上座部仏教

仏教の思想3 アビダルマインドにおける仏教

『仏教の思想2 存在の分析〈アビダルマ〉』~なぜアビダルマや倶舎論は大切なのか。その意義は?おすすめ解説書!

本書『仏教の思想2 存在の分析〈アビダルマ〉』は「仏教の思想シリーズ」の第二巻になります。このシリーズは仏教思想入門として長らく愛され続けてきたベストセラーで、私が教えを受けている仏教学の先生もこのシリーズを推薦しています。

本書ではアビダルマという、一般読者だけでなく私たち僧侶にとっても巨大な壁となっている存在がテーマとなっています。「アビダルマ=難解、煩瑣」なイメージがすでに出来上がってしまっていますが、このアビダルマという仏教思想が大乗仏教を学ぶ上でもどれだけ大きな意義があるかを本書では知ることになります。

大乗仏教 佐々木閑インドにおける仏教

佐々木閑『大乗仏教 ブッダの教えはどこへ向かうのか』~日本仏教のそもそもを考える上でも重要な一冊!

「大乗仏教という言葉は知っているし、自分たちの住む日本が大乗仏教国であることも知っている。しかし、その大乗仏教というのがいったいどのような教えなのかは、さっぱりわからなかった。」
これは一般読者だけでなく、実は僧侶自身も同じ思いの方が多いのではないでしょうか。
と言いますのも、僧侶である私たちも仏教の基本を学ぶのでありますがやはり自分の宗派の教義の勉強が中心となってしまいます。
もちろん、大乗仏教とは何かや日本の主だった宗派の特徴などは習っていますが、その成立過程や経典、教義の細かい所まではなかなか立ち入れないというのが正直なところです。
そういう面でも本書はどの宗派の僧侶にとっても非常に意義のある解説書となっています。

出家とはなにか 佐々木閑インドにおける仏教

佐々木閑『出家とはなにか』~そもそも僧侶とは何なのか。日本仏教や戒律について考えるためのおすすめ参考書

本書『出家とはなにか』はその書名通り、出家とはそもそも何か、僧侶とは何かということを見ていく作品です。商品紹介の「律蔵やパーリ律を基本資料として」という言葉から本書は何やら難しそうだなという印象を受ける方もおられかもしれませんがご安心ください。佐々木閑先生の語り口は非常にわかりやすく、とても読みやすいです。

また、この本ではそうした日本仏教の独自性についても語られます。やはり比べてみるからこそ見えてくるものがあります。インドやスリランカの初期の仏教の生活実態もこの本では詳しく見ていけるのでとても刺激的です。

スリランカ巨大仏の不思議スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

楠本香代子『スリランカ巨大仏の不思議』~彫刻家から見たスリランカ仏像の魅力とは!新たな視点で学べるおすすめガイド!

本書の著者は仏教の専門家ではなく彫刻家です。

彫刻を彫る側の人がスリランカの仏教美術を見たらどのようなことを思うのかというのは私にとってもものすごく刺激的でした。

スリランカの有名な仏像やマニアックな仏像まで数多くの素晴らしい美術を本書では紹介しています。写真や地図なども豊富に掲載されていますのでスリランカを訪れる際のガイドブックとしても優秀です。

これは面白い本でした。新たな視点でスリランカ仏像を見れる刺激的な一冊です。

スリランカスリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

伊東照司『スリランカ仏教美術入門』~写真多数!スリランカ仏教遺跡巡りに役立つガイドブック!

本書ではアヌラーダプラ、ポロンナルワ、キャンディなど主要な仏跡や、その他特徴的な仏教遺跡を見ていくことになります。

本書はとにかく写真が多数掲載されており、現地の状況をイメージしやすいです。さらに解説も初学者にもわかりやすく書かれており、入門書として非常にありがたい作品です。

スリランカに行かれる方、スリランカ仏教に興味のある方にぜひおすすめしたい作品です。観光する際のガイドブックにもなる一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

南方熊楠僧侶の日記

嶋本隆光『南方熊楠と猫とイスラーム』~従来の熊楠像は本当に正しかったのか?偉人研究のあり方を問う刺激的な一冊!

