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『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』概要と感想~曇鸞、道綽、善導の思想と生涯、時代背景も知れるおすすめ参考書!

仏教の思想8
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塚本善隆、梅原猛『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』概要と感想~曇鸞、道綽、善導の思想と生涯、時代背景も知れるおすすめ参考書!

今回ご紹介するのは1997年に角川書店より発行された塚本善隆、梅原猛『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』です。

早速この本について見ていきましょう。

日本の浄土思想の源、中国浄土教。法然、親鸞の魂を震撼し、日本に浄土教宗派を誕生させた善導の魅力、そして中国浄土教の基礎を創った曇鸞のユートピア構想とは? 浄土思想がもつ人間存在への洞察を考察。

Amazon商品紹介ページより

本書『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』は浄土教の流れを知るのにおすすめの参考書です。浄土教は日本でも源信、法然、親鸞などが有名ですが、日本に浄土教が伝えられるまでには当然ながらインドから中国、中国から日本へという流れが存在しています。その流れをわかりやすく解説してくれる本書は非常にありがたいです。

本書について「はしがき」では次のように述べられています。

「不安と欣求ごんぐ」という題名で、われわれは中国浄土教の思想を扱った。中国浄土教はふつう、日本では、日本浄土教への発展段階の思想としてとらえられる。十二世紀の偉大な日本の僧、法然は、七世紀の中国の僧、善導の純潔な魂にふれた。それはまさに世紀の運命を決する出会いであった。以後日本に浄土宗・浄土真宗の宗派が作られ、浄土教系の宗派は、わが国でもっとも多く信者をもつ宗派となり、浄土の思想は日本人にもっとも深い影響を与えた思想の一つとなった。われわれ日本人が、自らの魂を知るには、浄土の思想を知らねばならない。

この場合、多く浄土系の宗派に属する日本の浄土教研究者にとって法然の、親鸞の、あるいは一遍の語った宗教的真理のみが問題であり、中国の浄土教というものは、こういう絶対の真理にいたる一過程にすぎないものとして扱われるのがつねであった。

われわれが何度も強調するように、この『仏教の思想』は、もう一度、われわれの魂を形成した多くの仏教の思想を、思想として再検討しようとするものである。中国の浄土教を日本浄土教への一過程と見ることも、たしかに一つの見解にちがいない。しかし、それはそれとして独自な思想的性格をもつのである。それは、やはり一つの時代の要求から生まれたものであり、そこにはその時代を真剣に生き抜いた人々の精神の影があるのである。その時代を明らかにすると同時に、その時代に生きた思想家の心の光と影を明らかにしなければならぬ。

角川書店、塚本善隆、梅原猛『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』P13-14

「多く浄土系の宗派に属する日本の浄土教研究者にとって法然の、親鸞の、あるいは一遍の語った宗教的真理のみが問題であり、中国の浄土教というものは、こういう絶対の真理にいたる一過程にすぎないものとして扱われるのがつねであった。」

これはまさに私もドキッとしました。

私は浄土真宗の僧侶です。そのため親鸞の著作やその生涯に関しては多く触れることになりますが、中国浄土教についてはなかなか学ぶ機会がないというのが正直なところでした。そんな私ではありましたが本書を読んでみて驚くことがそれこそ山ほどありました。日本に浄土教がやってくるまでこんな歴史があったのかと目から鱗でした。もちろん、これまで大学院などでも曇鸞、道綽、善導という中国浄土教の祖師たちの思想は学んできましたが、彼らの詳しい生涯までは知らなかったのです。

本書では曇鸞、道綽、善導の思想だけでなく彼らの生涯や時代背景も知ることができます。当時の中国の政治情勢あってこその仏教ということがよくわかります。度重なる戦乱や仏教弾圧の中で中国浄土教が発展し、善導の時代には繁栄極める国際都市長安の繁華街で善導浄土教が支持を受けていくという流れは非常に興味深かったです。やはり歴史に名を残す偉人たちと時代背景のつながりというのは面白いです。浄土真宗僧侶としてはどうしても親鸞や法然と向き合う時間が長くなってしまいがちですが、その源流を辿るというのもやはり大きな意味を感じます。源流を辿るからこそ親鸞の特徴や独自性が見えてくるというものです。

そういう意味でも本書は親鸞を学ぶ上でも非常に貴重な作品ということができるでしょう。著者の語りもわかりやすく、ひとつの時代絵巻を読んでいるかのような読後感です。シンプルに読み物として面白いです。

ぜひぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「『仏教の思想8 不安と欣求〈中国浄土〉』~曇鸞、道綽、善導の思想と生涯、時代背景も知れるおすすめ参考書!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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