スリランカの象徴シーギリヤロックへ~アジャンタ壁画とも比されるシーギリヤレディを訪ねて
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【インド・スリランカ仏跡紀行】(39)
スリランカの象徴シーギリヤ・ロックへ~アジャンタ壁画とも比されるシーギリヤレディを訪ねて
ダンブッラにがっかりした翌日に見たポロンナルワは実に素晴らしい場所であった。二日間でジェットコースターのようにスリランカに対する思いが乱高下している。さて、これから訪れるシーギリヤはどのような場所なのだろうか。
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シーギリヤはこの地図にあるように、ちょうどダンブッラとポロンナルワの中間地点にある。
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実は前日のポロンナルワへの道中ですでに私はシーギリヤロックを見ている。ジャングルの中に忽然と現れる巨大な一枚岩。実に不思議な光景である。
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シーギリヤで有名なのは何といってもこちらのシーギリヤ・レディーだ。5世紀に描かれたこの天女はあのインドのアジャンタ石窟の壁画とも比されるほどの作品として名高い。
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ここで実際にシーギリヤの様子をお伝えする前にこの遺跡についての解説をみていくことにしよう。今回参考にするのも伊東照司著『スリランカ仏教美術入門』だ。
シーギリヤは、正しくいうと「シンハギリ」と呼び、シンハとはライオンを、またギリとは岩を、そこで全体では、「ライオンの岩」を意味しています。この岩山を中心とする城塞は大きく、この岩山の山頂にも宮殿があり、また、その麓の西側にも宮殿がありました。それを含めての偉大な光景を生んだのは、五世紀に登場した、カッサパ一世王によったのです。当時の都は、すでに前の章で話したように、アヌラーダプラ都にありました。しかし、このカッサパ王は、スリランカ史上、実にユニークな王で、このシーギリヤを自分の城塞とし、住み着きました。
ですから、シーギリヤは、このカッサパ王を縁として、壁画が描かれ、美しい天女図が今日に残りました。
雄山閣、伊東照司『スリランカ仏教美術入門』P27-28
ここシーギリヤはアヌラーダプラという都がありながらも自分の宮殿をここに作ろうとした、変わり者のカッサパ一世王のおかげで残された遺跡なのだ。
そしてシーギリヤが「ライオンの岩」と呼ばれる所以はこれから実際に現地を見てみることでよくわかることになるだろう。
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今日もあいにくの雨。だがめげていても仕方がない。インドのハリドワールで絶望したような雨ではない。ここの雨は気持ちよさすら感じる。私にとって不快な気分はほとんどなかったと言ってよい。
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ここからシーギリヤロックに向かって真っすぐ通路が続いていたのだが、この道から見える景色がこれまた面白かったのである。
次の写真を見てほしい。通路左側にはほとんど手つかずの遺跡。そして右手側には発掘後の遺跡があったのである。
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以下の写真は左側右側を並べたものだ。
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これは面白い!発掘前の遺跡がどのような状態だったのかが一目瞭然である。おそらくこの草むらの上にはさらにたくさんの木が生えていたはずだ。そうなるとここに何があったかなどほとんど判別不可能だろう。こうしたビフォーアフターを通路を挟んで真向かいに配置してくれているのは非常にありがたい。
これには私も大満足であった。ダンブッラとは大違いだ。こういう配慮が嬉しいのである。
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かなり近づいてきた。さすがに迫力がある。これを今から登るのである。
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岩の隙間をひたすら階段で登っていく。今日もいいトレーニングだ。
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シーギリヤロックのまさに麓。山というよりもはや崖だ。
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さあここからが本番だ。岩肌に沿って作られた階段を上っていく。雨だけでなく強風もあったので要注意。
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かなり上までやって来た。改めて振り返ってみると、とんでもないところに通路が作られているのがわかる。
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中腹ほどまでやって来ると広場に出た。そしてこの広場から一気に頂上目指して登っていくことになるのだが、ここにはシーギリヤロックの名物と言える存在がある。
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それがこちらだ。
こんな垂直に近い岩肌に無理くり作られた階段通路にも驚くが、写真下部を見てほしい。何やら動物の足先のようなものが見える。