本作『南方熊楠と猫とイスラーム』は従来の南方熊楠に関する参考書とは一線を画す作品となっています。

南方熊楠といえば「天才的な資質をもった博物学者、民俗学者」として知られており、粘菌や植物の研究でも有名です。

南方熊楠は超人的な資料収集や研究範囲の広さによって後の研究者からも尊敬を集めるようになります。そしてその研究者たちによって語られた南方熊楠はまさに時代を先取りした天才、偉人として讃美されることになりました。

ただ、この南方熊楠という人物ははたしてその通りの偉人であったのか。後の研究者たちの讃美に満ちた南方熊楠像は本当に正しいものだったのかということを本書では丁寧に見ていくことになります。

今話題の清水俊史著『ブッダという男』の南方熊楠版ともいえる刺激的な作品です!

明日はそんなに暗くないスリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

E・サラッチャンドラ『明日はそんなに暗くない』あらすじと感想~マルクス主義の学生による武装蜂起が起きた1971年スリランカを題材にした小説

この小説とこのタイミングで出会えたことに縁を感じずにはいられません。スリランカに行く前に、私はこの小説を読まねばならなかったのだと強く感じています。

日本の学生紛争について考える上でもこの作品は非常に重要な示唆を与えてくれる作品です。

小説としても非常に読みやすく、私も一気に読み切ってしまいました。さすがスリランカを代表する作家です。

スリランカについてまた新たな視点をくれた素晴らしい作品でした。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。

亡き人スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

E・サラッチャンドラ『亡き人』あらすじと感想~あのおしんに匹敵!日本を舞台にスリランカで絶大な人気を博した小説二部作!

あの「おしん」を超える影響力を持っていたスリランカ小説があったとは驚きでした。

著者のサラッチャンドラは実際に1955年に日本を訪れており、その時の強烈な体験が本書にも強く作用していることがうかがわれます。

特に第一部の「亡き人」では語りの主体がスリランカ人画家のデウェンドラにあります。異邦人の彼から見た当時の日本がどのようなものだったかが非常に鮮明に描かれています。その一端はすでに上の解説でも垣間見ることができますが、当時のスリランカ人はこの小説を読んで日本という国をイメージしていたわけです。

当時のスリランカ人が日本をどう見ていたのかということを知る上でもこの作品は貴重なものになるに違いない、そう思い私はこの本を手に取ったのでありました。

祭りと社会変動スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

渋谷利雄『祭りと社会変動—スリランカの儀礼劇と民族紛争—』~スリランカの伝統文化と紛争の背景を学ぶのにおすすめ

この本では農村における人々の生活を見ていくことになります。特に本書のタイトルともなっている儀礼劇についての考察はとても貴重です。一見非科学的にも見える伝統儀礼に込められた深い意義やそこから見えてくるスリランカの複雑な社会事情にきっと驚くと思います。

こうした伝統的な儀礼については以前当ブログでも紹介した上田紀行『スリランカの悪魔祓い』もおすすめです。二冊セットで読むとさらに理解が深まること間違いなしです。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

スリランカ海村スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

高桑史子『スリランカ海村の民族史』~海に生きる人々の生活を政治経済、内戦、津波被害の観点から見ていく参考書

この本では単に海村の人々の生活を見ていくだけでなく、政治経済、内戦、宗教、津波被害など大きな観点とも関連づけて語られていきます。

特に、スリランカの仏教を学んでいる私にとっては海村における宗教の問題は非常に強い関心がありましたのでこれはありがたい参考書となりました。

教義や歴史書を読むだけでは見えてこない生活レベルの信仰を考える上でもこの本はとても刺激的です。

そして津波被害とそこからの復興や問題点なども考えさせられるのも大きいです。ビーチリゾートとしても有名なスリランカですが本書を読めば今まで想像もしていなかった海村の存在を知ることになります。私も函館という港町に住んでいるので、海と共に生きることは全く他人事ではありません。日本の多くの方にもその感覚は通じるものがあると思います。