Franz Kafka's "The Castle" Synopsis and Impressions - Kafka's unfinished masterpiece explodes with absurdity! Satirizing rigid bureaucracy?

Kafka's City of Prague and Czech Literature

フランツ・カフカ『城』あらすじと感想~カフカ未完の傑作

フランツ・カフカ(1883-1924)Wikipedia.

今回ご紹介するのはフランツ・カフカが1922年に執筆し、そのまま未完の作として残された『城』という作品です。

私が読んだのは2001年に白水社より発行された池内紀訳の『城(カフカ小説全集3)』です。

Let's take a quick look at the book.

ある冬の夜ふけ、Kが村にやってくる。この村は城に属する村だった。測量士として城から雇われたはずのKは、しかしながらいつまでたっても村に留め置かれ、城からの呼び出しはなかった。
城はかなたにくっきりと見えていた。しかし、近づいても近づいても城にはたどりつくことはできない。この城はいったい何なのか。城という謎の存在を前にして、Kの疑問は深まる。
そして、雪にとざされたこの村を支配する城と向き合って、一見喜劇的とも言えるKの奇妙な日常がはじまる。
『失踪者』『審判』につづく「孤独の三部作」の掉尾を飾る作品。カフカ畢生の大作。
※一部「~~」という文字を削除してこの文を引用しています(ブログ筆者注)。

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カフカはこの作品が未完のまま1924年に亡くなってしまいましたが、友人のマックス・ブロートが遺稿を整理し、出版された作品です。

この作品は測量士であるKがとある村で繰り広げる不思議な物語です。

この作品も前回紹介した『審判』と同じく、どんどん現れる奇妙な人間達によって主人公はとにかく不条理な目に遭わされ続けます。

Kは城に測量士として雇われたにもかかわらず、城側はまったく彼と取り合おうとしません。というよりそもそも城の意志は何なのかすらわかりません。

Kは仕事をしにやって来たのに城にすらたどりつけない。城にたどり着くにも許可がいるのにその許可をくれる人物とコンタクトを取ることすらできません。

どうしたらコンタクトが取れるのか。役人に連絡を取らなければならない。

役人と連絡を取るにはどうしたらいいのか。その部下を介さなければならない。

その部下に会うにはどうしたらいいのか。村の召使や愛人などを介さなければならない。

ですが村の召使や愛人を介しても、部下にその用向きが伝わることもなく、伝わっても上には届かない。

部下は役人の意志がなければ何もできない。

役人はKに会う気もない。いや、そもそも城から指示されなければ何もする気もない。

そしてそもそも、城が何を意図しているのかもわからない。

こうなってしまったら堂々巡り。どうやってもKは城にたどり着くことなどできないのです。

この『城』という大作はこんな調子で400頁以上も続く恐るべき作品です。

とにかく進まない!

次から次にたらい回しされ、何か糸口が見えたかと思ったらまた奇妙な人物が現れ状況はややこしくなっていく。

もし解説だったり、前知識がないまま読んだら「一体何なのだこの小説は!」と呆然とするしかないのではないでしょうか。

話がまったく進まないのです。しかもその進まなさに意味があったり、後の展開やフィナーレの大団円だったりどんでん返しがあるならまだわかります。

ですが、なんの動きもないままぷつっとこの小説は終わってしまうのです。

もちろん、カフカがこの作品を途中で書くのをやめてしまったからこういう終わり方なのですが、それにしてもこの小説は異様です。

巻末の解説では次のように書かれていました。

書かれたものと書き手とが、カフカの場合、奇妙なまでに重なり合い、まじり合っており、それがしばしば一つになる。『審判』のヨーゼフ・Kの往きつ戻りつのプロセスにひとしく、『城』のKの彷徨は、これを書いている作者の彷徨そのものである。そして読者がそれをともにする。Kの行き悩みは、そのまま作者の難渋であって、ともに手でさぐるようにして進んでいく。この点、主人公の職分は物語の進行にふさわしい。作者はたえず測量し、進行を計っている。

Kが自分の置かれた状況をあらためて思い返すシーンがある。村への到着、橋亭の主人、執事の息子、ラーゼマンのもとでのこと、そもそものはじまりが、「以後に方向を与えた」―そのKはあきらかに作者でもある。あらためて小説のことを考えている。着想、思いもかけなかった展開、書きすすめてきた状況。読者はそれと知らず主人公の手探りの前進のみならず、きわめて緊張し、はりつめた作者のペンの進行にも立ち会っている。これを書くことがいのちよりも大事であった人の、その息づかいまでもともにしている。カフカの小説の異様なまでの吸引力のよってきた理由である。
Some line breaks have been made.

白水社、池内紀訳『城(カフカ小説全集3)』P437

『城』という作品そのものがカフカの小説の書き方と密接に関わっているというのは非常に興味深いですよね。

カフカの彷徨そのものがこの作品に現れている。

そこにはカフカ自身の人生や彼の生まれ育った環境、性格、人間関係などあらゆるものが見え隠れしてくることになります。

なぜ彼はこんな不思議な作品ばかり生み出したのか、彼の想像力の源泉はどこにあるのかと想像しながら読んでいくと、とても面白く感じてきます。

そして、カフカを読むことは私達の生きる世界を考える上でも非常に重要です。ここに引用します。

カフカのように予測というかたちであれ、また同時代の観察者としてであれ、二〇世紀を正しく理解する人は、前例のない世界を想像する能力を必要とします。彼らは、この前例のない、一見ばかげた状況が、まさに現実であると想定しなければならないのです。ほかのあらゆる人とおなじように、こんなグロテスクなものは考えられない、と想定するのではなく。そのようにニ〇世紀を考えることは、同時代を生きる人間にとってはこのうえなく難しかった。おなじ理由で、多くの人びとは道理にかなっていないという理由で。それがユダヤ人にとって道理にかなっていないからということではありません。そんなことはあきらかですから。そうではなく、それはドイツ人にとっても道理にかなっていないことだったのです。ナチスは戦争に勝ちたいのだから、ナチスはユダヤ人を、大変なコストをかけて殺すのではなく、当然に搾取するだろう、と。

