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A・ペティグリー『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』あらすじと感想~活版印刷の起源とルターのつながりを知るのにおすすめ!

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A・ペティグリー『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』概要と感想~活版印刷の起源とルターのつながりを知るのにおすすめ!

今回ご紹介するのは2017年に白水社より発行されたアンドルー・ペティグリー著、桑木野幸司訳の『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』です。

早速この本について見ていきましょう。

《新資料の活用で浮かび上がる、新しい文化史》

本とは手書き写本であったヨーロッパに印刷された本が生まれたことで、人々の暮らしや政治・宗教・経済・文学はどう変わったのか。

本とは手書き写本であったヨーロッパで、15世紀半ばに印刷本が生まれた時、社会はどう変わっていったのか。本書は印刷術の誕生から発展・定着にいたる200年あまりの歴史を、具体的な数字やエピソード満載で描く。斬新な初期近代メディア文化史であると同時に、政治・文学・科学・芸術・経済を重層的にとらえることができる1冊である。

そこでは、ひと握りの成功者から、落ちぶれて破産し、また異端として告発された者まで、本に命を賭けた人々の人生劇が繰り広げられる。一方で、16世紀初頭と末との学者の蔵書数の変遷を分析するかと思えば、書籍の流通・販売経路を再構成してみせる章もあり、さらに著者と印刷業者との駆け引き・禁書や出版権をめぐる当局との攻防など、当時の本がどのように生まれ消費されていったかを、詳細に知ることができる。印刷本はコルテスやピサロの軍の蛮行に影響を与え、また印刷本だからこそなしえた科学への貢献があった。

エラスムスの名著から政治・宗教関係のビラやパンフレット、贖宥状のような紙片まで、当時最新の医学書からいかがわしい治療法に関するハウツー本までが織りなす、めくるめく書物と印刷の興亡史。

Amazon商品紹介ページより

3回前の記事「マイケル・ポワード『グーテンベルク 伝記 世界を変えた人々15』活版印刷機を発明したドイツの偉人。ルターの宗教改革にも絶大な影響」では活版印刷術を発明したグーテンベルクの伝記をご紹介しました。

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そして今回ご紹介する『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』では、グーテンベルクの発明だけでなく、活版印刷術が生まれてくるはるか前の時代、つまり手書き写本全盛時代のお話からグーテンベルクの発明以後の出版業界の流れまでかなり広い範囲で「本と出版の歴史」を学ぶことができます。

これは本好きにはたまらないものとなっています。

そもそも本とはどういうものだったのか。誰がどのように作り、どのような人が欲していたのか。

そして活版印刷術ができた後、世界にどんな変化が生まれたのか。

そして何より、ルターと活版印刷術のつながりは非常に興味深いものがありました。

1450年代に生まれた活版印刷術が本格的にその威力を発揮するのがルターの宗教改革であったことは有名です。

ですがよくよく考えたら、印刷術の発明からルターまでは70年近くのタイムラグがあります。

この間印刷術はなぜその力を発揮しなかったのでしょうか。

この本ではそうした背景もかなり詳しく知ることができます。

出版技術が発明されただけで足りないのです。それが必要とされる時代背景がなければ技術も広まりません。

その最たるものがルターの宗教革命と印刷技術の出会いでした。ルターだけでは宗教革命がヨーロッパ中を席巻することもなかったでしょうし、印刷技術だけでも不十分なのです。

ルターと印刷術の相乗効果の過程をこの本ではじっくりと見ていくことができます。これは非常に興味深かったです。

550ページを超える大作ですが読み応え抜群の名著です。

当時の時代背景と絡めて学べるおすすめの作品です。

以上、「A・ペティグリー『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』活版印刷の起源とルターのつながりを知るのにおすすめ!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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