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吉川真司『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』あらすじと感想~奈良時代の歴史と仏教の流れを知るのにおすすめ!

聖武天皇
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吉川真司『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』概要と感想~奈良時代の歴史と仏教の流れを知るのにおすすめ!

今回ご紹介するのは2011年に講談社より発行された吉川真司著『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』です。

早速この本について見ていきましょう。

女性天皇たちが護った天武直系の皇統。期待とともに即位した聖武を待ち受けていた天災と政変。疫病大流行に苦悩する天皇は仏教に深く帰依し、平城京は仏都の彩りを濃くしていく。そして空前の専制君主・称徳天皇、聖武朝の否定者・桓武天皇が新時代を切り開いた。波乱に満ちた古代天皇の生涯と宮都の実像を活写する。

Amazon商品紹介ページより
大仏(盧舎那仏像)西側より Wikipediaより

今作『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』は奈良時代の流れを概観できるおすすめの参考書です。

奈良時代といえば平城京や東大寺の大仏がすぐに浮かんでくると思いますが、それらの歴史を「天皇」という観点から見ていくのが本書のポイントになります。

「天皇」という観点から見るということは、すなわち政治史と言ってもよいでしょう。この本では単に平城京や東大寺の歴史を見ていくのではなく、奈良時代の混沌たる政治状況と絡めて解説されていきます。

Amazon商品紹介ページに本書の大きな概要が掲載されていましたのそちらもご紹介します。

■天武直系の皇統を護った女帝と聖武天皇の苦難
天武天皇の崩御後、持統、元明、元正という女性天皇によって護られ、聖武へと継承された天武直系の皇統。太上天皇として天皇を後見した女性太上天皇の役割とは何かを説く。
即位した聖武天皇を待ち受けていたのは、相次ぐ地震、凶作、そして全国で150万人近くの死亡者を出した疫病大流行だった。国家の危機に瀕した天平年間、疲弊する人々を救済するため苦悩する聖武は仏教に帰依し、社会復興、国力回復を願って、全国に国分寺建立を命じ、大仏建立の詔を発する。東大寺大仏開眼へと続く天皇の苦難の道をたどる。

■仏都平城京に広がる民間布教
聖武天皇による仏教宣揚とともに、民間布教に心血を注いだ仏教者たちによって、仏都平城京は形作られた。特筆すべきは行基集団の活動で、その窮民救済活動など仏教による社会救済の様相を描き出す。

■専制君主・孝謙女帝と桓武天皇による天智系への皇統転換

聖武皇女は史上初の女性皇太子となり孝謙として即位。譲位、出家して道鏡を重用、淳仁天皇と不和になるとこれを廃して重祚、尼姿のまま称徳天皇となった。仲麻呂の乱を鎮圧する一方で神仏の混交をすすめ、道鏡を太政大臣禅師、さらに法王とし、仏教に奉仕する王権を目指した。しかし専制君主・称徳が死去すると道鏡は下野薬師寺に左遷され、天智天皇の孫に当たる白壁王が即位し光仁天皇となる。やがて光仁の皇子・山部親王が即位して桓武天皇となり、天武系から天智系へ皇統が大転換した。元明、元正天皇、藤原不比等など常に後見者に支えられた聖武に対し、百済系渡来氏族出身者である高野新笠を母にもつ桓武は自己の権威付けのため天智直系皇統を称揚し、さらに母方氏族の権威を高める作業にとりかかった。「聖武朝的なるもの」を否定し、平安京に都を遷した桓武が創りだした新時代とは何か。平城、嵯峨、淳和、仁明と続く歴代天皇の治世と平安京の爛熟を描く。

■廃都後の平城京のゆくえ
平安遷都後、次第に水田化してゆく平城京跡。天皇の所領地はどう管理され、利用されたのか。平城の地に立つ寺院はその後どのように法灯を保ったのか。奈良の都の原像を探る。

Amazon商品紹介ページより

特にこの本の後半で語られる平城京から平安京遷都の経緯の箇所はとても刺激的でした。平城京から平安京への遷都は仏教勢力から距離を置くためとよく言われますが、実際にはそうではなく、天皇の皇統転換が大きな要因だったというのは興味深かったです。

また仏都平城京と政治都市平安京の役目の違いなど、ふだんなかなか考えない視点から奈良、平安時代を見ていけるのも面白いです。

本自体もとても読みやすく、すらすら読むことができました。

奈良、平安初期の全体像を掴むためのおすすめの参考書です。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「吉川真司『天皇の歴史02巻 聖武天皇と仏都平城京』~奈良時代の歴史と仏教の流れを知るのにおすすめ!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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