目次
鎌田茂雄『朝鮮仏教史』概要と感想~日本に仏教をもたらした朝鮮の仏教事情を知るのにおすすめの入門書!
今回ご紹介するのは2020年に講談社より発行された鎌田茂雄著『朝鮮仏教史』です。
早速この本について見ていきましょう。
四世紀後半、朝鮮半島へ主として中国から伝わったとされる仏教。
高句麗・百済・新羅の王たちは新しい思想をどのように受け入れたのか。
またその後の王権と社会は仏教の影響のもとでどんな文化を形成していったのか。
崇拝と排斥、求道と教学、独自の哲学の錬磨、宗派の流れなど、
東アジア仏教圏の中でも独特の道を歩んだ朝鮮仏教の歴史を総覧する。
Amazon商品紹介ページより
本書の著者鎌田茂雄氏はこれまで当ブログでも何度も紹介した中国仏教史の大家です。
あわせて読みたい
鎌田茂雄『中国仏教史』概要と感想~中国仏教と政治のつながりや時代背景を学べるおすすめの教科書!
この本では単に中国仏教の歴史や教義を見ていくのではなく、その時代背景も見ていくことになります。
まさに「宗教は宗教だけにあらず」ということを感じさせられます。
あわせて読みたい
鎌田茂雄『仏教の来た道』あらすじと感想~仏教の中国伝播の歴史を学べるおすすめ参考書。三蔵法師達の...
仏教はインドから中国へ伝播しました。そのこと自体は広く知られていることではありますが、では実際にいつどこでどのように伝えられていったかというと意外とわからないですよね。私自身も漠然としか知りませんでした。この本を読んで中国からインドへ経典を求めて旅をすることがどれほど危険で命がけだったかに驚くことになりました。
本書『朝鮮仏教史』はその鎌田茂雄氏による朝鮮仏教史のおすすめ入門書になります。
上の中国仏教史の本もそうなのですが、鎌田氏は時代背景も詳しく解説してくれます。朝鮮は私達の隣国ではありますが、意外とその歴史はわからないですよね。
私自身仏教伝来時期に百済、新羅、高句麗という三国時代があったというのは知ってはいても、その細かい背景はほとんどノータッチというのが正直なところでした。
ですが、以前当ブログでも紹介した高田貫太著『海の向こうから見た倭国』を読んでそれも激変しました。複雑怪奇な朝鮮半島事情があったからこそ日本に様々な技術や文化がもたらされ、そのひとつが仏教だったということをこの本で知ったのです。この本では直接仏教には言及されていませんが、渡来人がもたらしたもののひとつに仏教が入ることは間違いありません。
あわせて読みたい
高田貫太『海の向こうから見た倭国』あらすじと感想~古代日本と朝鮮、中国の相互関係を学べる刺激的な作品
古代日本では朝鮮から様々な技術が伝わっていたことはよく知られていますが、5世紀が「技術革新の世紀」とまで呼ばれていたのには驚きました。
そして本書を読めばこうした朝鮮との交流が5世紀どころか弥生時代の後半頃から断続的に続いていたことも知ることになります。
私はこの本を読み渡来人と朝鮮に強烈に興味が湧いてきました。そこで手に取ったのが本書『朝鮮仏教史』であったわけです。
そして実際に私は韓国釜山を訪れ、韓国仏教を代表する名刹梵魚寺を訪れました。このお寺の境内には右から弥勒殿、毘盧殿、観音殿、大雄殿、地蔵殿とそれぞれの仏様の名を関したお堂が建てられていました。(順に弥勒仏、毘盧遮那仏、観音菩薩、釈迦牟尼仏、地蔵菩薩)
実はこれこそこの本で説かれていた韓国仏教の大きな特徴の一つになります。
梵魚寺 「対馬からフェリーで釜山へ!渡来人の究極のイヤリングに度肝を抜かれる」の記事より
本書によると韓国仏教は総合仏教であると解説されています。つまり、日本では各宗派の教えが別個にあってそれぞれが自分の信じる道を行くのに対し、韓国ではそれら個別の教えを一つの宗派に集約して融合させるという特徴があるのだそうです。だからこそ同じ境内にこれほど多様な仏殿が並び立っているのだそう。
さらに言うならば日本では八宗兼学といって、僧侶が互いの宗派の教えを学び合うという伝統があるのですが、韓国においてはそれがそもそも必要ないほど教義的に統一が図られているとのこと。詳しくは本書にありますのでここではこれ以上はお話しできませんが、梵魚寺の構造はまさにこの総合仏教の特徴が見られると言えるのではないでしょうか。
またもう1点韓国仏教で興味深いのが仏教以外の土着の神様や道教の影響も大きいという点です。言うならば神仏習合が顕著に見られるということになります。
