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ゲーテ『色彩論』あらすじと感想~万能の詩人ゲーテは光の研究者でもあった!光の画家フェルメールとのつながりを考える

目次

ゲーテ『色彩論』~万能の詩人ゲーテは光の研究者でもあり、地質学、植物学など多才な科学者であったという衝撃の事実

今回ご紹介するのは1980年に潮出版社より発行された『ゲーテ全集14 自然科学論』です。私が読んだのは2003年新装普及版です。

これまで当ブログではオランダの画家フェルメール(1632-1675)についてお話ししてきました。

フェルメールは光の画家として有名でその奥行き感、光の描写は観る者を魅了してやみません。私も魅了されたひとりです。

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そして上の記事でもお話ししましたが、フェルメールはカメラ・オブスクラという光学機器を用いて光の仕組みや「人間のものの見え方」について研究していました。それが彼の絵に反映されています。

ロンドンサイエンス・ミュージアムに展示されているカメラオブスクラ  Wikipediaより

光の探究者フェルメール。彼は当時急速に発達しつつあった科学技術を用いて世界の仕組みを思索し続けていたのでした。

そしてフェルメールといえばこの2作品も有名ですよね。

この学者のモデルとなったと言われているのが世界で初めて顕微鏡で微生物を発見したレーウェンフックという人物です。

アントーニ・ファン・レーウェンフック(1632-1723)Wikipediaより

なんと、驚くべきことにフェルメールとこのレーウェンフックは同じ年に同じ街で生まれているのです!

フェルメール『デルフトの眺望』Wikipediaより

1632年にオランダ・デルフトで生まれた2人。

そして2人は生涯のほとんどをこの街で暮らし、それぞれ偉業を成し遂げています。

レーウェンフックは顕微鏡、フェルメールはカメラ・オブスクラで、この2人は「レンズ」を通して肉眼では見えぬ世界を探究しました。

こうした「光や色彩の研究者」である彼らのことを学んでいるうちに、ふと私の頭の中をよぎったものがありました。

それが今回紹介するゲーテの『色彩論』だったのです。

ゲーテ(1749-1832)といえば『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』で有名なドイツの詩人です。

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ゲーテが単なる詩人ではなく、有能な役人として働いたり、科学の分野でも才能を発揮していたことはA.ビルショフスキによる伝記『ゲーテ その生涯と作品』のおかげで知ってはいましたが、今回フェルメールを学んだことでいよいよフェルメールとゲーテが繋がってきました。

とはいえフェルメールの絵は彼の死後世の中から忘れられてしまっていたので、ドイツにいたゲーテが彼の絵を知っていた可能性は極めて低いです。

ですが科学者のごとく光や色彩を研究していたフェルメールと、万能の詩人ゲーテ、いや科学者ゲーテとの繋がりは私にとって非常に興味深いものがありました。

A・ビルショフスキの『ゲーテ その生涯と作品』では彼の『色彩論』について次のように述べられています。

ゲーテの『色彩論』、色彩に関する研究は、専門の自然科学者からもっとも手厳しい反駁、ほとんど一致団結した拒否反応を被った。しかしこれこそはゲーテの自然科学のなかで、最後までやり遂げられ、体系的なまとまりをもつにいたった唯一の分野である。

ゲーテが人間として、見る人として、いや、詩人、藝術家としても、これ以上懸命に仕事をし、情熱を注いだためしはなかった。それというのも、これはもっともゲーテらしい領域、色彩となって光り輝く絵画的現象の世界だからである。

ゲーテがこれ以上の才能な発揮したことはなかった。なぜなら、彼の色彩感覚、彼の場合最高度に発達し、肉体的にも精神的にも限りなく鍛え抜かれた感覚器官である目の観察力と識別能力は、あらゆる限界を超えて、まったく天才的なものだからである。

ゲーテの色彩研究はその規模からしてすでに彼の仕事の中心をなしている。事実、自然科学の個々の分野にあてられた十二巻のうち、『色彩論』だけで六巻に及ぶ。そして最後に指摘しておきたいのであるが、ゲーテは色彩理論を価値尺度とし、『色彩論』の「歴史篇」ではそれを使って、諸学の、いや人間精神一般の全史を倹討することを企てているのである。
※一部改行しました

岩波書店、アルベルト・ビルショフスキ著、高橋義孝、佐藤正樹訳『ゲーテ その生涯と作品』P989-990

残念ながらゲーテの『色彩論』は厳密な科学として科学界に受け入れられることはありませんでしたが、ゲーテ本人としては渾身の力を込めて研究していたものでありました。

『ゲーテ全集14 自然科学論』には目次のように「科学方法論」、「形態学序説」、「植物学」、「動物学」、「地質学」、「気象学」、「色彩論」と様々な分野の科学論文が収録されています。

改めて確認ですが、ゲーテは詩人です。

そんな彼がこれほどまでに様々な分野の科学論文を書き上げているというのは異常です。

やはり「万能の詩人」と呼ばれるだけのことはあります。

ビルショフスキの伝記を読んでゲーテの異常な天才ぶりには驚かされっぱなしでしたが、フェルメールを知って改めてゲーテのことを思い返してみると彼の多才さに再び衝撃を受けることになりました。

彼の最高傑作『ファウスト』にもこうした科学的研究が反映されています。

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科学的探究が作品に反映されているというのはフェルメールもゲーテも同じです。特に両者とも「光と色彩」に大きな関心を持っていたというのは非常に興味深い共通点だなと感じました。

思わぬところで大好きなゲーテとフェルメールがつながり、私としては嬉しい発見となりました。

以上、「ゲーテ『色彩論』~万能の詩人ゲーテは光の研究者でもあった!光の画家フェルメールとのつながりを考える」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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