そうなのだ。これぞシーギリヤという名前の元となったライオンの巨大彫刻の名残なのである。
かつてはここに巨大なライオンの像があったそうだ。現在は爪先しか残っていないが、この上に煉瓦と漆喰で作られたライオンの顔と胴体があったそうだ。しかもそのライオンは大きく口を開け、人々は階段を上って口の中に入り、そこから胴体を通って頂上の宮殿へ向かっていたそうだ。なんと壮大なスケールの遊び心だろう!さすが変わり者のカッサパ一世王。並大抵の想像力ではそんなことを思いつかない。仮に思いついたとしてもそれを実現しようなどとは普通は思わないだろう。
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ここにかつて本当に巨大なライオンがいたのだ。そしてその背中にあたる頂上部分に王宮があったのである。
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ライオンの像近辺は通路も狭く、さらに雨風も強かったためかなり危険。さすがの私もカメラを構えることができなかった。これは登り切った後の写真である。いよいよあのシーギリヤロックの頂上付近までやって来たのだ。
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ここが頂上の王旧跡。真っ平らな基礎部分しか残されていない。ミヒンタレーもそうだったが、やはりこういうのは舞台の上に上るのではなく、下から見上げたほうが良いのである。
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雨だったので残念ながら視界も限られているが、天気の良い日ならばこの辺りを一望することができるそうだ。
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先ほどまで歩いてきた通路も上から見えた。
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頂上付近にはかつての遺構が残されていた。この天空の王宮跡を眺めているとまるでマチュピチュのようだと感じてしまう(マチュピチュには行ったことがないが)。
それにしても、どうやってこんな高い所にこれだけの建築資材を運んできたのだろうか。これまで見てきたように、シーギリヤロックはジャングルに突如現れる巨大な一枚岩だ。普通の山とは違う。それに、こんな高所でどうやって大工事をしていたのだろう。人員もどうやって確保し従事させていたのだろう。不思議だ。不思議でならない。
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上りより下りの方が怖い。下界を見ながら進まなければいけないし、雨で滑るのである。
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ライオンの広場へと無事下りた私はさらに道を進み、いよいよシーギリヤレディのもとへ向かった。
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それにしてもものすごい場所に通路を作ったものだ。地道に岩肌を削って通路を切り開いたのだろう。
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いよいよシーギリヤレディが描かれている石窟の近くまでやって来た。
右の写真の鉄骨で覆われた部分が螺旋階段のようになっていて、これを上るといよいよシーギリヤレディとご対面である。
ただ、残念ながら現在は文化財保護のため写真撮影が禁止されている。ここではWikipediaより引用することにしよう。
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実際に現地で見て私はその色彩の鮮やかさに驚いた。そして想像していたよりもかなり間近で見れたのも嬉しかった。写真撮影禁止とのことだったのでもっと厳重に管理されているかと思っていたのである。
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そしてガイドさんに言われて気づいたのだが、これらの絵は一発描きなので失敗してしまうとそれが残ってしまうのである。上の絵でもそれが明らかに残っている。皆さんもぜひ探してみてほしい。
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この石窟内には数多くの天女像が描かれていたが、やはりこの絵のクオリティーは圧倒的だ。
本や画像で事前に見たり調べたりした段階ではアジャンタの壁画と似ているなと思っていたのだが、実際に来てみるとその違いも感じられた。
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アジャンタが細い輪郭線で繊細に描いていくのに対し、こちらはタッチそのものに勢いがあり、輪郭をしっかりとっていく。
それにしても、なぜこんな力強いタッチでありながらこうも優美さや繊細さを表現できるのだろう。腰のひねり具合や腹部の肉感、つぶれ具合も実に素晴らしい。
アジャンタの蓮華手菩薩も完璧な指先を表現していたが、このシーギリヤレディも知的な強さのような、ただ単に優美とだけでは言い切れないような何かをその指先から放射していた。
いやぁこれは素晴らしい!良い!実に良いぞスリランカ!昨日からその評価はうなぎ上りである。
大満足のシーギリヤロックであった。あの巨大な岩山を登っても、それほど疲れを感じないほど魅力的な場所であった。ここもスリランカでぜひぜひおすすめしたいスポットである。
※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
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