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前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』概要と感想~現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!

現代スリランカの上座仏教
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前田惠學『現代スリランカの上座仏教』概要と感想~現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!

今回ご紹介するのは1986年に山喜房佛書林より発行された前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』です。

最近私はスリランカ仏教について何冊も本を読んできましたがその宗派や文化の違いについて実は頭が混乱し始めていました。

日本仏教が様々な宗派に別れていてそれぞれ教義や作法が全く異なるように、スリランカ仏教と一言で言ってもそこにはさまざまな違いがあります。

私はどの宗派があってそのどこがどういう教えを説いているのかがわからなくなってきたのです。

そんな時にこの本と出会ったことで頭がすっきりしました。

本書ではそんな現代スリランカのそれぞれの宗派やその成り立ちなどを体系的にわかりやすく学ぶことができます。頭が混乱していた私にとってこれは実にありがたい作品でした。

そして前回の記事で紹介した『スリランカの仏教』の訳者あとがきでは本書について次のように紹介されていました。

現代スリランカの仏教に関する研究としては、わが国では一九八六年にすでに、前田恵學編『現代スリランカの上座仏教』(山喜房佛書林)という大著(全六七一頁)が刊行され、現代スリランカの上座仏教についての優れた包括的な研究が発表されている。そのちょうど二年後の一九八八年に、今度は、現代スリランカの仏教研究の二大大家である、リチャード・ゴンブリッチ氏とガナナート・オべーセーカラ氏の共著による、本書の原著Buddhism Transformed-Religous Change in Sri Lanka(全四八四頁)が出版された。さらにその後、日本では、一九九六年に、鈴木正崇著『スリランカの宗教と社会―文化人類学的考察』(春秋社)という大著(全九ニ一頁)も出版されている。

これら三著はともに、長年のフィールド・ワークに基づく現代スリランカの仏教に関する大著でありながら、次の点で好対照を示している。すなわち、『現代スリランカの上座仏教』は、仏教学の立場から書かれたものであり、『スリランカの宗教と社会』は、文化人類学の立場から書かれたものであり、本書は、仏教学者と文化人類学者の共同作業によるものだという点である。また、『現代スリランカの上座仏教』と本書にも、対照的な点が見られる。すなわち前者が、主に農村部をフィールドとし、仏教学の立場から、さまざまな理論的枠組みを用いることを意識的に避けて、現代スリランカの仏教の現状を記述することに専念しているのに対し、後者は、コロンボおよびその周辺の都市部をフィールドとし、さまざまな手法と理論的枠組みを縦横に駆使しながら、都市化に伴うスリランカの仏教の変容を分析することに、重点を置いているという点である。

法藏館、リチャード・ゴンブリッチ、ガナナート・オベーセーカラ、島岩訳『スリランカの仏教』P715-716

文庫本と並べてみるとこのスリランカ仏教三部作とも言えるこれらの作品の巨大さがよくわかるのではないでしょうか。上の引用でも述べられていたように、驚異のボリュームです。

スリランカの入門書としては厳しいかもしれませんが、より深くスリランカを学びたいという方には非常におすすめの名著揃いです。これだけの大ボリュームでありながら読んでいて辛くありません。語り口の面白さはもちろん、そもそもスリランカの宗教事情がとにかく興味深い!インドとスリランカの宗教の違いを考えながらスリランカ仏教の独自性を学んでいくのは非常に刺激的でした。

これから先もスリランカ仏教についてわからないことがあったり確認したいことがあれば私は迷わずこれらの本を開くことでしょう。参考書、資料としてとにかく素晴らしい作品です。

スリランカの各宗派の特徴や教義、さらにはスリランカの人々の生活レベルの仏教が体系的にまとめられた本書は非常に貴重です。葬儀や日々のお参りなどについても詳しく説かれますので日本の仏教と比較しながら読んでいくのもとても面白いです。

これはぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「前田惠學編『現代スリランカの上座仏教』~現代スリランカ仏教を体系的に学べる大著!」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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