようにも思える。

う~む、もしかしたらやはり根本的に風車に対して欧米人は思い入れがないのかもしれない。

あるいは小説の舞台に出てきた場所を巡るという習慣がないのかもしれない。

日本人は映画やドラマ、小説やアニメで出てきた場所を巡る「聖地巡り」が大好きな国民だと言われている。

たしかにぼくも「水曜どうでしょう」のロケ地を巡ったり、まさしくこのカンポ・デ・クリプターナも『ドン・キホーテ』のゆかりの地だからこそ勇んでここまでやってきた。

そして『ドン・キホーテ』に思いを馳せ、大満足をしていた。

しかしこれが欧米ではそこまで馴染み深い楽しみ方ではないということなのだろうか。う~む、わからない。

まあたしかに、カンポ・デ・クリプターナは来るのも一苦労な場所だ。

普通はマドリードに来ればそこに滞在して美術館や王宮巡りをして、そこから少し足を伸ばしてトレド観光というのが王道だろう。

ただでさえ日程はそれで埋まってしまうのにそこからわざわざ在来線を乗り継ぎして2時間もかけてここに来るとなるとよっぽどのことだ。

ましてや現地ツアーもほとんどないので個人でなんとかして行くしかない。

となるとなかなかここは観光客が訪れないのも頷ける話だ。

なぜここは観光客が少ないのか、正確なところはぼくにもわからない。

でもぼくはカンポ・デ・クリプターナが大好きだ。

ここの景色は自信を持っておすすめできる。

特に夕焼けの風車の丘は絶品だ。

黄金色に染まる平原を一人であてどなく歩き、そして日没間近の真っ赤な世界を独り占めできる体験などそうそうできるようなものではない。

はっきりとぼくは言いたい。

せっかくここまで来たのにぱっと風車だけ見て「こんなものか」とさっさと帰ってしまうのは本当にもったいない。

ゆっくりと時間をとって風車の丘を歩き景色を堪能する。

これは言葉に尽くせないほどの感動をもたらしてくれる。

これこそこの丘の最大の魅力だとぼくは思う。

カンポ・デ・クリプターナでの体験はぼくの旅の中でも屈指の思い出としてはっきりと残っている。

本当にすばらしい時間を過ごすことができた。

マドリード宿泊の1泊分をこちらに割く価値はまちがいなくある。

たしかに交通の便も不便だし宿泊設備も十分とは言えないかもしれない。

だが、旅を終えてしまえばそれも逆にいい思い出にもなる。

もしスペイン・マドリード旅行を考えている方がおられるならば、ぼくはカンポ・デ・クリプターナでの1泊を強く皆さんにお勧めしたい。

続く

次の記事はこちら

あわせて読みたい
ドン・キホーテゆかりの地エル・トボソ村のドゥルシネーア博物館とセルバンテス博物館を訪ねて スペイ... カンポ・デ・クリプターナの風車を満喫した後は、ドン・キホーテゆかりの地エル・トボソ村へと向かいます。 エル・トボソ村はドン・キホーテの思い姫ドゥルシネーアが住んでいた村。 ドン・キホーテは「騎士たる者は恋する姫を持たねばならぬ」という騎士道の掟に従って、恋する相手を頭の中で作り上げました。それがドゥルシネーアなのであります。 この記事ではそんなエル・トボソのドゥルシネーア博物館とセルバンテス博物館を訪ねた体験をお話ししていきます。

前の記事はこちら

あわせて読みたい
風車の町カンポ・デ・クリプターナを散策~ドン・キホーテの舞台を歩く! スペイン編⑧ カンポ・デ・クリプターナはクエンカと同じくドン・キホーテで有名なラ・マンチャ地方にある町。 この町で最も有名なのが丘の上に立つ風車の景色です。 そしてその風車こそドン・キホーテが巨人と間違えて突進していくという有名なシーンのモデルになったと言われています。 『ドン・キホーテ』が大好きな私にとってはここは聖地中の聖地です。この記事ではそんな聖地を訪れた私の体験をお話ししていきます。

関連記事

あわせて読みたい
僧侶が歩いたドン・キホーテの国~スペイン宗教巡礼の旅 世界一周記スペイン編一覧 僧侶が歩いたドン・キホーテの国~スペイン宗教遍歴の旅 僧侶上田隆弘の世界一周記スペイン編一覧 5月11日。ローマから飛行機でスペインのマドリードへ移動。 スペ...
あわせて読みたい
名作『ドン・キホーテ』のあらすじと風車の冒険をざっくりとご紹介~世界最高の小説の魅力とは スペイ... 『ドン・キホーテ』といえば、作中ドン・キホーテが風車に突撃するというエピソードが有名です。ですがその出来事の理由は何かと問われてみると意外とわからないですよね。 この記事ではそんな『ドン・キホーテ』のあらすじと風車のエピソードについて考えていきます
あわせて読みたい
『ドン・キホーテ』はなぜ名作なのか~『ドン・キホーテ』をもっと楽しむためのポイントを解説 スペイ... この記事では世界の名作『ドン・キホーテ』がなぜ世界の名だたる著名人から愛されたのかをお話ししていきます。 古典と言えば小難しくて眉間にしわを寄せて読むものだというイメージもあるかもしれませんが、『ドン・キホーテ』においてはまったくの逆。 私は元気を出したいときや明るい気分になりたいときに『ドン・キホーテ』を読みます。 理想に燃えて突進し、辛い目にあってもへこたれず明るく前に進み続ける。そんな『ドン・キホーテ』を読んでいると不思議と力が湧いてきます。 名作と言われる理由がわかればきっとこの作品を読みたくなると思います。ぜひご一読下さい。
あわせて読みたい
絶景を堪能!クエンカとカンポ・デ・クリプターナを動画でご紹介 スペイン編⑬ この記事ではこれまでの記事とは異なり、私がスペインで撮影した動画をご紹介します。 クエンカとカンポ・デ・クリプターナで私が歩いて見た景色そのままを撮影したものです。 現地の雰囲気がより伝わるかと思います。ぜひご覧ください。
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

目次