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ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』あらすじと感想~モーツァルトも憧れた天才音楽家のおすすめ伝記

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ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』あらすじと感想~モーツァルトも憧れた天才音楽家のおすすめ伝記

今回ご紹介するのは1996年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』です。

この作品は「作曲家の物語シリーズ」のひとつで、このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。

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クラシック音楽には疎かった私ですがこの伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみたい」と思い、こうしてこのシリーズ を手に取ることにしたのでありました。

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この作曲の物語シリーズについては巻末に以下のように述べられています。

児童書では初めての音楽家による全巻現地取材

読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。

リブリオ出版、ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』

一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。

ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。

さて、今作の主人公はオーストリアの作曲家フランツ・ヨーゼフ・ハイドンです。

ハイドン(1732-1809)Wikipediaより

ハイドンといえば名前は聞いたことはあったのですが実際にどんな人だったのかは全く知りませんでした。

ですがモーツァルトの伝記でこのハイドンが出てきたことから私はこの人物に興味が湧いてきたのでありました。

この伝記はハイドンの子供時代から始まります。そしてそこに出てきたのがウィーンの象徴ステファン大聖堂でした。

ここは2019年に私も訪れており、その巨大さに圧倒されたのを今でも覚えています。

地方から連れてこられたハイドンはこの教会で合唱隊のひとりとして生活し、音楽人生が始まっていったのでありました。

ハイドンについては上の動画がわかりやすかったので興味のある方はぜひご覧下さい。

伝記と合わせて見てみるとよりイメージがしやすく、とても興味深かったです。

では、この伝記の作者によるあとがきを見ていきましょう。ハイドンについてこちらでわかりやすくまとめられています。

ひと昔前まで、日本の音楽家が自分たちの不遇を訴える際に、必ずといっていい程ハイドン時代の音楽家を引き合いに出していた。

王侯貴族の手厚い保護を受け、生活の心配もなしに音楽に打ちこめたヨーロッパの音楽家は、何と恵まれていたのだろう。その伝統のない日本では、音楽家は何と粗末に扱われているのだろう。また、日本の社会は、音楽家や音楽芸術に対して何と冷たいのだろう。

しかし徐々に十七、八世紀のヨーロッパの音楽家に課せられていた厳しい職業上の条件や、生活の制約や、使用人としての身分などが判明してくるにつれ、そうした言葉はきかれなくなった。日本の音楽家が恵まれた状況にあるとは現在でも決して言えないが、しかしハイドン時代の同業者に比べれば、はるかに自由で気楽な身分である上に、芸術家としての自負も保つことができる。

そもそも、ハイドンの時代には音楽家は芸術家などではなく、単なる楽師だったのだ。貴族たちにとって、優秀な猟犬や名馬と楽師とでは、どちらがより価値があったのだろうかと、私は度々考えてしまう。

生まれながらに身分が決まっている封建社会の中で、ハイドンのように身ひとつから叩き上げ王侯貴族に一目置かれる存在になるには、現代人には想像もつかない程の努力と、才覚と、才能が要ったことと改めて思う。

さて、ハイドンの音楽というと、私は真っ先に《セレナード》や《ひばり》や《日の出》などの弦楽四重奏曲が頭に浮かぶ。学生時代に友人たちと組んで、よくこうした作品を弾いた。オーケストラでは、代表的な交響曲を何曲か演奏した。何しろハイドンは弦楽四重奏曲を六十七曲、交響曲を一〇七曲も書いているので全曲を知ることは到底できなかったが、その限られたハイドン体験の中で常に感じたのは「厳しさ」である。

ハイドンの音楽はきく人の耳にはあくまでも明るく楽しげにひびくが、奏者の手元の譜面上には意外な転調や弾きにくい音型が次々と仕掛けられてあって、足ならぬ手をすくわれる。落とし穴だらけの楽譜といってもいい。そこには「プロの厳しさ」と、あえて言うならば「意地の悪さ」がある。この程度の音符が弾けない者はこの曲に手をつけるな、とハイドンの楽譜は語っている。ハイドンを完璧に演奏するのは至難の技なのだ。何しろどの曲もエステルハージ楽団の名手や、当時の名演奏家たちの腕に合わせて書かれているのだから。

さて、ハイドンの音楽の楽しみ方だが、私は弦楽四重奏曲や交響曲を家庭でBGM(バック・グラウンド・ミュージック)的にきき流して全くかまわないと思っている。昨今、音楽療法でよくモーツァルトが取り上げられるが、ハイドンの音楽はモーツァルト以上に、癒しと安らぎの効果を持っているのではないだろうか。大ホールが出現する前に書かれた音楽であり、本来君主の耳を楽しませ、不快なことを忘れさせる目的をもって書かれているのだから、心の安らぎを求める現代人の嗜好によく合っているといえる。どの作品も、きき手の心を清々しくして、明日への活力を与えてくれるだろう。気楽に、構えずに、CDや放送でハイドンに接していただきたいと願う。


リブリオ出版、ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』 P250-252

ハイドンが活躍したのは18世紀中頃から19世紀初頭にかけての時期です。ベートーヴェンやモーツァルトに先駆けて音楽界をリードしていたのがこのハイドンです。

この伝記を読めば当時の音楽家が置かれていた境遇を知ることができます。この本のタイトルにもある「使い捨て作品」という意味も見えてきます。

そしてやはり感動的なのは天才モーツァルトとの心温まる交流です。

真の天才同士がわかり合い、互いを認め合うその瞬間はやはり胸にきます。これはこの伝記の名シーン中の名シーンでした。

また、ハイドンの命を縮めることになったナポレオンの存在も興味深かったです。ナポレオンによるウィーン侵攻の様子もこの本では目の当たりにすることになります。

ナポレオンは19世紀ヨーロッパの文学、思想、芸術を知る上では欠かせない人物です。当ブログでもここまで何度も紹介してきました。

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そのナポレオンとハイドンの繋がりも非常に興味深かったです。

この伝記も非常に面白い作品でした。ぜひぜひおすすめしたい伝記です。

以上、「ひのまどか『ハイドン―「使い捨て作品と芸術作品」』モーツアルトも憧れた天才音楽家のおすすめ伝記」でした。

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ハイドン: 使い捨て作品と芸術作品 (作曲家の物語シリーズ 13)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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