カフカおすすめ作品一覧~プラハが生んだ天才作家の魅力をご紹介!
カフカおすすめ作品一覧~プラハが生んだ天才作家の魅力をご紹介!
今回の記事ではチェコを代表する作家フランツ・カフカのおすすめ作品を紹介していきます。
「プラハといえばカフカ」というくらい、カフカは有名な作家ですよね。
彼の代表作『変身』は世界中で最も読まれた小説のひとつと言うことができるでしょう。私もカフカの不思議な世界観が大好きです。
この記事ではそんなカフカのおすすめ作品と、カフカをもっと知るためのおすすめ解説書をご紹介します。
それぞれのリンク先でより詳しくお話ししていきますのでぜひそちらもご覧ください。
では、早速始めていきましょう。
『変身』
この作品の出だしはものすごく有名です。ある日目を覚ますと自分が巨大な虫に変わっていた。この話はきっと誰しもが耳にしたことがあると思います。
カフカといえば、よくわからない不条理な世界観を描くことで有名ですが、この出だしはまさしくそんなカフカの特徴がはっきりと示されています。
朝に目を覚まして自分が虫になっていたなら通常では考えられない大事件のはずですが、それなのにこの作品ではどこか淡々としている雰囲気があります。普通では考えられない事態が日常の中に入り込んでくる。そしてそれが日常の世界の中に溶け込んでいくことに直面させられる。それがカフカの不条理な世界観の特徴です。
日常と不条理の奇妙な融合。そしてその違和感を感じつつもそれが当たり前のように動き続ける登場人物たち。
よくこんな作品を書けたものだなと読んでいて驚いてしまいました。
『変身』はページ数にして100頁ちょっとの作品ですので、気軽に読むことができます。不思議な世界観で最初はとまどうかもしれませんが、慣れればすいすい読んでいくことができます。奇妙で不条理なカフカワールドを体感するには最適な作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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『審判』
この作品もカフカらしさ全開です。カフカといえば『変身』が有名ですが、個人的には『変身』よりもカフカらしさが出ているように感じました。寒気がするほど不条理全開の作品です。
『審判』はとにかく掴みどころのない作品です。しかもとにかく冗長です。展開がなかなか進まず、私たち読者も主人公Kと同じくただただ困惑するしかない状況が続きます。「もっとわかりやすくスピーディーに書いてくれないと読むのも辛いよ」と思ってしまったのですが、カフカはきっとわざとそうしているのだなと読んでいる最中にふと思いました。
「不条理な展開を際立たせるためにカフカはわざと冗長で掴みどころのないやりとりを長々と繰り返している。不条理に襲われるというのはこういうことなんだぞと示そうとしているのだ。」
そんな風に思えたのです。
カフカも書こうと思えばわかりやすいすっきりしたものを書けたはずです。しかし彼はあえてそうしなかった。そこに不条理を描こうとしたカフカの確固たる意志があるように感じたのです。
この作品を読むのはかなりの神経戦になります。読み終わった後はかなりぐったりでした。
しかし、読後の満腹感はなかなかのもので、この作品の持つ不思議なパワーにはやはり驚かされます。
また、この作品は以前当ブログで紹介したトビーグリーンの『異端審問 大国スペインを蝕んだ恐怖』という本の中でも紹介されていました。
『審判』の不条理な裁判の過程はかつてのスペインの異端審問を連想させるものであり、カフカの描いた不条理はたしかにフィクションではあるものの、現実世界を生きる私たちにも決して無縁ではないということを考えさせられました。
『審判』は不気味で恐ろしい作品です。読み物としてシンプルに面白いのは『変身』かもしれませんが、不条理の恐ろしさをより感じるのはやはりこの作品です。個人的にも『変身』よりもこちらの作品のほうが印象に残っています。
なかなか手強い作品ではありますが、カフカファンならずともぜひ読んで頂きたい作品です。淡々と進んで行くホラー作品とも言えるかもしれません。カフカらしさ全開の作品です。
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『城』
カフカはこの作品が未完のまま1924年に亡くなってしまいましたが、友人のマックス・ブロートが遺稿を整理し、出版された作品です。
この作品は測量士であるKがとある村で繰り広げる不思議な物語です。
この作品も前回紹介した『審判』と同じく、どんどん現れる奇妙な人間達によって主人公はとにかく不条理な目に遭わされ続けます。
前回紹介した『審判』はどこかファンタジーな雰囲気があり、空想的な不条理が描かれていましたが、この作品はぞっとするほどのリアルさで不条理を描いています。
官僚組織の圧倒的な権力、融通のきかなさをベースに、現実にもありそうな不条理をどんどんどんどん積み重ねていきます。
