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松田隆美『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』あらすじと感想~ダンテ『神曲』の参考書としてもおすすめ!

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松田隆美『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』概要と感想~ダンテ『神曲』の参考書としてもおすすめ!

今回ご紹介するのは2017年にぷねうま舎より発行された松田隆美著『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』です。

早速この本について見ていきましょう。

煉獄と地獄の図絵、99点収録。聖職者・知識階級ではなく、中世ヨーロッパの一般大衆は死と死後の世界をどのようにイメージしていたのだろうか。
13~16世紀、黒死病(ペスト)の惨劇をくぐった中世は、死後世界をめぐってさまざまな表象と物語を生み、やがては煉獄の誕生をみる。往生術、死後世界探訪譚、死の舞踏という死の文学のモチーフにおいて煉獄が果たした役割とは何だったのか。
説教、教化文学、壁画、ステンドグラス、時禱書、装飾写本などを図像とともに広く渉猟し、人々の心性に浸透してその死生観の根となった要素を掘り起こす。

Amazon商品紹介ページより

私がこの本を手に取ったのはダンテの『神曲 煉獄篇』がきっかけでした。

10年ぶりに読んだ『神曲 煉獄篇』。初めて読んだ時はキリスト教の知識もあまりなく、煉獄についてほとんど疑問に思うこともなく読み進めていたのですが、ドストエフスキーを通じてキリスト教について学び直した今、「煉獄ってそもそも何なのだ?」という思いが湧き上がってきたのでありました。

煉獄は聖書の中には書かれていません。ですがカトリック世界においては非常に重要なものとして存在してきました。

ではその煉獄はいつ頃に生まれたのか。どのような背景で煉獄が語られるようになったのか。そしてどのように人々の間に広まっていったのか。

それらのことを知りたくなり、私はこの本を手に取ったのでした。

前回前々回の記事でもこの参考書から多くのことを引用させて頂きましたが、この本は素晴らしい参考書です。

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この本ではなぜ煉獄が生まれてきたのかということを時代背景からとてもわかりやすく解説してくれます。

やはり思想というのは何もないところからぽんと生まれてくるものではありません。必要とされる時代背景があるからこそ生まれてくるのだということをこの本では感じることができます。

煉獄が生まれてきたのは12世紀頃とこの本では語られます。

そしてダンテが『神曲』を書いたのが14世紀初頭ということで200年ほどのスパンがあります。この間にもダンテだけではなく様々な形で煉獄は語られていたのでありました。

また、この本では煉獄だけでなく地獄や天国についても語られます。

ですのでダンテの『地獄篇』『煉獄篇』『天国篇』のすべてをカバーした内容ともなっています。直接的にダンテの『神曲』について語られることはありませんが、これを読めばダンテが何を参考にして作品を作り上げていったのかがわかります。

『神曲』のあの独特な地獄と煉獄の描写も彼以前にすでに参照すべき資料があったのです。カトリック世界においてすでにあった地獄煉獄天国像をダンテが彼の生きた時代背景と重ね合わせて作り上げたのが『神曲』だったということ。これは非常に興味深いことでありました。彼一人の想像力であの巨大な世界観が生み出されたのではないこと。それを知れたのは非常に大きなものがあったなと思います。(もちろんそれでもこれだけの作品を生み出したダンテの怪物ぶりには驚くしかありませんが)

『天国篇』の記事でも書きましたがこの参考書は仏教とも通ずるものが多々あります。

キリスト教における来世観と仏教における来世観。異なる点もあれば共通点もあります。これを比べて見てみた時に何が見えてくるのか。こうしたことを考えるのも非常に興味深いものがありました。

日本仏教の死生観を考える上でもこの本は貴重な示唆を与えてくれる本だと思います。

とても面白い本でした。ぜひぜひおすすめしたい1冊です。

以上、「松田隆美『煉獄と地獄 ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観』ダンテ『神曲』の参考書としてもおすすめ!」でした。

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煉獄と地獄: ヨーロッパ中世文学と一般信徒の死生観

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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