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佐藤美由紀『ゲバラのHIROSHIMA』あらすじと感想~チェ・ゲバラは広島原爆ドームを訪れ、何を思ったのか

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佐藤美由紀『ゲバラのHIROSHIMA』概要と感想~チェ・ゲバラは広島原爆ドームを訪れ、何を思ったのか

今回ご紹介するのは2017年に双葉社より発行された佐藤美由紀著『ゲバラのHIROSHIMA』です。

早速この本について見ていきましょう。

2017年は現在も世界中に支持者を持つ革命家チェ・ゲバラの没後50年。
1959年に広島を訪れ、強い衝撃を受けた氏はキューバに戻ってから「(平和のために闘うならば)広島を訪れることがなによりも大事だ」と訴え続けた。
ゲバラは広島を知り、どう影響を受けたのか。ノンフィクションライターの著者が、
現地取材によって革命家ゲバラの平和への思いを徹底的に探っていきます。

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エルネスト・チェ・ゲバラ(1928-1967)Wikipediaより

チェ・ゲバラはアルゼンチン生まれの革命家でキューバ革命の英雄として知られています。

ゲバラについてはこれまでも当ブログで紹介してきました。

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上の伝記『チェ・ゲバラ伝』でも書かれていましたがチェ・ゲバラは外交使節団としてキューバ革命後に来日しています。

その時に元々予定に入っていなかった広島にどうしても行きたいとゲバラが申し入れ、ただでさえ厳しいスケジュールの合間を縫って原爆ドームを訪れたのでした。

この本はそんなゲバラの広島訪問にスポットを当てた作品になります。

そしてこの本の大きな柱となるのは1959年に広島から妻の元へ送られたゲバラのハガキです。

このハガキについてはこちらヒロシマ平和メディアセンターにニュース記事が掲載されていましたのでこちらをご覧ください。現物の写真や原爆ドームを訪れたゲバラの写真が掲載されています。(もちろんこの本ではそうした写真はすべて掲載されています)

また、この作品のエピローグではこのハガキについて次のように述べられています。

慰霊碑の前に沈痛な面持ちで立ちすくんだゲバラ。

(※ブログ筆者注「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という)碑文になぜ主語がないのかを問い質したゲバラ。

原爆資料館を見学して、「きみたち日本人は、アメリカにこれほど残虐な目に遭わされて、腹が立たないのか!?」と絞り出すように言ったゲバラ。

原爆病院で被爆者と触れ合って涙を流し、「これからは、ヒロシマを、ヒロシマの人々を愛していこう」とつぶやいたゲバラ。

あのハガキには、あの《今日はヒロシマから送ります。原爆の街です。このドームの中には七万八千人の死者の名前が刻まれています。合計一八万人と推定されています。平和のために断固として闘うには、ここを訪れるのがよいと思います》という文言には、悲しみ、祈り、怒り、愛、希望、決意……といった、ヒロシマでゲバラの内側から湧き上がったすべての感情が凝縮されているのかもしれない。

世界で唯一の被爆国である日本に生まれ育ちながらも、ヒロシマ・ナガサキのことをよく知らない。そんな日本人が増えることをゲバラはわかっていたのだろうか。

平和のために断固として闘うには、ここを訪れるのがよい―。

現代の日本人に訴えかける言葉でもあるような気がする。

双葉社、佐藤美由紀『ゲバラのHIROSHIMA』P167

私はこの本をぜひおすすめしたいです。

あのチェ・ゲバラが広島を訪れ、上のように言ったこと。このことの意味はあまりに大きいように思えます。

この本ではそんなゲバラの広島訪問についてじっくりと見ていくことができます。

ゲバラを知っている方も、そうでない方もぜひ読んで頂きたい作品となっています。戦争、原爆のことを考える上で本当に大切なことをこの本では問題提起してくれています。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「佐藤美由紀『ゲバラのHIROSHIMA』~チェ・ゲバラは広島原爆ドームを訪れ、何を思ったのか」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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