『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』あらすじと感想~アメリカの天才発明家エジソンのおすすめ伝記!読書家エジソンの一面も
『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』概要と感想~アメリカの天才発明家エジソンのおすすめ伝記!読書家エジソンの一面も
今回ご紹介するのは2009年に大月書店より発行されたジーン・アデア著、近藤隆文訳の『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』です。
早速この本について見ていきましょう。
実用的な白熱灯、照明・電力システム、電話と発電機の改良、蓄音機、映画用カメラ、電気自動車…エジソンが取得した特許はほぼ1100にものぼる。最新の設備と有能な人材による産業研究所を設立し、技術革新を組織的に追求するシステムを構築、電力産業・音楽産業・映画産業を創出したエジソンの評伝。
Amazon商品紹介ページより
この作品は誰もがその名を知る発明家トーマス・エジソンの伝記になります。
エジソンは30歳になるまでにすでに彼の代名詞となる蓄音機や電球を発明しています。
「そんな早くから歴史を変える大発明を成し遂げるなんてきっと凄まじい教育を受けていたに違いない」と思いきや、実は彼もファラデーと同じく貧しい家の出身だったのです。
電気時代の基礎を作ったファラデーも学校教育をほとんど受けておらず、製本屋の奉公を勤めたのがきっかけで熱烈な独学に励むことになりました。
エジソンも学校にはほとんど通っていません。そして彼も12歳の時に鉄道のキャンディ売りとして働いたことがきっかけで人生が変わっていくことになります。
この伝記ではそんなエジソンの波乱万丈の生涯を知ることができます。エジソンについては名前は知っていてもいざどんな時代に生きてどんな生涯を送ったかはほとんど知らなかったので、この本は非常に興味深いものがありました。
そして今回の記事ではこの本の中で特に印象に残った箇所を紹介したいと思います。以下の箇所はエジソンの子供時代のお話です。エジソン(アルヴァ)がほとんど学校に通わず、読書に熱中していたことが語られます。
アルヴァがポート・ヒューロンで初めて学校にかよったのは、八歳になろうというころだった。まずジョージ・B・エングル師が運営する私立校に入学させられ、のちにポート・ヒューロンの公立校に移っている。こうした学校でおこなわれる教育は、生徒に授業を暗記するようもとめるもので、アルヴァ・エジソンのような探究心の強い夢見がちな少年からすると、ほとんど魅力がなかった。
教師たちはアルヴァを理解できなかったし、彼のいたずらの才能がよけい事態を悪化させた。当時の代表的な悪ふざけに、公立校のクラスメイトとふたりで校舎の三階の窓から釣り針をつけた糸を垂らし、ニワトリをひっかけ、その不幸な鳥をもちあげたことがある。おかげで校長にむちで打たれる結果となったが、これは数ある例のひとつにすぎない。
アルヴァが学校にかよったのは合計してもニ、三か月でしかなかったと思われる。後年の本人の回想によると、ある日、教師に陰で「頭が腐っている」と言われたのを立ち聞きしたのだという。
動転したアルヴァが家に走って母親に告げると、母親は怒って学校をやめさせ、自分が教えると宣言した。ナンシー・エジソンはおそらく、アルヴァのほかの教師たちに負けないくらい厳格な人物だったが、その授業はずっと刺激的だった。
彼女は息子にディケンズの小説やシェイクスピアの戯曲、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』やデイヴィッド・ヒュームの『イングランド史』を読んで聞かせた。ひとりで読むようにすすめたりもした。アルヴァがとくに夢中になった本がある。『自然・実験哲学概論』(A school compendium of natural and experimental philosophy)、リチャード・グリーン・パーカーによる初歩的な科学の教本だ。この本にはアルヴァが自分でできそうなかんたんな実験が説明されており、間もなく彼は全部を試してみることになる。
大月書店、ジーン・アデア、近藤隆文訳『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』P16-17
※一部改行しました
「彼女は息子にディケンズの小説やシェイクスピアの戯曲、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』やデイヴィッド・ヒュームの『イングランド史』を読んで聞かせた。ひとりで読むようにすすめたりもした。」
素晴らしいお母さまですね。エジソンはこうして読書の世界に浸り、想像力を伸ばしていったのでしょう。
この少し後の箇所ではさらに次のようにも語られていました。エジソンは鉄道での仕事を始めてから耳がほとんど聞こえなくなってしまったのです。
けれども、エジソンの難聴の真犯人は十中八九、車掌から手荒な目にあったことではない。慢性化した耳感染症とおそらく猩紅熱が、聴力が失われたほんとうの原因だろう。いずれにせよ、難聴がはじまったのはグランドトランク鉄道で働きだしたころだったようだ。「一二歳のときから鳥のさえずりも聞こえなくなった」とエジソンはのちに、日記のなかで嘆いている。
こうした聴覚の問題もあって、アルヴァはなおさら本の世界にのめりこんだ。ヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』が愛読書の一冊になった。ジャン・ヴァルジャンという前科者と無情な社会とのたたかいを描くこの壮大な物語は、幼いエジソンの夢見がちな心に訴えたのだろう。
トーマス・ぺインの『理性の時代』はさらにいちじるしい影響をおよぼした。自由思想をいだく父親からすすめられたペインの本は、革新的な考え方でアルヴァを魅了した。ぺインは神が存在すると断言しながらも、旧来の信仰心や宗教上の教えを批判していた。教会は「人間をこわがらせて奴隷化するためにつくられた人間の発明品」にすぎないと述べ、「世界とは私の国であり、善をおこなうことが私の宗教である」と宣言した。
大月書店、ジーン・アデア、近藤隆文訳『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』P21
※一部改行しました
「こうした聴覚の問題もあって、アルヴァはなおさら本の世界にのめりこんだ。ヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』が愛読書の一冊になった。ジャン・ヴァルジャンという前科者と無情な社会とのたたかいを描くこの壮大な物語は、幼いエジソンの夢見がちな心に訴えたのだろう。」
ディケンズにシェイクスピア、そして『レ・ミゼラブル』・・・!
子供時代のエジソンの成長にこれら偉大な文学者の作品が大きな影響を与えていたというのは私にとって非常に嬉しくなるものがありました。
こうした事実を知って私は一気にエジソンに親近感を持つようになりました。やはり素晴らしい文学作品は人の精神を耕すのだなということを改めて感じました。
この伝記を読んだことでエジソンの読書家の一面を知れて本当によかったなと思います。
「オックスフォード 科学の肖像」シリーズはこれまでも当ブログで紹介してきましたが、このシリーズは本当に名著揃いです。
巻末にこのような紹介ページがありましたが、まさにその通り。
コンパクトな内容ながら、偉人たちの生涯と特徴、そして時代背景がわかりやすく説かれます。ぜひぜひおすすめしたい作品となっています。
以上、「『オックスフォード 科学の肖像 エジソン』アメリカの天才発明家エジソンのおすすめ伝記!読書家エジソンの一面も」でした。
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