本当にいい本とは何かー時代を経ても生き残る名作が古典になる~愛すべきチェーホフ・ゾラ
今こそチェーホフとゾラを読もう!―時代と世の中の仕組みを冷静に見る視点 これまで当ブログではおよそ1カ月にわたってチェーホフについてご紹介してきました。 ドストエフスキーを学ぶ上では必須という作家ではないチェーホフをここ…
今こそチェーホフとゾラを読もう!―時代と世の中の仕組みを冷静に見る視点 これまで当ブログではおよそ1カ月にわたってチェーホフについてご紹介してきました。 ドストエフスキーを学ぶ上では必須という作家ではないチェーホフをここ…
この物語は不倫の物語です。
チェーホフはこうした不倫の物語を多く描いています。 実はこれ、フランス人作家エミール・ゾラにもそうした傾向がありました。
ゾラにしろチェーホフにしろ、なぜ不倫ものを書いたのでしょう。私はそこに彼ら流の問題提起があるように思えます。
不倫ものをチェーホフは多く書きましたが、単にゴシップ的なものを書きたかっただけというのではなく、そこにある人間の苦悩をチェーホフは見つめていたのではないでしょうか。
ショーペンハウアーの本を読み、考え、記事にするのはなかなかに厳しい時間でした。普段の数倍疲労感がたまり、気持ちも落ち込みました。
しかしだからこそショーペンハウアーの悲観主義を乗り超えねばならぬとも感じました。ドストエフスキーやトルストイはその偉大なる先達なのだと改めて感じたのでありました。あの時代の文豪たちがなぜあそこまで本気で「生きること」について思索し続けていたのかが少しわかったような気がしました。
絶望の時代だったからこそ彼らは「生きること」に真剣になっていたのだと。そしてその葛藤を文学にぶつけていたのだと。
「幸福は蜃気楼である。迷妄である」
『幸福について』というタイトルから「人生を幸福なものにするための方法」を教えてもらえるのかと思いきや、いきなり幸福など幻に過ぎぬとばっさり切ってしまうあたりショーペンハウアーらしさ全開です。
この本ではショーペンハウアーが「人々の信じる幸福の幻影」を木っ端みじんにし、どう生きればよいのか、真の幸福とは何かを語っていきます。
彼の主著『意志と表象としての世界』と違って、話も短く具体的でとても読みやすくなっています。ショーペンハウアー入門として最適です。
『意志と表象としての世界』はかなりの大作です。これを完全に理解するのは当時の人たちにとっても現代の私達にとっても至難の業です。
しかも驚くべきことに著者のショーペンハウアー自身が序文でとてつもないことを述べるのです。
彼はまず言います。この本は2回読まねばわからぬと。
こんな難しくてしかも長い本を2回も読めと。しかも1回目はまずわからないだろうから忍耐が必要だと最初から宣言するのです。さすがショーペンハウアー、言うことが違います。
他にも驚きの言葉がどんどん出てきます。やはりこの作品は一筋縄ではいきません
この本はツルゲーネフの全生涯を振り返りながら、その出来事と作品のつながりをわかりやすく、そして深く掘り下げていってくれます。
単に生涯をたどるだけでもなく、単に作品の解説をするだけでもない。生涯と作品を結び付けて何がツルゲーネフの作品に影響を与えているかをとてもわかりやすく解説してくれます。
これまで当ブログでもツルゲーネフ作品を紹介してきましたがそこでもたくさん引用させて頂きました。
難しい理論的な話ではなく、実際の人生と作品の結びつきが物語的に語られるので肩肘張らずに作品を理解できます。
ドストエフスキーのライバル、ツルゲーネフ。彼を知ることでドストエフスキーが何に対して批判していたのか、彼がどのようなことに怒り、ロシアについてどのように考えていたかがよりはっきりしてくると思われます。
また、ツルゲーネフの文学は芸術作品として世界中で非常に高い評価を得ています。
文学としての芸術とは何か、そしてそれを補ってやまないドストエフスキーの思想力とは何かというのもツルゲーネフを読むことで見えてくるのではないかと感じています。
芸術家ツルゲーネフの凄みをこれから見ていくことになりそうです。
ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』と鹿島茂氏の『デパートを発明した夫婦』を読めば百貨店の誕生の過程やその繁栄の秘密をかなり詳しく知ることができます。
私は経済学者でもビジネスの専門家でもありませんのでこうしたことを言うのは僭越なこととは思いますが、文学、思想、社会という視点から百貨店を見ていくのも非常に興味深いことなのではないかと思います。
ニュースを見て改めてゾラの視点というのは現代にも必ず生きてくると感じた今日この頃でありました。
普通に生活していてはなかなか知ることができない戦争の真の姿や、なぜ戦争が起こるのか、なぜ平和は実現しないのかということを神野先生は国際関係の歴史から丁寧に解説してくれます。
この本を読めば世界に対するものの見方が変わってくると思います。
そして同時に、日本人たる私たちが今世界でどのような状況に置かれているのかも考えさせられることになります。
この本では日露戦争のことも言及されていて、遠いヨーロッパの出来事がいかに日本にも強力な影響を与えていたかが一目瞭然でした。
ジョルジュ・サンドは「私の方は、こうあって欲しいと私が望むように、こうあるべきだと私が信じるように描こうとしたのです」という姿勢で作品を書いています。
ここがジョルジュ・サンドが理想主義的な小説家と言われる所以であります。ここにバルザックやゾラのように「あるがまま」の人間の姿を描く作家との違いを見て取ることができます。