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鈴木正崇『スリランカの宗教と社会』概要と感想~文化人類学の視点から見たスリランカ仏教を学べる大著!

スリランカの宗教と社会
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鈴木正崇『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』概要と感想~文化人類学の視点から見たスリランカ仏教を学べる大著!

今回ご紹介するのは1996年に春秋社より発行された鈴木正崇著『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』です。

早速この本について見ていきましょう。

村落や地域社会に加え変動下の都市にも現地調査を実施、民族対立や経済にも目配りしつつスリランカの社会構造と宗教儀礼を総合的に考察する単著では日本初の本格学術研究。

春秋社商品紹介ページより

本書は上の本紹介にありますように、スリランカの宗教についての本格的な研究書です。前回の記事「前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』~現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!」でもお話ししましたが本書『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』もとてつもないボリュームです。

一番右の文庫本は大きさの比較のために置いてみました。この写真を見れば本書『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』がいかに巨大な作品かが一目瞭然だと思います。そのページ数はなんと、900頁超!驚異のボリュームです。

上の写真にありますように、スリランカ宗教研究の本はなぜかとにかく分厚いです。きっとそれだけ取り上げるべき事象が大量にあるということなのでしょう。

さて、本書の特徴ですが何と言ってもこの本が文化人類学者によって書かれたという点にあります。

この本ではスリランカの宗教を仏教の専門家ではない文化人類学者の目で見ていきます。仏教の専門家ではないからこその視点で仏教を見ていけるのは私にとっても非常に興味深いものがありました。

この本について著者はあとがきで次のように述べています。

本書は、一九八〇年から現在に至るまで、断続的に調査を行なってきたスリランカの宗教と社会について、シンハラ人を主体として、文化人類学の立場から考察を試みた諸論考を集大成したものである。この間に、南インドやミヤンマー(ビルマ)の調査を行ない、南アジア世界や上座部仏教圏に関しての知見を広めて、比較の視点も生かしながら考察を進めた。(中略)

スリランカの多数を占めるシンハラ人に関しては、海外では多くの民族誌や論考が書かれているが、日本人による本格的な研究は、仏教関係を除いては、十分な蓄積がなかった。本書で目指したのは、広い視野に立って、仏教と神信仰の関わりや、人々の人生の生き方、祭りや巡礼や聖地についての考え方を明らかにし、それを地域社会を越えた、国家や民族の問題とからませながら論じることであった。(中略)

本書は、儀礼や世界観、人生儀礼、巡礼、神話などを、地元の観点を掬い上げながら、可能な限り独自の方法で検討し、これまでとは異なる新しい視野が開けるような展開を目指した。また、引き続き南インドでの調査を進め、スリランカを逆照射するような方向を模索している。

春秋社、鈴木正崇『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』P871-872

前回の記事で紹介した『現代スリランカの上座仏教』ではスリランカの仏教を体系的に学ぶことができましたが、本書では仏教を超えてスリランカの民族宗教や聖地巡礼についても学ぶことができます。

特にスリランカのシンハラ仏教徒に熱烈に信仰されているカタラガマ神や宗教の別なく信仰されているスリー・パーダ山についての解説は非常にありがたいものがありました。

カタラガマ神殿 Wikipediaより
スリー・パーダ山(別名アダムス・ピーク)Wikipediaより

仏教学者とは異なる文化人類学者ならではの視点でスリランカ宗教の実態をわかりやすく学べる本書は非常にありがたいものがありました。

また、上の引用にもありましたようにそれら宗教の背景となる社会情勢も詳しく語られます。宗教は宗教だけにあらず。時代背景がいかに宗教に影響を与えているかも本書では学ぶことができます。

信じられないくらい分厚い作品ではありますが、読んでみるとびっくりするほどすらすら読めてしまいます。著者の語り口はとても親しみやすいです。

仏教書としてのスリランカ仏教ではなく、文化人類学の書としてのスリランカ仏教を知れる興味深い名著です。ぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「鈴木正崇『スリランカの宗教と社会』~文化人類学の視点から見たスリランカ仏教を学べる大著!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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