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ンゴロンゴロクレーターにてサファリ~ライオンの射程距離 僧侶上田隆弘の世界一周記―タンザニア編⑤
さあ、いよいよクレーター内に下りていく。すぐそこはもう、動物の楽園だ。
外輪山からクレーターに下りると、そこには遮るもののない平原が広がっている。
もうすでに動物が映り込んでいるが、こんなものではない。
ンゴロンゴロをなめてはいけない。
少し進めばあっという間にこうである。
想像してほしい。
これはあくまで車の正面方向からの写真に過ぎない。
四方八方いたるところに何かしらの動物がいるのだ。
サファリが始まった直後はシマウマやヌーの群れに喜んでいたぼくであったが、30分もすればすっかり驚かなくなってしまった。
あまりにも普通に動物がいすぎるため、感覚が明らかに麻痺してしまっている。
まあまあそう言わずにと気を取り直して今度は水辺に寄ってみる。
シマウマやヌーの群れと共にハイエナが昼寝をしているところを発見する。
若干テンションが回復したことを実感。
そしてしばらくすると道の真ん中に薄茶色の大きな動物を発見。
そう。
ライオンである。
ガイドさんによると、これは待ち伏せのポーズらしい。
サファリカーは慎重にライオンに近づいていく。驚くべきことにライオンはサファリカーにはまったく関心を持っていないようで、まるで僕らがいないかのようにじっと獲物の方向を見続けていた。
さあ、ライオンの後ろまでやってきた。車から手を出せばがぶっとやられる距離だ。
このライオンの視線の先、水地の辺りからこちらに向かってくるシマウマを待ち伏せしていたらしい。
しかしシマウマはすでにライオンの気配を察したらしく、はるかかなたに逃げ去ってしまっていた。
ガイドさんによると、ライオンは体が大きいのですぐに疲れてしまう。だからライオンが獲物を追える距離はせいぜい20mから30mしかないとのこと。
だからこそ獲物が近くに来るまで待ち伏せして一気に仕留めるのだそうだ。
でも、僕は思う。
それにしたって射程距離20mは短すぎやしないか?
この大平原で、南北に16km、東西に19kmもあるこの大平原で、20mの距離までばれずに接近するなんて本当に出来るんだろうか。
案の定、今現在の乾季のンゴロンゴロでは背の高い草が生えていないため、ライオンの待ち伏せに適した場所がほとんどない。
乾季はライオンにとっては受難の時期らしい。
百獣の王も苦労人なのである。
とはいえ、一度射程距離まで近づけばその攻撃力は脅威だ。
草食動物は必死になってライオンの居場所を常に探している。
そのせめぎ合いがこのンゴロンゴロで日夜行われているのであった。
もし人類の祖先がこのような環境下で生きていかなければならなかったとしたらどうだっただろう。
やはりシマウマと同じように、いち早くライオンの居場所を見つけることが必要となっただろう。
シマウマにはよく効く鼻と目、そして脚力がある。
うん。ライオンから逃げるには十分な能力だ。
では、人間は?
樹上の生活者だった人間にはどうやらそのような力はなかったようだ。
だからこそ、一人一人が弱くても集団の結束力を高めたり、知性を用いることでライオンの射程距離の20mから逃れようとしたのではないか。
ライオンを見た後もしばらくクレーター内をサファリ。
サファリの終わり頃にはバッファローも象の群れも、サイも見ることが出来た。
ンゴロンゴロでそれらをまとめて見れるのは運がいい方らしい。
さあ、いよいよ明日はオルドバイ渓谷だ。
続く
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