このように、完全に合理的な道徳的・政治的な計算を人間の行動にあてはめて考えることは、一九世紀に育った人間にとっては当然のことでしたが、それはニ〇世紀にはまったくもってあてはまらなかったのです。

みすず書房、トニー・ジャット、河野真太郎訳『20世紀を考える』 P292

私たちの生きる世界は不条理で満ちています。想像しえないことが起こり得る。理屈や合理性では説明のつかないことが日常にありふれている。これが私たちが生きる世界。その最たるものが第二次世界大戦の悲惨な戦いであり、ホロコーストであり、ソ連の粛清でした。

前例のないことを想像する力が今を生きる私達には必要です。それを教えてくれる格好の人物がカフカなのです。

カフカの描く不条理な世界は、まさしく想像しえない世界、ありえない世界です。

しかし、私達の世界も実はそんな不条理で満ちているではないか。理屈では通じないことがどれだけ多いことか。

そうしたことに改めて気付かせてくれるのがカフカという作家なのだということを上の本で知ることになりました。そう考えてみると、カフカってものすごい作家なのだなと改めて驚くことになりました。

そんなカフカの未完の傑作『城』ですが、やはりこれは恐るべき作品です。

あらすじでは測量士Kが城の依頼でこの村にやって来たというようになっているのですが、私はそれすら疑問に思ってしまいました。

というのも、Kは自分で「自分は城に依頼されてきた測量士だ」ということは言ってはいるものの、カフカのことですから、それですら本当なのか微妙なのです。巧妙なことに、カフカはこの人物については曖昧なままにしており、あくまでKは自分でそう名乗っただけであり、それを基に城や村人はKを測量士と考えているに過ぎないようにも読めてくるのです。なんとも微妙、なんとも奇妙な書き方なのです。歯がゆいことこの上なしです。

城側の対応もまったく要領を得ないものでKに本当に依頼したかどうかも曖昧なまま。

そもそも主人公が何者なのか最後までふわふわしている状況なのです。

そのくせなぜか強い意志でKはこの城を目指します。

散々ひどい目に遭い、仕事ももらえそうにないならこんな村から逃げてしまえばいいのにとこっちは思ってしまいます。ですが彼は意地でも村を離れようとしません。

なぜKがそんなにも城からの依頼の測量にこだわるかも曖昧です。自分が測量士であり、正式に仕事をすることを城に証明したいという心なのでしょうか。自分は正当に認められるべきであるということ、自分の存在を何か大きなものに証明したいのだという心なのかもしれません。

これこそK、すなわちカフカの野心の表れの一つではないだろうかと訳者解説では書かれていましたが、まさにそういう面もあるかもしれません。

いずれにせよ、この不条理な停滞がこの作品で延々と描かれることになります。

そしてその不条理のリアルさが凄まじいのです・・・

Previously introduced.『審判』はどこかファンタジーな雰囲気があり、空想的な不条理が描かれていましたが、この作品はぞっとするほどのリアルさで不条理を描いています。

官僚組織の圧倒的な権力、融通のきかなさ、人々の支配をベースに現実にもありそうな不条理をどんどんどんどん積み重ねていきます。

読んでいて、「これ、現実にもありそうだよな・・・」という思いが何度も頭をよぎりました。

「これは現実よりも現実なんじゃないか」とすら思えてくる不思議。カフカの異様な想像力、筆の力で私達は現実とカフカ世界の奇妙な融合を体感することになります。

不条理があまりにリアルなので、読んでいるとどんどん精神的にきつくなってきて、頭がくらくらしてきます。

『審判』も精神的にかなり負荷がかかる作品でしたが、この作品はさらにその上を行きます。

正直、この作品は身体に悪いです。実際、私は具合が悪くなりました。

ですが、これはある意味身体にワクチンを接種するかのようなものかもしれません。こうした作品を摂取することで私達の世界の見方が何か変わるのではないでしょうか。

それこそ、カフカを通して本来不条理な世界を不条理な世界と認識できるようになるかもしれません。

私達は合理的に世界を把握しようとしがちです。ですが、世界は「こうだからこう、そしてこうなっていく」という理屈で通る一本道ではありません。

数多くの不条理な作品を生み出したカフカ。

その想像しえない世界を想像したカフカの異様な想像力。

これを味わえる素晴らしい作品がこの『城』という大作です。

ですが、この本はとてつもない魔力を秘めていますので、疲れている時や余裕のない時はなかなか厳しいかもしれません。

I recommend that you read this book after you are in good physical condition and have some familiarity with Kafka.

個人的にかなり印象に残った作品でした。面白いかどうかと言われると、正直わかりません。ですが、強烈なインパクトがあったのは事実。これは忘れられない作品になりそうです。読んでよかったなと心から思えます。

以上、「フランツ・カフカ『城』あらすじと感想~カフカ未完の傑作。硬直した官僚組織を風刺?」でした。

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