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宗教は人類と共に進化した?~オルドバイ渓谷が示すもの~ タンザニア編②

オルドバイ
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宗教は人類と共に進化した?~オルドバイ渓谷が示すもの~ 僧侶上田隆弘の世界一周記―タンザニア編②

みなさんこんにちは。3月も間もなく終わりというのに、まだまだ寒い日がつづいていますね。暖かな陽気が待ち遠しいこの頃です。

さて本日は、私が最初に訪れる地、オルドバイ渓谷と宗教との関わりについてお話しさせていただきます。

前回の記事ではオルドバイ渓谷にて人類の祖先アウストラロピテクス(歴史の授業で聞いたことありませんか?)の化石が発見されたことにより、人類の起源の研究が進んだことをお話ししました。

私達人類はおよそ700万年前頃、原初のチンパンジー属から枝別れし、ホモ属という私達人類の祖先が生まれました。

そしてその祖先の血を受け継いで今現在生きてるのが私達人間、ホモ・サピエンスという種です。

私達人間は700万年という途方もなく長い時間を、少しずつ少しずつ時間をかけて進化してここまでやってきました。

ちなみに今現在の私達とほぼ同じ体、つまりホモ・サピエンスになったのは約20万年前。そして現存する最古の町が出来上がったのが約1万年前とされています。

そう考えてみると、私達人間の文化と歴史は700万年という大きなスケールで見てみると、ずいぶんと最近の出来事であるということになります。

そして近年、研究者達、特にチンパンジーの専門家がこのような発表をしています。

「人類の道徳や宗教は、この途方もなく長い時間をかけた進化の過程で生まれてきたものである。」

なぜチンパンジーの専門家が道徳や宗教の起源について研究しているのかというと、人間とチンパンジーは近い存在であるからということが挙げられます。

この「近い」というのは700万年前にこの原初のチンパンジー属から人類とチンパンジーは枝分かれしたということを意味しています。

つまり、人間とチンパンジーは共通の祖先から生まれたということです。

共通の祖先を持つということは同じような生物学的特徴を持つことを意味します。

よってチンパンジーの生態を研究することで人間の生態の研究にもつながるということになります。

私がこのことを知ったのは、人類学者クリストファー・ボームの著書『モラルの起源』と、霊長類学者フランス・ドゥ・ヴァールの『道徳性の起源』がきっかけでした。

彼らは、人間が結束する上で道徳や宗教は必要不可欠なものであると述べています。

そして、人類が知性を発達させたのは厳しい環境下で生き抜くためでした。

もともと人類はアフリカのジャングルの住人でした。広大なジャングルの樹上でひっそりと果物などを食べながら生きていました。

しかし氷河期が始まると、ジャングルが減り、木の少ないサバンナの大平原に世界は一変します。

サバンナにはライオンをはじめ、大型肉食獣が山ほどいます。

さらに果物を実らせる木もなくなってしまいました。食糧難です。

氷河期の前までは、ジャングルの木に登ってしまえばライオンから逃れることが出来ました。しかもその木の上には食料たる果物もたくさんあります。

しかし氷河期の始まった今、人間は危険なサバンナの大平原に投げ出されることになってしまいます。

そこで生き残るために発達し進化させたのが知能であり、道徳であり、その長い道筋の先に宗教が生まれてきたのでありました。

ここでこう疑問に思われた方もいるかもしれません。

「ジャングルが全部なくなったわけでもあるまいし、サバンナにだって木はあるじゃないか。そこで暮らせばよかったのに」

そうなんです。まさしくその通りです。

ですが、それは出来ませんでした。

なぜなら、そこは私達のご先祖様より強い様々な生物が支配する場所だったからです。

実は人間は自然界において、弱者以外の何者でもなかったのです。

例えばですが、大型霊長類であるチンパンジーを甘く見てはいけません。その戦闘力たるや凄まじいものです。人間の体をいとも簡単に細切れに引き裂く腕力を持ち、鋭い犬歯は骨をも砕く威力を持ちます。

氷河期には樹上の安全地帯は完全に彼らの支配下にありました。数少ない安住の地に、弱者たる人類の入る余地はどこにもなかったのです。

その弱者たる人類が生存のために身につけた能力。

それが知能やそれに基づく集団行動と結束力であり、やがて道徳や宗教へとつながり、人類は今日のように自然界において今の地位に君臨するようになりました。

私達人間も動物です。

人間だけが特別じゃない。

道徳も宗教も、動物として生き延びるために生まれてきた。

だとしたら、道徳も宗教もなかなか捨てたものじゃない。

大きな意義がそこにある。

私はそのことにとても勇気づけられたような気がしました。

まとめ―だからこそ、オルドバイ渓谷!

1年半前、クリスファー・ボームの『モラルの起源』を初めて読んだ時、私は衝撃を受けました。

「自分は動物なんだ・・・」

わかっていたつもりではありましたが、どうやら全然わかっていなかったようです。

人間とその他の動物は何かが決定的に違うのだと思い込んでいました。

ですがそうではなかったようです。

この本は今まで私の中にまったくなかった発想や視点を与えてくれました。

私の中の人間に対する考え方をがらっと変えてしまった瞬間でした。

「見たい!人類の始まりを!その地で人間がそう進化せざるをえなかったという人類発祥の地を!」

衝撃のあまり、このことで私の頭はすっかりいっぱいになってしまいました。

実は人類の発祥の地を訪れたいというこの思いこそ、今回の世界一周の直接のきっかけでした。

オルドバイ渓谷のあるタンザニアに行くには飛行機も乗り継ぎがいくつか必要です。

せっかくアフリカまで行くのにそこだけで帰ってくるならもったいない。

なら他にも行ってみたかったところはたくさんあるぞ?

そうして今まで学んできたことと向かい合わせになりルートを決めていったのが今回の世界一周の旅です。

だからこそ、オルドバイ渓谷。

私にとってタンザニアを選んだのは大きな意味があります。

この旅の出発点がまさしくこのオルドバイ渓谷になります。

長々とお話しさせて頂きましたが、いよいよ明日出国します。本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

気を付けて行ってきます。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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