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中村元『古代インド』あらすじと感想~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!

古代インド
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中村元『古代インド』概要と感想~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!

今回ご紹介するのは2004年に講談社より発行された中村元著『古代インド』です。私が読んだのは2018年第17刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

苛酷な風土と東西文化の融合
仏教はこの地に興り、隆盛を極め、消滅した

レンガ造りの下水溝や大浴場を備えたモヘンジョ・ダロに代表される高度な都市文化を有したインダス文明。アジャンターの壁画に往時を伝える絢爛華麗なグプタ文化。この地に興り、隆盛を極め、消えた仏教。苛酷な風土と多様な民族・東西文化の融合が生み出した古代インド文明の全貌と、悠久の時を生きる民衆の姿を、仏教学の泰斗が鮮やかに描き出す。

Amazon商品紹介ページより

この本は仏教学者中村元先生による古代インドの参考書になります。

中村元先生はインド思想研究の古典とも言うべき『インド思想史』を残しておられますが、本作『古代インド』の素晴らしい点は何と言っても、仏教が生まれてきた古代インドの時代背景や気候風土を知れる点にあります。

この本について「はじめに」では次のように述べられています。

古代のインド—それがどのようなものであったか、それを印象的に述べようとするのが、本書の意図するところである。

わたくしは、さきに『インド古代史』(上下二巻、春秋社)を書いたが、その叙述は文献をおもな資料としたものであった。

しかし、本書においては、わたくし自身の旅行調査および考古学的・美術的遺物・遺品をたよりに、古代インド人の生活と思想を歴史的に述べたつもりである。図版をできるだけ多くのせたのも、そのためである(なお旧著は最古代からクシャーナ王朝時代までしか扱わなかったが、本巻は、緯爛たるインド文化の花を咲かせたグプタ王朝時代まで含めて述べてある)。

その結果として、本書は、「現代を通じて発見されたインド古代史」とでもいうべき書物となった。なお、図版やその説明に関しては、講談社『インドの美術』その他によった点が多い。

講談社、中村元『古代インド』2018年第17刷版P22-23

この本はまずインドの先史時代から始まり、インダス文明、アーリア人の侵入、バラモン教の発展など、仏教が生まれ、衰退するまでの過程を詳しく知ることができます。なぜ仏教は生まれたのか、どのような人にブッダの教えが響いたのか、どのようにして仏教教団がインドに広がっていき、最後には衰退することになってしまったのか、それらの大きな流れをわかりやすく学ぶことになります。

仏教を思想面だけでなく、歴史や文化、民族、気候風土の側面から見ていくことの大切さをこの本では強く感じさせられることになります。

上の引用にもありましたように、中村元先生は実際に現地でインドを体感した上でこの本を書いています。本を読むだけではわからない現地の雰囲気、感覚を中村元先生は大切にしておられます。インド人は「インドという特定の環境」の中でどのように生きていたのか、その中にこそ宗教や思想を理解する鍵がある。遠く離れた地で文献だけを見ていてはわからないことがあるということを痛感します。

また、仏教がバラモン教やヒンドゥー教の枠組みの中で生まれ、相互に作用しながら生き続けていたことも実感することになります。

仏教の教えや思想を解説する本はそれこそ無数にありますが、それらの思想が生まれてきた時代背景や気候風土をわかりやすくまとめた本は意外と少ないです。この本は私達日本人にとって意外な発見が山ほどある貴重な作品です。これを読めばきっと驚くと思います。

また、初学者でも楽しく読めるほど読みやすい作品であるのも嬉しい点です。

これはぜひぜひおすすめしたい作品です。時代背景や気候風土、民族性を学ぶことの大切さを強く実感する参考書です。仏教がどのようにして生まれ、どのように発展し衰退していったのかも知れる名著です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「中村元『古代インド』~仏教が生まれたインドの風土や歴史を深く広く知れるおすすめ参考書!」でした。

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古代インド (講談社学術文庫 1674)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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