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コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』感想~『ボヘミアの醜聞』『赤髪組合』など珠玉の名作が収録された第一短編集

シャーロック・ホームズの冒険
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コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』~『ボヘミアの醜聞』『赤髪組合』など珠玉の名作が収録された第一短編集

コナン・ドイル(1859-1930)Wikipediaより

今回ご紹介するのは1892年にコナン・ドイルによって発表された『シャーロック・ホームズの冒険』です。私が読んだのは新潮社、延原謙訳2018年第130刷版です。

早速この本について見ていきましょう。

天才ホームズ、事件を解決できず!?
ホームズを翻弄する聡明な女性アイリーン・アドラーが登場する「ボヘミアの醜聞」など、
10編を収録した第1短編集。


「月9」TVドラマ化!
「シャーロック」フジテレビ系にて10月7日スタート。
名探偵にディーン・フジオカ、相棒・ワトソンは岩田剛典。


ロンドンにまき起る奇怪な事件を追って神出鬼没する名探偵シャーロック・ホームズは、その怜悧な推理と魅力的な個性で読者を魅了する。近代探偵小説を確立したホームズ物語の第一短編集。赤毛の男が加入した奇妙な組合のからくりを追う「赤髪組合」、乞食を三日やったらやめられない話「唇の捩れた男」など10編。意表をつく事件の展開、軽妙なユーモアがあふれる作品集である。

Amazon商品紹介ページより

今作『シャーロック・ホームズの冒険』は『緋色の研究』『四つの署名』で大ヒットしたシャーロック・ホームズシリーズの最初の短編集になります。

シャーロック・ホームズシリーズ最初の短編集でありながらそのクオリティは折り紙付きです。これからいくつも短編集が出るのでありますが、その中でも今作はベストなのではないかと思うほど面白いです。

その中でも特に好きな事件はやはり『ボヘミアの醜聞』です。まずタイトルからしてとんでもなくオシャレ。訳者の言葉選びのセンスには脱帽です。

そしてこの事件ではあの有名なアイリーン・アドラーが登場します。女性に全く興味のないシャーロック・ホームズですら一目置く才気煥発の絶世の美女です。もちろん恋愛的な意味ではありませんが、あのホームズを出し抜く驚異の機知を持つキャラクターです。

また、この事件で語られるホームズとワトスンの会話が非常に興味深いです。まさにシャーロック・ホームズシリーズの根幹とも言えることがここで語られます。ぜひその会話を紹介したいと思います。

「推論の根拠を聞くと、いつでもばかばかしいほど簡単なので、僕にだってできそうな気がするよ。それでいて実際は、説明を聞くまでは、何が何だかわからないのだから情けない。眼だって君より悪くなんかないつもりなんだがねえ」

「それはそうさ」とホームズは巻きタバコに火をつけて、肘掛椅子にどかりと腰をおろしながらいった。「君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大ちがいなんだぜ。たとえば君は、玄関からこの部屋まであがってくる途中の階段は、ずいぶん見ているだろう?」

「ずいぶん見ている」

「どのくらい?」

「何百回となくさ」

「じゃきくが、段は何段あるね?」

「何段?知らないねえ」

「そうだろうさ。心で見ないからだ。眼で見るだけなら、ずいぶん見ているんだがねえ。僕は十七段あると、ちゃんと知っている。それは僕がこの眼で見て、そして心で見ているからだ。

新潮社、コナン・ドイル著、延原謙訳『シャーロック・ホームズの冒険』2018年第130刷版P12-13

「見る」と「観察する」は決定的に違う!

言われてみるとまさにハッとする言葉ですよね!ホームズの鋭さはこうした「観察力」あってこそのものでした。もう憧れてしまいますよね。

『ボヘミアの醜聞』はストーリーそのものの面白さも抜群ですが、ホームズとワトスンのこのやりとりが聞けるという意味でも大好きな短編です。

またこの短編集では『赤髪組合』や『唇の捩れた男』、『青いガーネット』、『まだらの紐』など有名な短編も収録されています。特に『まだらの紐』は私の中でもお気に入りの事件です。

ひとつひとつの短編はどれも50ページにも満たないのでさくさく読んでいけます。まさに気軽そのもの!

一日一つペースでゆったり読んでいくもよし、一気に読み切るもよし、その楽しみ方は様々です。

読書初心者にも自信を持っておすすめできる名作短編集です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』~『ボヘミアの醜聞』『赤髪組合』など珠玉の名作が収録された第一短編集」でした。

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シャーロック・ホームズの冒険(新潮文庫) シャーロック・ホームズ シリーズ

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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