神仏習合というと、日本仏教のあり方としてよく言われることでありますが、これは何も日本だけの専売特許ではないということになります。これは中国仏教においてもそうですし、厳格なイメージのあるスリランカ仏教にも当てはまります。
スリランカを代表する寺院仏歯寺境内にはヒンドゥー教の女神パッティニを祀るお堂があります。写真中央がパッティニ。
(詳しくは「キャンディの仏歯寺でプージャを体験~スリランカの伝統的な仏教とは何なのかについて考えてみた」の記事参照)
やはりそれぞれの地に根付くうちに土着のあり方と混じっていくのが人間の営みとしてよく見られることなのだということを感じさせられます。
本書『朝鮮仏教史』は朝鮮仏教を時代背景と共に見ていける素晴らしい参考書です。近いが遠い韓国仏教の入門書としてぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「鎌田茂雄『朝鮮仏教史』概要と感想~日本に仏教をもたらした朝鮮の仏教事情を知るのにおすすめの入門書!」でした。
Amazon商品紹介ページはこちら
朝鮮仏教史 (講談社学術文庫)
次の記事はこちら
あわせて読みたい
加納重文『九条兼実』あらすじと感想~法然教団を支援した大貴族の生涯を知れるおすすめ参考書
本書の主人公九条兼実は浄土宗や浄土真宗の僧侶には非常に馴染み深い人物です。
と言いますのも、九条兼実は摂関家の大物貴族で法然教団を支援したことで知られています。しかも法然の主著『選択本願念仏集』もこの九条兼実の求めによって書かれました。法然教団にとってそれほど大きな存在が九条兼実という人物です。
ただ、本書はそんな九条兼実のイメージを覆す刺激的な伝記です。
前の記事はこちら
あわせて読みたい
若狭徹『埴輪は語る』あらすじと感想~埴輪とはそもそも何なのか。その歴史と宗教的な意味を知れる刺激...
本書の著者若狭徹氏は前回の記事で紹介した『もっと知りたい はにわの世界』の著者でもあります。『もっと知りたい』シリーズは写真やイラストが豊富なため入門書として最適な一冊でしたが、本書『埴輪は語る』はそこからさらに詳しく埴輪について知りたい方に非常におすすめな参考書です。
関連記事
あわせて読みたい
高田貫太『海の向こうから見た倭国』あらすじと感想~古代日本と朝鮮、中国の相互関係を学べる刺激的な作品
古代日本では朝鮮から様々な技術が伝わっていたことはよく知られていますが、5世紀が「技術革新の世紀」とまで呼ばれていたのには驚きました。
そして本書を読めばこうした朝鮮との交流が5世紀どころか弥生時代の後半頃から断続的に続いていたことも知ることになります。
あわせて読みたい
河内春人『倭の五王』概要と感想~5世紀頃の東アジア情勢と日本外交を学べるおすすめ本!古代日本は想像...
本書を読んでいると、古代日本を含めた昔の首脳部がいかに海外情勢を詳しく知っていたかに驚くことになります。現代のような通信手段もなかった時代にどうしてそんなに海外のことを知れたのかと驚くばかりでした。
古代日本は私たちが想像するよりはるかに国際的な世界を生きていたようです。
あわせて読みたい
吉川真司『飛鳥の都』概要と感想~7世紀日本の流れや国際関係も知れるおすすめ入門書
飛鳥時代といえば聖徳太子がクローズアップされがちですが、その存在の背後にはグローバルな時代背景が広がっていました。そして奈良時代に向けて倭国がどのように変貌していったかという過度期の内実を知れる本書は実に刺激的です。
あわせて読みたい
高田貫太『アクセサリーの考古学』あらすじと感想~古代朝鮮の驚異の技術力に衝撃!5世紀のイヤリングの...
私自身普段アクセサリーを付けるタイプではないので装飾品にはほとんど興味がなかったのですが、この本を読んでアクセサリーについての考え方ががらっと変わりました。
そして何より、私はすっかり古代朝鮮のイヤリングの美しさに魅了されてしまいました。
あわせて読みたい
川又正智『ウマ駆ける古代アジア』あらすじと感想~人類はいつから馬に乗り始めたのか
本書ではシュメル文明から始まり、ギリシャなどのヨーロッパ、古代中国(殷、周、春秋戦国時代)における馬の利用について詳しく解説されます。
馬はどのようにして人間と暮らすようになったのか、そして人類の歴史に与えた影響はどのようなものだったのかを大きく学ぶのに本書は非常におすすめです。