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藤善眞澄、王勇『天台の流伝 智顗から最澄へ』あらすじと感想~智顗の生涯や鑑真と天台宗のつながりを知れるおすすめ参考書

天台の流伝
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藤善眞澄、王勇『天台の流伝 智顗から最澄へ』あらすじと感想~智顗の生涯や鑑真と天台宗のつながりを知れるおすすめ参考書

今回ご紹介するのは1997年に山川出版社より発行された藤善眞澄、王勇著『天台の流伝 智顗から最澄へ』です。

早速この本について見ていきましょう。

千四百年の大遠忌を記念して,中国屈指の学匠であり,実践の人であった天台大師智ぎと,海をへだて時を超えて智ぎの足跡を慕い,その教法を日本に迎え日本天台宗を創始した最澄を柱に,天台法門の流伝を扱う。

山川出版社商品紹介ページより
智顗(538-597)Wikipediaより

本書は中国天台教学の大成者智顗の生涯を知れるおすすめの参考書です。

智顗が生きたのは魏晋南北朝から隋の時代でした。南朝出身の智顗は戦乱の苦しみを味わっています。以前当ブログでもご紹介した森三樹三郎著『梁の武帝 仏教王朝の悲劇』で語られた梁の滅亡によって智顗はこの世のはかなさを知ることになりました。官僚の智顗一家も一夜にして没落し、死屍累々の中亡国の徒となってしまったのです。智顗はこの時17歳、この国家滅亡によって出家への意思を固めたとされています。

そしてその翌年、没落の心労からか両親も相次いで亡くなりいよいよ智顗は出家へと進んでいきました。

出家して僧侶として修行を続けること5年、畢生の師南岳慧思と出会い、そこから天台教学大成への道が始まります。本書ではこの南岳慧思という人物にもスポットが当てられていて、彼の生涯や思想も詳しく知ることができます。慧思は中国における末法思想の成立に大きな功績がある人物で、西暦552年を末法元年としています。この末法思想には浄土真宗も大きな影響を受けているので、私個人としてもこの人物を知れたのはとても刺激的でした。

本書ではこうした優れた師匠南岳慧思と智顗のつながりをここから見ていくことになります。

そしてそこから智顗がどのように大人物となり、中国社会から認められるようになっていくかを追っていきます。その過程で後に隋の煬帝となる晋王との深いつながりも見ていくことになるのでこれも興味深かったです。

智顗は中国仏教の大物中の大物です。この智顗が大成した天台教学を学ぶために最澄は唐に渡り、日本天台宗を開くことになりました。

その後日本仏教は比叡山天台宗が中心になっていきます。鎌倉新仏教の祖師たちも皆比叡山で学んでいます。本書を読めば著者が冒頭で「日本の仏教はインドではなく、中国の仏教がすべてであったといっても過言ではない。(P8)」と述べるのも頷けます。この本はものすごい参考書です。

まず、驚くほど読みやすい!本格的な参考書でありながら物語のように智顗の生涯を学ぶことができます。智顗の波乱万丈の人生や偉大な師南岳慧思の桁外れのスケールは読んでいて非常に刺激的です。

また本書後半では鑑真と日本天台宗についての驚きの事実を見ていくことになります。天台宗といえば最澄が始めたというイメージがありましたが、実はその前にあの鑑真が智顗の著作を日本にもたらしていたというのです。

唐招提寺に安置されている国宝「鑑真和尚像」Wikipediaより

753年に来日し、戒律を伝えた鑑真ですが、実は彼は智顗の天台の教えに深く帰依していた仏教僧だったのです。彼は『摩訶止観』や『法華玄義』などの書物を大切に日本にまで持参し、それらが東大寺の戒壇院か唐禅院に所蔵されたと本書で述べられます。

鑑真といえば律宗の開祖という、戒律のイメージしかありませんでしたが、まさか天台とつながっているとは驚きました。

本書ではこの鑑真と天台、そして最澄の日本天台宗の開宗まで語られますので智顗から最澄までの流れをスムーズに学ぶことができます。

最後の最後まで非常に読みやすく、刺激的な内容が語られますので私も夢中になって読み込んでしまいました。これはものすごい名著です。

天台宗とは何かと学ぶ入門書として非常に優れた作品だと思います。これはいい本に出会いました。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。

以上、「藤善眞澄、王勇『天台の流伝 智顗から最澄へ』あらすじと感想~智顗の生涯や鑑真と天台宗のつながりを知れるおすすめ参考書」でした。

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天台の流伝: 智ギから最澄へ

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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