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『スリランカを知るための58章』概要と感想~政治、宗教、生活、現代スリランカを様々な視点から見ていくおすすめ参考書!

スリランカを知るため
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『スリランカを知るための58章』概要と感想~政治、宗教、生活、現代スリランカを様々な視点から見ていくおすすめ参考書!

今回ご紹介するのは2013年に明石書店より発行された杉本良男、高桑史子、鈴木晋介編『スリランカを知るための58章』です。

早速この本について見ていきましょう。

1983年以来26年間に及んだ内戦。2004年のスマトラ沖大地震とインド洋大津波。「輝ける島」スリランカは近年、大きな試練にさらされた。本書はスリランカの全体像とともに、内戦と災害を積極的に取り上げ再生する人々の生活を深層から描き出す。

Amazon商品紹介ページより

本書『スリランカを知るための58章』は現代スリランカを様々な切り口から見ていくおすすめの参考書です。

本書について「はじめに」では次のように述べられています。

2012年11月、国連はスリランカの内戦について、1983年以来26年間に10万人以上が亡くなり、とりわけ終結前5カ月の間に4万人以上が殺害された、との報告を明らかにした。スリランカ政府はこの報告に大いに不快感を示したが、これはいまだに内戦の余波が消えていないことを世界に認識させた。1983年から続いていた内戦状態は2009年5月に終結宣言がだされて一応解消されたが、さまざまな影響は計り知れない。

この混乱にさらに追い打ちをかけたのが2004年末に起こったスマトラ沖大地震、インド洋大津波であった。この未曾有の災害により、海岸部を中心に公式発表で3万人以上の人びとが命を落としただけでなく、内戦の置き土産で海岸部に敷設されていた地雷が内陸におしやられて被害が拡大したことなども報じられた。一時小康状態に向かっていたスリランカ経済は再び大きな打撃を受けた。

スリランカはとくに仏教関係者にはこの世のパラダイスのように受け取られてきた。「スリー・ランカー」つまり「輝ける島」の意味を持つスリランカは、そのかたちから「インド洋の真珠」などともいわれてきたが、この四半世紀ほどの間に美しいイメージは失われてしまったようにみえる。

本書を編集するにあたって、とくに日本も深く関わっている開発援助について詳細にふれるとともに、内戦と災害をむしろ積極的に取りあげることによってスリランカ再生への願いを際立たせることにした。本書のような地域に関する概説書はこのような際物はできるだけ避けるべきであろうが、ここではあえてスリランカを震撼させた2つの大きな出来事を積極的に取りあげている。それはこの2つの出来事がスリランカという国をあり方を根本からゆるがせたからにほかならない。

本書の執筆者はいずれも現地での豊かな調査や活動の経験を持っている。世界がグローバル化し情報も早く軽やかに浮遊する現在、こうした地に足のついた研究や活動がおろそかになりがちであるし、またネット社会に生きる人びとは表層をなでてこと足れりとする傾向も強くなってきている。こうしたときにこそ、人びとの生活の場面から、さまざまな大きな物語や制度を根本的に見直す必要があると考えている。この意味で、本書の記述は執筆者の専門分野こそ異なっているが、基本的に人びとの生活のなかへ深く入り込み、人びとの生活の深層から世界を見ようとする人類学的視点に通ずるものだといえる。

明石書店、杉本良男、高桑史子、鈴木晋介編『スリランカを知るための58章』P3-4

「世界がグローバル化し情報も早く軽やかに浮遊する現在、こうした地に足のついた研究や活動がおろそかになりがちであるし、またネット社会に生きる人びとは表層をなでてこと足れりとする傾向も強くなってきている。こうしたときにこそ、人びとの生活の場面から、さまざまな大きな物語や制度を根本的に見直す必要があると考えている。」

これは非常に重要な指摘です。情報が溢れる現代だからこそ、現地での体験や人々の生活にしっかりと目を向けなければならない。これはぜひ私も肝に銘じたいと思います。

本書は現代スリランカの大枠を掴むのに非常におすすめです。国レベルの政治経済、歴史の概略を知れるだけでなく、現地の人々の生活の模様も詳しく語られます。どちらか一方だけではなく、両者を見ていくことでよりスリランカの姿を知ることができます。スリランカ特有の宗教事情も生活と絡めてわかりやすく学べるのも非常にありがたいです。

現地の社会問題や今後の課題も本書では語られるのですが、それはスリランカだけの問題ではなく私達日本人のありかたについての問いかけにもなっています。スリランカという他者を通して私達自身についても考えさせられます。

現代スリランカの入門書として本書は最適です。しかも入門書でありながらかなり深い所まで私達を連れて行ってくれます。

巻末にはおすすめのスリランカ参考書のリストも掲載されているので学びの入り口としても便利な作品です。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『スリランカを知るための58章』~政治、宗教、生活、現代スリランカを様々な視点から見ていくおすすめ参考書!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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