読んでいて、「これ、現実にもありそうだよな・・・」という思いが何度も頭をよぎりました。
「これは現実よりも現実なんじゃないか」とすら思えてくる不思議。カフカの異様な想像力、筆の力で私達は現実とカフカ世界の奇妙な融合を体感することになります。
不条理があまりにリアルなので、読んでいるとどんどん精神的にきつくなってきて、頭がくらくらしてきます。
『審判』も精神的にかなり負荷がかかる作品でしたが、この作品はさらにその上を行きます。
正直、この作品は身体に悪いです。実際、私は具合が悪くなりました。
ですが、これはある意味身体にワクチンを接種するかのようなものかもしれません。こうした作品を摂取することで私達の世界の見方が何か変わるのではないでしょうか。
それこそ、カフカを通して本来不条理な世界を不条理な世界と認識できるようになるかもしれません。
私達は合理的に世界を把握しようとしがちです。ですが、世界は「こうだからこう、そしてこうなっていく」という理屈で通る一本道ではありません。
数多くの不条理作品を生み出したカフカ。
その想像しえない世界を想像したカフカの異様な想像力。
これを味わえる素晴らしい作品がこの『城』という大作です。
この本はとてつもない魔力を秘めていますので、疲れている時や余裕のない時はなかなか厳しいかもしれません。
体力を万全にして、そしてある程度カフカを知ってから読むのをおすすめします。
個人的にかなり印象に残った作品でした。面白いかどうかと言われると、正直わかりません。ですが、強烈なインパクトがあったのは事実。これは忘れられない作品になりそうです。読んでよかったなと心から思えます。
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『カフカ短編集』
『カフカ短編集』はひとつひとつの作品がとてもコンパクトなので気軽に読むことができるのが嬉しいです。『審判』や『城』は長い上に難解な部分も多いので、正直読むのが大変です。ですがこの短編集はそのカフカの魅力をそのままに気軽に読むことができるのでとてもおすすめです。
そして私がこの本で特に印象に残っている短編は『流刑地にて』です。
この作品はカフカらしさ全開で、その不気味さは圧倒的です。
ある旅行家が流刑地に旅し、そこで死刑を執行する将校と、それに使われる異常な処刑機械がこの作品では語られます。
受刑者は自分が何をされるかわからぬまま、さらにはそもそも自分の罪状すらわからぬという、カフカ好みの人物です。この罪人は不条理にもこれから殺されようとしているのです。しかも、ひときわ不条理な方法で・・・
そして不気味なのはこの処刑機械だけではなく、それに心酔し、この機械について熱く語り続ける将校その人です。
機械のすばらしさを愛を込めて語り続け、機械がいかにして処刑を行っていくかを嬉々として語ります。そしてこの機械が存続できるように助けてくれと旅行家に懇願します。
処刑機械のおぞましさとこの将校の無邪気さのコントラストが不気味さを掻き立てます。
そしてこの作品は短編ながら、じりじりじりじりとなかなか展開が進まないのです。まるでこの処刑機械の殺し方のように・・・
これがまた恐ろしいのなんの・・・
「一体どうなってしまうんだこの物語は」と固唾を飲んでページをめくることになります。
この作品はカフカらしい不条理で不気味な雰囲気がものすごく出ていると思います。とてもおすすめです。
また、同じくカフカの短編集として『カフカ寓話集』という本も出ています。こちらもカフカらしさ全開ですので『カフカ短編集』と合わせて読まれるのをおすすめします。
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池内紀『池内紀の仕事場3 カフカを読む』
この本の前半では彼の生まれ育った環境や彼がどのようなことに影響を受けていったのかということが語られます。
カフカのことをほとんど知らない方でも、彼の作品に親しんでいる方にとっても非常に興味深く、読み応えのあるカフカの物語を楽しむことができます。「カフカってこんな人だったのか!」ときっと驚くと思います。
そして中盤以降はカフカの短編、長編作品を実際に見ていき、そこに込められた意味や楽しみ方、逸話などが語られます。
カフカの作品は不思議な展開が多く、読んでいるこっちがパニックになるシーンがたくさんあります。そうした中でわかりやすい解説をしてもらえるとかなり助かります。
カフカの入門書として、あるいは困った時の参考書としてこの本はとてもおすすめです。
カフカは難しいし暗いからとっつきにくいという方には特におすすめです。きっとそんなカフカのイメージが変わると思います。私もカフカのことがもっと好きになりました。
ぜひおすすめしたい1冊です。
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クラウス・ヴァーゲンバッハ『カフカのプラハ』
カフカの作品についてこれまで紹介してきましたが、不思議な世界観を持つカフカと彼の生きたプラハの街は切っても切れない関係です。この本はそんなカフカとプラハの街について書かれた本です。
