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『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』概要と感想~『三国志演義』と史実との違いも知れるおすすめ参考書

中国の歴史04
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『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』概要と感想~『三国志演義』と史実との違いも知れるおすすめ参考書

今回ご紹介するのは2005年に講談社より発行された金文京著『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』です。

早速この本について見ていきましょう。

漢王朝滅亡(二二〇年)の衝撃は、この国に大きな岐路をもたらした。流浪の英雄、蜀の劉備。一流の詩人でもあった魏の曹操。老獪な現実主義者、呉の孫権。そして朝鮮半島と邪馬台国をめぐる国際関係。一〇〇年の混乱を経て、中国に統一帝国を志向する理念が確立する。日本人に最も親しまれてきた外国文学『三国志演義』から解き明かす大抗争の時代。

Amazon商品紹介ページより
劉備・関羽・張飛(桃園の誓い) Wikipediaより

中国の三国時代といえばあの魏の曹操、蜀の劉備、呉の孫権が火花を散らした『三国志』の世界です。

『三国志』は私もかつて横山光輝先生の漫画で貪るように読んだ記憶があります。あの血沸き肉躍る豪傑や俊才達の戦いに夢中になっていました。

ですが、私達に馴染み深い『三国志』ではありますが、実はそれらの大半は史実とは異なるフィクションです。私達がよく知る『三国志』は正確には『三国志演義』という小説作品がベースになっています。

今作『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』ではその『三国志演義』と史実の三国志の違いも詳しく知ることができます。

こうしたフィクションと史実を学ぶことの意義について本書の冒頭で次のように述べられています。実はこの三国時代の歴史を学ぶことは仏教の歴史を学ぶことにもつながるのです。少し長くなりますが重要な指摘ですのでじっくり読んでいきます。

しかしそれにしても三国時代の実像に迫らねばならない理由が、なにかあるだろうか。歴史の検証が、もし小説はでたらめだということに終わってしまうのであれば、これほどつまらない話はない。現代のわれわれが一八〇〇年前の中国を知ることの意味はなんであろう。

それは、この時代が、現代にまでおよぶその後の中国の歴史、社会、文化を知るうえで、見のがすことのできない重要性をもっている点にあると私は考える。実際、中国という世界史上きわめて特異な文化をもつ国の多くが、この時代を起点としてはじまっているのである。紙の使用の普及もその一例であろう。

歴史学者の故川勝義雄氏は、かつて三国時代とそれに引き続く南北朝時代を、「華やかな暗黒時代」と表現された。それは、この時代が政治的には混迷をきわめた乱世であったが、しかしその乱世にあって、いやむしろ乱世なればこそ、きらめくような個性をもつ人物が自由に活躍し、さまざまな文化が花開いたという意味であった。

たとえば曹操である。小説では悪役の代表とされるこの人物は、強烈な個性に彩られた卓越した改革者であり、また彼およびその子の曹丕、曹植は、すぐれた詩人でもあった。中国の詩といえば、だれもが李白や杜甫の唐詩を思い浮かべるであろうが、華やかにして壮大な唐詩の世界の直接の原点は、この時代の曹操父子を中心とする文学運動にある。個性の表現としての文学が、中国史上はじめて独立した地位を獲得したのは、この三国時代にほかならない。

同じことは思想、宗教についてもいえる。中国の代表的思想である儒教は、いうまでもなく孔子にはじまるが、その孔子が選定したとされる儒教の経典を読むための注釈として、古来もっとも重んじられたのは、後漢末の儒学者、鄭玄によるそれであった。小説では劉備もこの鄭玄に師事したことになっているが、これまた例によってフィクションであり、劉備が実際に師事したのは、鄭玄の友人、盧植であった。

インドから仏教が中国に伝わったのは、一世紀後半、後漢の明帝の時であったとされる。しかし実際に多くの僧が中国にやってきて、訳経、布教活動をはじめ、仏教が人々の間に広まっていったのは、後漢末、三国時代になってからのことであった。呉の孫権は渡来僧、康僧会こうそうえのために建初寺を創建し、曹操の子の曹植は梵唄ぼんばい(仏教の唄)を作ったとされるのは、仏教の普及を示すであろう。

中国固有の民間宗教である道教は、春秋戦国時代の老子、荘子などの道家思想に源流があるが、それが本格的に宗教としての教団活動を開始したのも、やはり後漢末、三国時代であった。小説の発端となる黄巾の乱は、初期の道教集団である太平道が起こしたものであったし、五斗米道ごとべいどうの張魯は、曹操と劉備の間にあって独自の宗教王国を形成した。五斗米道はのちに天師道とよばれ、張魯の子孫は歴代、張天師として道教教団に君臨することになる。その末裔は今でも台湾で活動をつづけているのである。

この儒・仏・道の三教は、その後の中国の思想、宗教の骨格となり、さらに三教の間での論争と交流が行われ、中国独自の三教合一思想を生み出すのであるが、そのような三教間の論争と交流も、三国時代すでにはじまっていた。三国時代は、諸子百家が活動した春秋戦国時代とならぶ中国史上の華麗なる乱世であり、宗教、思想、文学、芸術などさまざまな分野においてエポックメイキングとなる重要な時代であった。

さらに文化や宗教だけでなく、政治的にも三国時代は一つの出発点であった。世界史上、中国という国の最大の特徴は、広大な領土をもつ統一帝国が長期にわたって持続した点にあるが、この統一帝国を強く指向する理念が確立したのは、やはりこの時代であった。そしてそれは日本や朝鮮などの周辺諸国にも大きな影響をあたえたのである。

講談社、金文京『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』P17-19

「三国時代は、諸子百家が活動した春秋戦国時代とならぶ中国史上の華麗なる乱世であり、宗教、思想、文学、芸術などさまざまな分野においてエポックメイキングとなる重要な時代であった。」

三国時代は華々しい豪傑たちの舞台だけではなく、思想、文化面でも大きな意味を持つ時代でした。

この時代に中国に仏教が根付き、ゆくゆくは大きく花開いていくことになります。この本は仏教を学ぶ上でも非常に興味深い作品でした。そしてやはり三国志は面白いということを再確認した読書になりました。小説である『三国志演義』が面白いのはもちろんですが、史実そのものもやはりドラマチックで面白いということをこの本では知ることになります。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「『中国の歴史04 三国志の世界 後漢 三国時代』~『三国志演義』と史実との違いも知れるおすすめ参考書」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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