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A・バルベーロ『近世ヨーロッパ軍事史 ルネッサンスからナポレオンまで』概要と感想~マキャヴェリ時代から近代戦争への流れを知るのにおすすめ
今回ご紹介するのは2014年に論創社より発行されたアレッサンドロ・バルベーロ著、西澤龍生監訳、石黒盛久訳の『近世ヨーロッパ軍事史 ルネッサンスからナポレオンまで』です。
早速この本について見ていきましょう。
制限戦争から全面戦争へ、傭兵制から徴兵制へ、重装騎兵からカノン砲へ―ヨーロッパ集権国家形成の起源を、近世における戦争様式の変遷の歴史に探る
Amazon商品紹介ページ より
訳者あとがきではこの本についてさらに次のように述べられています。
軍事の歴史社会学を通じ近代史を回顧することは、我々がいまどのような状況にあり、どのような状況に向かおうとしているかを知る上で決して無駄なことではない。訳者は従来から、マキアヴェッリの政治思想を通じ近世初頭、ルネサンス期イタリアの政治文化史を考察してきた。この間たまたまマキアヴェッリの『戦争の技法』の翻訳を公にし、その予備作業としてルネサンス期イタリアの軍事史、ひいてはこの時代に端を発する近世軍事史の全体に親しむ機会にも恵まれた。
当然ながら話題となったロバーツやパーカーの「近世軍事革命」論をも参看し、その論旨からマキアヴェッリにおける政治と軍事の一体化という思想の現実的文脈を逆照射し得たようにも感じている。
研究成果を学生諸君と共有しようとの目論見のもと、近世軍事革命という視座から、マキアヴェッリの軍事=政治思想を講ずる試みも行った。こうした実践の中で、「近世軍事革命」論の全貌を要領よくまとめた教科書的読み物があれば、自身の研究の一助ともなり、また学生諸君に裨益する処も大きいのではないかと考えるようなった。
たまさか用務でイタリアはトリノ大学に出張中、トリノの街をぶらつきながらたまたま入った書肆で手にしたのが、今回翻訳を試みたアレッサンドロ・バルベーロの著作『近世ヨーロッパ軍事史』(原題La Guerra in Europa dal Rinascimento a Napoleone,Rome,Carocci,2003)である。
原著で一〇〇頁ばかりの小品と言うこともあり、当初は所詮中学生向けの入門書といった軽い気持ちで読み始めたのだが、読み進めるうち次第に本書がロバーツやパーカーに代表される、ヨーロッパ軍事史に関する最先端の学問的成果を、それも軍事史にとどまらぬ社会史や文化史に捗る広角から、平易かつ明晰な言葉で叙述し切った好著であることがわかってきた。 ※一部改行しました
論創社、アレッサンドロ・バルベーロ、西澤龍生監訳、石黒盛久訳『近世ヨーロッパ軍事史 ルネッサンスからナポレオンまで』P182-183
私がこの本を読もうと思ったのはマキャヴェッリの『君主論』 やサマセット・モームの『昔も今も』 がきっかけでした。
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たしかに『君主論』の中でそうしたことが語られるのは事実です。
ですが、「マキャヴェッリがなぜそのようなことを述べなければならなかったのか」という背景は見過ごされがちです。
当時のイタリアの政治状況はかなり特殊な状況です。
そのことについてこの記事では考えていきます
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マキャヴェッリの『君主論』では「マキャヴェリズム」という言葉が有名になるくらい権謀術数なんでもござれの戦いが書かれていましたが、彼がそのような書物を書かねばならなかったのにはそれなりの時代背景というものがありました。ルネサンス期のヨーロッパの国際軍事情勢がそこに大きな影響を与えていたのです。そして『君主論』で理想の君主のモデルとなったのが『昔も今も』で描かれるチェーザレ・ボルジアという王でした。
マキャヴェリ(1469-1527)Wikipedia より
チェーザレ・ボルジア(1475-1507)Wikipedia より
こうした複雑な国際軍事情勢を知るのにも今作『近世ヨーロッパ軍事史 ルネッサンスからナポレオンまで』は非常にありがたいものがありました。
そしてこの本のタイトルにもありますようにルネサンスからナポレオン時代までの軍事史の概略を知れるのも非常に魅力的なポイントでした。
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ナポレオン一人の存在で戦争が起こったのではなく、すでに十八世紀の国際状況がそれを誘発するものをはらんでいたということ。そしてナポレオンの天才ぶりばかりが強調されがちな中で、実はその戦勝の背景にある個々の兵士たちの存在が大きな意味を持っていたこと。それらをこの本では学ぶことができます。
私はナポレオン にも強い関心があり、彼が軍事史でどのように位置づけられ、彼の何が特筆すべきものだったのかということにも興味がありました。
ですのでこの作品はマキャヴェリ時代とナポレオンの両方を知れるという、私にとって二度美味しい素晴らしい参考書だったのです。
しかも上の訳者あとがきで、
「原著で一〇〇頁ばかりの小品と言うこともあり、当初は所詮中学生向けの入門書といった軽い気持ちで読み始めたのだが、読み進めるうち次第に本書がロバーツやパーカーに代表される、ヨーロッパ軍事史に関する最先端の学問的成果を、それも軍事史にとどまらぬ社会史や文化史に捗る広角から、平易かつ明晰な言葉で叙述し切った好著であることがわかってきた。」
と述べられていましたように、この本はコンパクトでありながら深い考察もなされた優れた作品となっています。軍事史といいますと、固有名詞や専門用語がずらりと並んで堅苦しく難しいというイメージがあるかもしれませんがこの本は全く違います。
当時の時代背景や戦争の実態を物語風にわかりやすく語ってくれるこの本は非常に読みやすいです。
「中世における戦争ってこういうものだったのか」ときっと驚くことになるでしょう。とても刺激的で面白い作品でした。
当時の時代背景やナポレオンの特徴まで知れるこの作品はぜひぜひおすすめしたい逸品となっています。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
以上、「A・バルベーロ『近世ヨーロッパ軍事史 ルネッサンスからナポレオンまで』マキャヴェリ時代から近代戦争への流れを知るのにおすすめ」でした。
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