廣瀬陽子『コーカサス 国際関係の十字路』あらすじと感想~現代コーカサス、ロシアの政治情勢を知るのにおすすめの参考書
廣瀬陽子『コーカサス 国際関係の十字路』概要と感想~現代コーカサス、ロシアの政治情勢を知るのにおすすめの参考書
今回ご紹介するのは2008年に集英社より発行された廣瀬陽子著『コーカサス 国際関係の十字路』です。
早速この本について見ていきましょう。
ロシアの外交・軍事戦略を知るうえでの必読書!
ウクライナ侵攻から遡ること14年前、ロシアが侵攻したのはコーカサス地域のグルジア(現ジョージア)だった。日本人がいちばん知らない地域で、今なにが起きているのか?
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コーカサスは、ヨーロッパとアジアの分岐点であり、古代から宗教や文明の十字路に位置し、地政学的な位置や、カスピ海の石油、天然ガスなどの天然資源の存在により、利権やパイプライン建設などをめぐって大国の侵略にさらされてきた。
またソ連解体や、9.11という出来事により、この地域の重要性はますます高まりつつある。
だが、日本では、チェチェン紛争などを除いて認知度が低いのが現実である。本書では、今注目を集めるこの地域を、主に国際問題に注目しつつ概観する。
第21回アジア・太平洋賞特別賞受賞!
この作品は出版された2008年時点のコーカサス事情を知るのにおすすめな作品です。
日本人にとってあまり馴染みのないコーカサスについて著者はまず次のように紹介します。
コーカサスってどこ?
「コーカサス」は、日本では一般的にはなじみが薄い地域である。
コーカサス地域とは、東はカスピ海、西は黒海とトルコ、南はイランに接するコーカサス山脈周辺の旧ソ連地域をさしている。同地域はコーカサス山脈をはさんで南北に分けられるが、南コーカサスに該当するのが、一九九一年末のソ連解体後に独立したアゼルバイジャン共和国(首都バクー)、グルジア共和国(首都トビリシ)、アルメニア共和国(首都エレヴァン)であり、それらは「コーカサス三国」ともいわれている。
他方、北コーカサスに該当するのがロシア連邦南部の諸共和国で、チェチェン共和国(首都グローズヌイ)、イングーシ共和国(首都マガス)、ダゲスタン共和国(首都マハチカラ)、北オセチア・アテニア共和国(首都ウラジカフカス)などである
集英社、廣瀬陽子、『コーカサス 国際関係の十字路』P10
重要拠点としてのコーカサス
コーカサス地域には、文化的にも地理的にも戦略上の意義が高い地域とみなされ、多くの〈時の帝国〉に侵略されてきた歴史がある。
さらに近年、カスピ海から産出する石油や天然ガスの開発の利権や世界市場に資源を輸出するためのパイプライン建設をめぐっても、さまざまな利害関係が交錯している。また現在の国際政治において、とりわけ一九九一年のソ連解体、ニ〇〇一年の9・11アメリカ同時多発テロというふたつの出来事を契機に、この地の重要性はますます高まりつつある。
アメリカ、ロシア、ヨーロッパ諸国のみならず、トルコ、イランも加え、各国のコーカサスに対する政策はさまざまで(各国の利害が交錯している以上、きわめて当然のことなのだが)、軍事政策、資源政策、外交政策それぞれに違った対応を見せている。
この複雑な地域の現状、ましてやこの地域がはらむ問題点を明快に解説するのはかなりむずかしいといわざるを得ない。本書ではコーカサス地域の特徴を概観しつつ、主に国際関係に注目しながら、このむずかしい課題にとり組んでいきたい。
集英社、廣瀬陽子、『コーカサス 国際関係の十字路』P15
本書のタイトルに「国際関係の十字路」とありますように、この地域はソ連の成立以前より人や物の往来の多い地域でした。ですので非常に複雑な歴史、文化が形成されています。そこにソ連の崩壊の混乱が加わったため、この地域の政治情勢を理解するだけでもとにかく難しい状態になっています。
そんな中この本ではそうした現代コーカサス事情をわかりやすく解説してくれます。
北コーカサスのチェチェンについては多くの本がでていますが、ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンの三国についてもわかりやすく解説してくれる本となるとなかなか貴重です。
ロシアによるウクライナ侵攻でこの地域に対する関心も高まっています。ウクライナのようにいつこの地域が危険な状態になるかはわかりません。
この本は2008年に出版された作品ですので、2022年段階では最新の情報というわけではありません。ですがソ連崩壊から15年以上経った段階でのカフカースを知る上で今なお価値ある作品だと思います。
難しいコーカサス情勢をわかりやすく知れるおすすめな1冊です。
以上、「廣瀬陽子『コーカサス 国際関係の十字路』現代コーカサス、ロシアの政治情勢を知るのにおすすめの参考書」でした。
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