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リカードウ『経済学および課税の原理』あらすじと感想~マルクスに大きな影響を与えたアダム・スミスの後継者!

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リカードウ『経済学および課税の原理』概要と感想~アダム・スミスの後継者~マルクスに大きな影響

今回ご紹介するのは1817年にリカードウによって発表された『経済学及び課税の原理』です。私が読んだのは1987年に岩波書店より発行された羽鳥卓也、吉澤芳樹訳の『経済学及び課税の原理』1997年第5刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

アダム・スミスが創始した古典派経済学の完成者リカードウ(1772-1823)の主著。彼は「経済学の原理」と「課税の原理」とを別箇の次元にあるものとし,課税論はあくまで「経済学の原理」の応用領域として理論を展開した。


岩波書店、リカードウ、羽鳥卓也、吉澤芳樹訳『経済学及び課税の原理』1997年第5刷版 表紙
リカードウ(1772-1823)Wikipediaより

アダム・スミスの経済学を完成したイギリスの経済学者リカードの主著がこの作品です。

私もアダム・スミスの『国富論』に続いてこの作品を読んでみたのですが、正直申しましてさっぱりわかりませんでした。元々数学的思考に弱い私でしたがこれはかなり厳しいです。『国富論』はまだぎりぎり言わんとしていることを感じることはできたのですがこの本に関しては完全にお手上げでした。古典経済学の完成者の主著は並々ならぬ作品でした。

ですが、こう思ったのはどうも私だけではなかったようです。ウルリケ・ヘルマンの『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』では次のように述べられていました。

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リカードは名文家ではなかった。彼の文章はぎくしゃくしていて、「もし以下のように仮定するならば」という言い回しで文章を始めるのが大好きだった。(中略)

リカードのテキストを読みにくくしているのは、数字の列挙だけではない。この本はたぶん、章構成のせいで失敗作に終わるだろうと、リカードは手紙の中でため息をもらしている。これはあながち誇張とも言えない。実際彼は、本の構成の仕方を知らなかった。リカードのテキストはあまりにも混沌としていて、これをどんな順序で組み立てるのが正解だったかを考えるのが、経済理論史家たちの共通の娯楽になったほどだ。マルクスも、リカードがどうすれば言いたいことをもっとうまく表現できたかについて、あれこれと考えている。


みすず書房、ウルリケ・ヘルマン、鈴木直訳『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』P88

本が読みにくいのは著者によるものもあったようです。

そしていよいよマルクスが出てきます。マルクスはパリ時代の1840年代中頃にアダム・スミスとリカードを徹底的に研究しています。彼の経済学の基礎はここにあったのです。

リカードの説がいかにマルクスに影響を与えたのか、それを見ていきましょう。

リカードの著作には、後にマルクスも使用することになる語彙が初めて登場した。それは「階級」と「資本家」という言葉だ。「階級闘争」という概念こそまだ使用してはいないが、リカードの著作には、新たに浮かび上がってきた和解不能性の予感が貫かれている。アダム・スミスはまだいたるところにウィン・ウィンの状況を発見し、より良い世界の到来を予見していた。それに比べると、リカードははるかにペシミスティックだった。窮乏化は最終的に避けがたいようにリカードには思われた。

その理由のひとつは、親しい友人でもあった経済学者トーマス・マルサスの人口理論を受け入れたことだった。マルサスは次のような有名なパラドクスを提唱した。たとえ経済が成長しても、人びとは豊かにはならない。むしろより多くの子供が生まれることによって、養わねばならない人口が増えるだけだ。しかし農業生産の伸びは、人口増に追いつけず、いつかはその人口を養いきれなくなる時が来るだろう。そうなれば飢饉が発生し、人口は再び減少に転じる。リカードはこのマルサスの説から、労働者がその貧困から抜け出すことはまったく不可能だという結論を導き出した。労働者は調達可能な食糧の限界まで人口を増やし続け、それによってみずから貧困を招き寄せる。

しかし、リカードがぺシミストだったのは、労働者の未来に関してだけではなかった。資本家にとっても未来はけっしてバラ色でないことを彼は予見していた。人口が増えすぎると資本家も間接的にその被害な受けるという彼の推論は、一見すると意外に思える。しかしリカードから見ると、そこには避けがたい関連があり、それゆえリカードは「利潤率の傾向的低下」を予言した。


みすず書房、ウルリケ・ヘルマン、鈴木直訳『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』P91-92

「階級」、「資本家」という言葉はここから来ているというのは驚きですよね。そして有名なマルサスの存在。マルサスの『人口論』については次の記事で改めて見ていきたいと思います。

マルクスはリカードの理論をとことん突き詰めていった。そして億万長者リカードの思想から、避けがたい階級闘争についての理論を導きだした。そのさいマルクスは、リカードから中心的なテーゼを継承した。労働だけが価値を作り出すというテーゼ、社会は敵対的階級からなっているというテーゼ、労働者は窮乏化せざるをえないというテーゼ、そして資本家は自分が生産していない価値な取得しているというテーゼを。


みすず書房、ウルリケ・ヘルマン、鈴木直訳『スミス・マルクス・ケインズ よみがえる危機の処方箋』P 95

こう見てみるとリカードウがマルクスに与えた巨大な影響が見えてきますよね。

当たり前のことではありますが、マルクスも無から『資本論』をはじめとした経済理論を生み出したわけではありません。マルクスは鬼のような勉強家です。マルクスはこうしてアダム・スミスやリカードウの著作を読み耽り、自らの説を構築していったのでありました。

そうしたマルクスの側面を知る上でもこの本を読めたのは大きな意味があったなと思います。

私自身はこの本が難しすぎて完全にお手上げでしたがウルリケ・ヘルマンの解説によってこの本の大きな意味を知ることができました。

この本は解説と一緒に読むことをお勧めします。

以上、「リカードウ『経済学および課税の原理』アダム・スミスの後継者~マルクスに大きな影響」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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