G.ホルムステン『ルソー』あらすじと感想~入門書に最適なおすすめ伝記!
ルソー入門書に最適!G.ホルムステン『ルソー』概要と感想
今回ご紹介するのは理想社より1985年に発行されたG.ホルムステン著、加茂直樹、高田信良訳の『ルソー』です。
この本はルソーの伝記としてとてもおすすめです。入門書として最適なように思います。
訳者あとがきでは次のように述べられています。
ルソーに関する評伝や研究書は数多いが、その中で、ドイツのジャーナリストによって書かれた本書の特色は、次のようなところにあると思われる。まず、著者はルソーの生涯と思想を分けてしまわず、両者を一体のものとして叙述している。これは、ルソーのような特異な思想家の評伝を書く場合には適切な方法であって、読者は波瀾に満ちたルソーの生涯をたどりながら、知らず知らずに、彼の思想の本質に迫って行くことができるのである。また、ルソー自らのことばで語らせる、という方法を意識的に多用し、著者自身はルソーに対して付かず離れずの態度を保っている。そして、ルソーという多面的で矛盾に満ちた存在を、バランスのとれた偏らない仕方で描き出すことに成功している。最後に、一般の読者がルソーに対して示す関心には多種多様なものがあると思われるが、そうしたさまざまの関心にこたえることができるような、広い視点に立った叙述がなされている。新旧のルソー研究の成果もかなりとりいれられており、ルソーの思想へのすぐれた入門書、概説書の役割を果たしうると思われる。
理想社、G.ホルムステン著、加茂直樹、高田信良訳『ルソー』P202-203
この本のありがたいのは絵や写真などのビジュアル資料も豊富な点です。当時の様子などもイメージしやすかったです。
また、伝記としても当時の時代背景などの知識がない人にもわかりやすく伝えるように書かれています。非常に読みやすく、すらすらと進むことができます。波乱万丈なルソーの生涯やその思想の特徴を楽しく学ぶことができます。
これまで当ブログでも紹介してきたヴォルテールも同時代人です。そのヴォルテールとの因縁もこの本では詳しく知ることができます。ヨーロッパ思想を切り開いた両者がなぜ犬猿の仲になったのか、それも非常に興味深かったです。
このことについて私が最も印象に残っている箇所があります。それがこちらです。
ヴォルテールとルソーの長い争いは、啓蒙主義の顔の持つもっともなげかわしい汚点の一つである。ヴォルテールはジャン=ジャックと同様に感じやすく神経質であったが、文芸を情念によって歪めるのは見苦しい、といつも考えており、ルソーの感情と本能に訴える方法のうちに、反抗ではじまり宗教に終わるような、個人主義的で無政府主義的な非合理主義を感じとっていた。
ヴォルテールはパリの息子であり、その快楽とぜいたくを身につけていた。ルソーはジュネーヴ生まれであり、陰気な清教徒市民であった。彼の心は自分が直面した階級分裂と自分が享受できなかったぜいたくとに対する恨みでいっぱいであった。ヴォルテールの見解は、文化の罪はそれが生み出す快適さと芸術によって償われるというものだった。ルソーはいたるところに快適でないものを見出し、ほとんどあらゆるものを批判した。改革者はヴォルテールに耳を傾け、革命家はルソーに耳を傾けた。
理想社、G.ホルムステン著、加茂直樹、高田信良訳『ルソー』P155-156
ここだけ引用すると、ちょっとヴォルテールが贅沢をしている悪者っぽくなっていますが、著者の意図はそこにはありません。
私がここで気になったのは一番最後の箇所の「改革者はヴォルテールに耳を傾け、革命家はルソーに耳を傾けた。」という言葉です。
これは2人が後の人たちにどのように影響を与えたかということを見事に言い表した箇所だと思います。改革者と革命家の違いを考える上で非常に大きな一言だと思います。
このことについてここで解説はしませんが、この本を読めばその言わんとすることがはっきりとしてきます。
入門書でありながら深いところまで私たちを連れていってくれるおすすめな作品です。
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