船山徹『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』概要と感想~お経とは何かを考える上でもおすすめの刺激的な参考書!
船山徹『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』概要と感想~お経とは何かを考える上でもおすすめの刺激的な参考書!
今回ご紹介するのは2013年に岩波書店より発行された船山徹著『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』です。
早速この本について見ていきましょう。
サンスクリット語などインドの言葉が原語であった仏典は、中国の文字や言葉に翻訳されて伝わることにより、東アジアの文化的基層となった。鳩摩羅什や玄奘ら、高僧たちの翻訳理論とはいかなるものか。どのような体制で、どれくらいのスピードで行われたのか。中国に無かった概念をどう訳したのか。さらに、中国で作られた、「偽経」とは?仏典の漢訳という、人類の壮大な知的所産を、専門外の読者にもわかりやすく解説した、初めての本。
Amazon商品紹介ページより
この本は私達日本人にとっても馴染み深い「お経」がどのようにして作られてきたかを知れる作品です。私たちにとって「お経」といえば漢文のイメージがありますが、そもそもの始まりはインドで作られた仏教経典になります。それを漢訳したものが私たち僧侶が読誦する「お経」であります。
これまで当ブログでも紹介してきた中村元先生をはじめ多くの仏教学者によってインドのサンスクリット語経典の存在が今や日本でも広く知られるようになってきました。
ですがインドで生み出された経典が中国でどのように翻訳され私たちに届けられたのかというのは意外と知られていません。かくいう私もインド原典からどのように翻訳されたのかというのはほとんど知りませんでした。
中国の有名な翻訳僧といえば鳩摩羅什や玄奘がすぐに思い浮かぶと思います。
ですが彼ら翻訳僧はひとりで経典を黙々と翻訳していたわけではありません。大勢のチームを率いて翻訳作業に従事していました。
本書ではそんな翻訳作業の細かい点まで知ることができます。
古代インドの言葉で作られた経典がいかにして中国語に変換されたのか。
そもそも言語が違うということは単に単語レベルで直訳してなんとかなる問題ではありません。
日本人は漢文を書き下し文にして訓読する方法を編み出しましたが、普通はそう簡単にはいきません。
やはり英語を直訳しても語順やニュアンスの問題は大きく残ります。そもそも、ある単語に相当する言葉をこちらが持ち合わせていない場合もあります。そうした時に翻訳者はどうやってその難問を解決するのか。この本を読めばそうした翻訳の作業や困難さも知ることになります。
私たちはすでに出来上がった漢訳経典を受け取り、それを当然のものとして拝受しています。だからこそお経が漢文であることに何の違和感も感じませんが、このインドからの翻訳過程に中国や日本の仏教の特色があるとも言えます。こうした翻訳過程を学ぶことで私達が日々接している「お経」がまた違って見えてくるのではないでしょうか。
普段なかなか考えることすらない「漢訳の過程」ではありますが、いざその実態を見てみるとこれが面白いのなんの!「ほお!そうやってお経が作られていったのか」と驚くこと間違いなしです。これは刺激的です。
中国仏教や日本仏教を考える上でもこの本は大きな示唆を与えてくれる作品です。
ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「船山徹『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』~お経とは何かを考える上でもおすすめの刺激的な参考書!」でした。
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