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菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』あらすじと感想~中国の宗教は何なのかを知るためのおすすめ入門書

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菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』~中国の宗教は何なのかを知るためのおすすめ入門書

今回ご紹介するのは2008年に講談社より発行された菊地章太著『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』です。

早速この本について見ていきましょう。

矛盾しながら共存する東アジア的宗教の本質。なぜ3つの異なる宗教が共存できるのか。死生観、自然認識、民間信仰などを題材に、衝突・妥協・調和を繰り返すアジア的宗教のダイナミックな思想構造を分析する。(講談社選書メチエ)

Amazon商品紹介ページより

上の本紹介では東アジアの宗教について書かれた本のように見えますが、本書のメインは中国の宗教になります。

中国の宗教は何なのか。儒教?仏教?道教?わかるようでわからない中国の宗教事情ですが、この本ではそんな難しい中国宗教をわかりやすく学ぶことができます。

本書「はじめに」では著者はこの本について次のように述べています。

講談社の山崎比呂志さんが大学の研究室にたずねてきた。

東アジアの儒教と仏教と道教をまとめて紹介する本を書かないかという。

それは大それた企画であります。……でもしばらく話をしているうちに、どうもこの編集者氏、中国やアジアに興味ある人とはなにかしらちがった雰囲気があるような気がしてきた。

「山崎さん、大学で何を専攻したんですか?」

「フランスの文学です。菊地さんは?」

「フランスの宗教」

なんだ、おたがいフランスかぶれか。どうりでちょっとヘンだと思った。

山崎さんが言うには、若いころはヨーロッパの文学や美術に関心があり、本を読んだり展覧会を見たりした。そうしているうちに、やっぱりヨーロッパ文化の大事な柱はキリスト教とギリシアだと思うようになってきた。さて、中年になってから中国の古典にも興味を持つようになったが、その根っこに何があるのか考えてみても、なんだか漠然としていてよくわからない。儒教なのか仏教なのか道教なのかつかみどころがない。だからこの東アジアのなんともすっきりしないもやもやを解きほぐしてくれる本があったらいいのに、というのだ。

そんな本があるなら、まず私が読みたい。

やっぱり大それた企画である。でも西洋かぶれが東洋をちょっとのぞいてみたら、……という感じでなら少し書けそうな気が、そのときなにげなくしてきたのだから、その浅はかさがいけない。

ええいっ、こうなったら浅はかついでだ。いちばん言いたいことを言ってしまえ!

東アジアの思想空間はシンクレティズムの花園なり。―これが結論。

シンクレティズムとは「ごたまぜ」という意味である。儒教と仏教と道教がごたごたまぜまぜになっている。純粋ではない。けれどゆたかさがある。そしてこれこそが宗教というものの現実の姿ではないか。

体系的論述は退屈してしまうので、つまみ食いのように儒仏道シンクレティック思想空間に分け入ってみたい。章ごとに儒仏道の重点は少しずつ異なるけれど、儒教が中心になったら次の章は仏教かはたまた道教か、というふうに心がけた。最後の章で見取り図がまとまることをめざして。

西洋大好き東洋今からという方、大歓迎です。西洋無関心東洋一筋の方は、ギョッ、こんな妙な見方もあるのかとご笑覧ください。

講談社、菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』P4-5

著者によればこの本は入門書としての位置づけではありますが、この本で説かれることはものすごく濃いです。

この本では儒教、仏教、道教それぞれの教えや特徴を見ていきながらそれらがどのように絡み合っているかを見ていきます。

さらには「そもそも宗教とは何なのか」という直球ど真ん中の問題にもこの本では切り込んでいきます。

これは面白いです!

私達の隣人である中国。その隣人の宗教は一体何なのか。意外とこれがわからない。そんな疑問をずっと持ち続けていた私にとってこの本は非常に刺激的で興味深いものがありました。

著者の軽快な語りと相まって一気に読み切ってしまいました。とにかく面白い!

ぜひぜひおすすめしたい一冊です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「菊地章太『儒教・仏教・道教 東アジアの思想空間』~中国の宗教は何なのかを知るためのおすすめ入門書」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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