松岡和子『「もの」で読む 入門シェイクスピア』あらすじと感想~気づけばもっと楽しくなるシェイクスピア作品のあれこれ!
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松岡和子『「もの」で読む 入門シェイクスピア』~気づけばもっと楽しくなるシェイクスピア作品のあれこれ!
今回ご紹介するのは2012年に筑摩書房より発行された松岡和子著、『「もの」で読む 入門シェイクスピア』です。
早速この本について見ていきましょう。
シェイクスピア劇に登場するさまざまな「もの」から、400年前に書かれた37作品の意図が克明に見えてくる。彩の国さいたま芸術劇場の蜷川幸雄演出による「シェイクスピアシリーズ」の翻訳を一人で手掛け、数えきれないほどの舞台稽古に立ち会ってきた経験を持つ著者ならではの鋭い感性で、「世界で最も親しまれている古典」のやさしい楽しみ方を紹介する。
Amazon商品紹介ページより
著者の松岡和子さんについては当ブログでもシェイクスピア作品や著書『すべての季節のシェイクスピア』、『深読みシェイクスピア』などを紹介してきました。
松岡和子さんは上の本紹介にもありますようにシェイクスピア全作品の翻訳を手掛けられた方です。その松岡さんがその作品ごとに興味深い「もの」を取り上げて語るのが今作『「もの」で読む 入門シェイクスピア』になります。
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こちらがこの本の目次です。見てわかります通り、あらゆる作品が網羅されています。しかもマニアックと言えばかなりマニアック(笑)。注意して読まなければ作品を読んでも素通りしてしまうようなものもたくさん出てきます。
ですが一度この本を読んでその存在を知ったならば必ずその作品の見え方が変わってきます。シェイクスピアがその作品にどんなメッセージを託したのかが、「もの」を通して見えてくるようになるのです。
これまで素通りしてしまった「一見ささいなもの」が実は重要な意味を持っていた。これに気づくか気づかないかで作品の見え方はずいぶんと変わってきます。シェイクスピアの巧みな物語制作に思いを馳せるならこの本は非常におすすめです。
私がこの本の中で特に印象に残ったのは『ハムレット』の章です。ここで『ハムレット』をチョイスしてしまうのはべたかもしれませんがそれでもやはり紹介したい!それほど面白い解説でした。その一部分をここに引用します。
ハムレットはぺンと剣を持つ。
ハムレットは本と頭蓋骨を持つ。
劇中で手に持つ小道具が、これほど端的にその人物を表わしている例はほかにない。そう言い切っていいと思う。(中略)
ハムレットは書く人、読む人、哲学する人、剣を揮う人である。つまり、知の人であると同時に体を使って闘う人でもあるのだ。オフィーリアが「尼寺の場」の終わりで言うとおり、ハムレットは「宮廷人の、武人の、学者の、目、ロ、剣」をそなえている。それをぺンと剣、本と頭蓋骨といったモノが示している。(中略)
ハムレットが手にする象徴性の高いモノたちは、彼の多面的な魅力の雄弁な証人である。
筑摩書房、松岡和子『「もの」で読む シェイクスピア入門』P35-39
この引用の中略の部分で具体的にペンと剣、本と頭蓋骨の意味が語られるのですがこれがすこぶる面白い!残念ながら長くなってしまうのでここで全文は引用できませんでしたが、シェイクスピアに興味のある方はぜひ読んで頂きたい解説となっています。
シェイクスピア作品と言えば雄弁なセリフや劇的なストーリー展開にどうしても目が行きがちですが、実はこうした細かい「もの」もセリフと同じくらい雄弁なことをこの本では知ることができます。
ただ、この本のタイトルで「シェイクスピア入門」とありますが、シェイクスピア作品を読んだことがない方がこの本を入門書として読むのはなかなか厳しいと思います。ある程度作品を読んで内容を知った上で「あぁ、あれはそういうことだったのか!」という気づきを得るような作品です。
そして上の目次の写真にありますように、この作品はシェイクスピア作品を網羅しています。そのひとつひとつが独立したエッセイとなっていますので、自分が読んだ作品や興味のある作品をチョイスして読み進めていくのもありだと思います。もちろん、最初から読み進めていって、「あ、この作品面白そうだな」と作品に向かっていくのも楽しいかと思います。
シェイクスピア作品をもっと楽しむきっかけをくれる素晴らしい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「松岡和子『「もの」で読む 入門シェイクスピア』~気づけばもっと楽しくなるシェイクスピア作品のあれこれ!」でした。
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「もの」で読む入門シェイクスピア (ちくま文庫 し 10-34)
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