このまえがきには、
「要するにカフカは何を「目の当たり」にしていたのか。それを知りたいと思うなら、プラハに行く他はないだろう。実際に旅立つのであれ、想像裡に遊ぶのであれ。プラハへの旅の読本でありツアーガイドでもある本書は、そのいずれの場合についても有能な伴侶となるべく構想されている。また家屋や街並みは可能な限り当時の写真を用いて再現した。」
と書かれていましたが、これがこの本の一番端的なまとめになります。
そして訳者あとがきでは「本書は凡百の旅行ガイドブックをはるかに凌駕するものとなった」とも書かれていました。
ものすごい絶賛ぶりですよね。たしかにこの本は並の本ではありません。写真や地図も豊富でさらにカフカの生涯やその性格、作品の特徴まで知ることができます。カフカファン必携の書であると私も思います。
そして訳者も最後に述べていますようにこの本の著者ヴァーゲンバッハのカフカ愛がこの本をこうした素晴らしい1冊にしているように思います。やはり愛がある人の筆はそうでない人のものとは全然変わってきますよね。「カフカを愛する人間が、カフカを愛する人のために書いた本」。そのようにもこの本は言えるのではないでしょうか。非常におすすめな1冊です。
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おわりに
カフカの作品は一筋縄ではいかない奇妙な物語ばかりです。その中でも『変身』や『短編集』などは分量も短く、比較的読みやすいものとなっています。
不思議な世界観を体験できるカフカの小説は、本好きの人だけではなく、多くの人に愛されてきた歴史があります。気楽に楽しめるエンタメ小説としての顔もあることは確かだと思います。
ですが、私は昨年から世界史、特にソ連史やナチスを学んだことでカフカに対する見方がかなり変わりました。
というのも、歴史学の権威トニー・ジャットの『20世紀を考える』という本に次のような言葉が書かれていたからです。
カフカのように予測というかたちであれ、また同時代の観察者としてであれ、二〇世紀を正しく理解する人は、前例のない世界を想像する能力を必要とします。彼らは、この前例のない、一見ばかげた状況が、まさに現実であると想定しなければならないのです。ほかのあらゆる人とおなじように、こんなグロテスクなものは考えられない、と想定するのではなく。そのようにニ〇世紀を考えることは、同時代を生きる人間にとってはこのうえなく難しかった。おなじ理由で、多くの人びとは道理にかなっていないという理由で。それがユダヤ人にとって道理にかなっていないからということではありません。そんなことはあきらかですから。そうではなく、それはドイツ人にとっても道理にかなっていないことだったのです。ナチスは戦争に勝ちたいのだから、ナチスはユダヤ人を、大変なコストをかけて殺すのではなく、当然に搾取するだろう、と。
このように、完全に合理的な道徳的・政治的な計算を人間の行動にあてはめて考えることは、一九世紀に育った人間にとっては当然のことでしたが、それはニ〇世紀にはまったくもってあてはまらなかったのです。
みすず書房、トニー・ジャット、河野真太郎訳『20世紀を考える』 P292
私たちの生きる世界は不条理で満ちています。想像しえないことが起こり得る。理屈や合理性では説明のつかないことが日常にありふれている。それが私たちが生きる世界です。そしてその最たるものが第二次世界大戦の悲惨な戦いであり、ホロコーストであり、ソ連の粛清でした。
前例のないことを想像する力が今を生きる私達には必要です。そしてそれを教えてくれる格好の人物がカフカなのです。
カフカの描く不条理な世界は、まさしく想像しえない世界、ありえない世界です。
しかし、私達の世界も実はそんな不条理で満ちているではないか。理屈では通じないことがどれだけ多いことか。まさに今の世界は混沌を極めています。何が正しくて何が間違っているのか、それを自信を持って言える人がはたして存在するでしょうか。 何かがおかしいと思いながらそれに抵抗できず押しつぶされていく日々・・・こうした何が正しいかもわからない不条理な世界に苦しんでるのが私たちの現実ではないでしょうか。
そうしたことに改めて気付かせてくれるのがカフカという作家なのだということをトニー・ジャットの本で知ることになりました。そう考えてみると、カフカってものすごい作家なのだなと改めて驚くことになりました。
『審判』や『城』といった長編作品ではそのことが顕著に表されています。恐るべき小説としか言いようのない凄まじさです。面白いか面白くないかは別として、非常に強烈なインパクトを残した作品でした。
ぜひぜひプラハの天才カフカの作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「カフカおすすめ作品一覧~プラハが生んだ天才作家の魅力をご紹介!」でした。
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