D・カーネギー『人を動かす』概要と感想~書名で損!?自分の至らなさを猛省させられる名著。自己啓発書の元祖とも言える古典

人を動かす 僧侶の日記

D・カーネギー『人を動かす』概要と感想~書名で損!?自分の至らなさを猛省させられる名著。自己啓発書の元祖とも言える古典

今回ご紹介するのは1936年にデール・カーネギーによって発表された『人を動かす』です。私が読んだのは文庫版2012年第3刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

邦訳500万部突破の歴史的ベストセラー。
人づきあいの根本原則を実例豊かに説き起こし、時代を超えて読み継がれる不朽の名著。


あらゆる自己啓発書の原点となったデール・カーネギー不朽の名著。
人が生きていく上で身につけるべき人間関係の原則を、
長年にわたり丹念に集めた実話と、実践で磨き上げた事例を交え説得力豊かに説き起こす。
深い人間洞察とヒューマニズムを根底に据え、
人に好かれて人の心を突き動かすための行動と自己変革を促す感動の書。
1936年の初版刊行以来、時代に合わなくなった部分を改良するなど、
折々に改訂が施されてきた現行の公式版。

Amazon商品紹介ページより

まずはじめにお話ししたいのがこの記事のタイトル通り、この本が書名で圧倒的に損をしているという点です。

『人を動かす』というタイトルは何か他人を自分の思うままに動かすかのようなややネガティブな印象を与えてしまいます。

この本の原著のタイトルは『HOW TO WIN FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE』で、大ざっぱに訳すならば『仲間を得て、人々に影響を与える方法』といったところでしょうか。たしかに「人々に影響を与える」という点から『人を動かす』という和訳のタイトルが付けられたのもわかるのですが、この書名を見ると利己的で怪しい自己啓発本なのではないかという警戒心を抱いてしまうのも事実なのではないでしょうか。少なくとも私はこれまでこの本を気軽に人に薦めることはできませんでした。この本を紹介したら自分がどう思われるか正直恐かったのです。

ですがこの本はそうした怪しいものではありません。

私がこの本を初めて手に取ったのは大学三年生の時で、自己啓発書と宗教の関係性について調べていたのがきっかけでした。当時私は自己啓発書に書かれているのはキリスト教や様々な宗教の教義から宗教色を抜いたものなのではないかという仮説を立てて様々な本を読んでいたのです。

そんな時に出会ったのがこの本でした。

この本は自己啓発書の中でも古典中の古典ということで私はその時も「この本もキリスト教の影響も強いのだろうな」という思いで読み始めたのですが、読み始めてすぐにこの本の奥深さに胸打たれることになりました。

「この本は只者ではない・・・!」

明らかに世に氾濫する怪しい本とは違います。

当時私は21歳の年です。まだまだ若く、言うならば尖っていたどうしようもない時期でした。

ですがこの本を読んで私自身の至らなさを猛省させられることになりました。うまくいかないことを周りのせいにして自分勝手に世界を見ていた自分。傲慢な自分。自分のものさしで勝手に他者を裁いていた自分。

この本は『人を動かす』というタイトルではありますが、私にとっては全くそれどころではありませんでした。自分は何と愚かな人間だったのかと読む度に猛省させられることになりました。この本に出てくる残念なパターンの人間がなんと自分に当てはまることか。私は自分自身で自分の人生を苦しいものにしていたのです。

この本ではとにかく様々な実例が展開されていきます。実際の生活における様々なシーンで「よく生きるとは何か」、「人間関係において大切なことは何か」、「他者と共存していくというのはどういうことなのか」ということを考えていきます。人間の機微、人間心理の奥深さをこの本では実例たっぷりで学ぶことができます。非常に読みやすい構成、文体ですので読書が苦手な方でもすらすら読めこと間違いなしです。

単なる小手先の人生テクニックとはまるで違います。「この本を読めばビジネスにも使えます。人を動かしてうまいことやりましょう」というものとは全く次元の異なるものがこの本では説かれます。もちろんそういう使い方もできなくはないですが、それはこの本の真価とまるで真逆のものだと私は思います。

この本はあくまで「自分自身のあり方」を問うてくる作品です。

『人を動かす』というタイトルはまさに本末転倒なのではないかと私は思ってしまいます。それを目的にこの本を購入したならばきっと驚くと思います。自己を問い、そのあり方が変わることで「結果的に」人間関係が変わりますよというのがこの本の大きな柱です。

この本に書かれたことを実行するのは簡単なことではありません。ですが私にとって自分の愚かさを徹底的に突きつけられたのがこの本でありました。21歳の若い時にこの本を読むことができたのは私にとってありがたい経験となりました。ぜひ若いうちに読むことをおすすめしたい名著です。

以上、「D・カーネギー『人を動かす』~書名で損!?自分の至らなさを猛省させられる名著。自己啓発書の元祖とも言える古典」でした。

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