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辻丸純一『英国=湖水地方 四季物語』あらすじと感想~イギリスの美しき田園風景をたくさんの写真で楽しめる1冊!

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辻丸純一『英国=湖水地方 四季物語』概要と感想~イギリスの美しき田園風景をたくさんの写真で楽しめる1冊!

今回ご紹介するのは2000年に東京書籍より発行された辻丸純一著『英国=湖水地方 四季物語』です。

この本はピーターラビットや詩人ワーズワースで有名なイギリスの湖水地方を写真家辻丸純一氏が旅し、たくさんの写真と共にその魅力をお伝えする作品です。

先に申しておきますが、この本は危険です。

読んだらものすごく現地に行きたくなります。

思わず「うわ~」と声が漏れてしまうような素晴らしい写真が満載です。美しい田園風景が有名な湖水地方ですが、こんなに美しいとは!そしてこの地域の素朴な雰囲気が何ともいいんですよね・・・辻丸さんが実際に現地で体験した湖水地方のお話はとても興味深いです。湖水地方のガイドブックとしてはもちろん、旅行記としても楽しめる1冊となっています。

では、ここで湖水地方について著者の辻丸さんの言葉を聞いていきましょう。

憧れの湖水地方へ

ここちよい春の風がやわらかく、心なごむ季節になる。それまで寒かった丘陵地帯にはタンポポが一面に咲き乱れ、緑のカーぺットに羊の親子が遊びたわむれる。ひっそりとした神秘の湖、変化に富んだ山と渓谷のパノラマ、古城やカントリー・ハウスの花と香りの庭園。詩情豊かな湖水地方は絵画のような景観だ。今も一〇〇年前と変わらない、なつかしい詩情を見せてくれる。

英国にひきつけられる魅力は、歴史ある古い街並みも美しいが、なんと言っても田園の美しさにある。その中で最も美しい田園地帯が、湖水地方だ。

しかし、英国の「湖水地方」という地名を言っても、正確に位置のわかる人は案外少ない。地図を見ていただければわかるのだが、イングランドとスコットランドの州境で、アイリッシュ海に面している地域がこの湖水地方だ。「湖水地方国立公園」は九〇〇平方マイルあり、カンブリア山地を中心に、氷河期にできた渓谷や大小の湖からなり、イングランドで最高に美しい所と賞賛されている。

最近になって、ウサギの絵本のピーター・ラビットや詩人のワーズワースの生まれ故郷だと説明すると、やっとわかってもらえるようになってきた。

近年、旅行好きな人たちの間で人気がでて、旅行ガイドブックにも必ず紹介されるようになってきたが、まだ知られていない湖水地方の歴史や自然の美しさを写真とエッセイでより深く紹介したい。

湖水地方は偶然に現在のような美しい景観になったのではない。意外なようだが、今では観光の名所となっている湖水地方は、大昔は荒れた土地で、恐ろしい所だと思われていたらしい。自然や文化、人々の暮らし方などを知ることによって、美しい田園はどのようにして作られてきたのか、何世紀にもわたって人間と自然環境とが融和してきた歴史を伝えたい。

英国では一八世紀の中頃から産業革命が起こり、「世界の工場」と言われ、工業が発展していったが、都市に人口が集中し、開発の波によって美しい自然や歴史的環境が壊されていった。これによって一九世紀よりニ〇世紀にかけて約二〇万へクタールの農地と林地が消えていった。このような時代に環境破壊を防ぐため、湖水地方から警告を発し、行動を起こした人々がいた。一九世紀後半より環境保護の問題を提起してきた詩人のワーズワース、思想家のジョン・ラスキン、絵本作家のビアトリクス・ポターなど、湖水地方を代表する芸術家たちが立ち上がり、環境破壊から守った結果、現在のような景観が保たれているのである。

このような考えが発展し、「ナショナル・トラスト」(自然保護を積極的、意図的に進めること)と呼ばれる団体が設立された。自然環境や地域の社会環境を破壊せず文化遺産を残し、世界に先駆けてこの運動のモデルになった地域が湖水地方なのである。


東京書籍、辻丸純一『英国=湖水地方 四季物語』P10-11

この記事の最初に述べましたように、この本を読んでしまったが最後。もう行ってみたくてしょうがなくなってしまいました。素晴らしい景色ですね湖沼地帯は!これはぜひとも一度行ってみたいです!

辻丸さんの写真もとにかく素晴らしいです。ところどころ出てくる動物たちの写真もかわいらしいです。

さすがピーターラビットの生まれ故郷、ウサギたちの愛らしい写真に癒されます。

この本はそんな素晴らしい写真たちと共に湖沼地帯のことを知れるおすすめのガイドブックです。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「辻丸純一『英国=湖水地方 四季物語』~イギリスの美しき田園風景をたくさんの写真で楽しめる1冊!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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