ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』あらすじと感想~教会バロック音楽の大成者バッハのおすすめ伝記!
ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』あらすじと感想~教会音楽の大成者バッハのおすすめ伝記
今回ご紹介するのは1981年にリブリオ出版より発行されたひのまどか著『バッハ―「忘れられていた巨人」』です。私が読んだのは2003年第12刷版です。
この作品は「作曲家の物語シリーズ」の第二巻目にあたります。このシリーズと出会ったのはチェコの偉大な作曲家スメタナの生涯を知るために手に取ったひのまどか著『スメタナ』がきっかけでした。
クラシック音楽には疎かった私ですが この伝記があまりに面白く、「こんなに面白い伝記が読めるなら当時の時代背景を知るためにももっとこのシリーズを読んでみようかな」と思い、こうして 「作曲家の物語シリーズ」 を読むことにしたのでありました。
この「作曲家の物語シリーズ」については巻末に以下のように述べられています。
児童書では初めての音楽家による全巻現地取材
読みながら生の音楽に触れたくなる本。現地取材をした人でなければ書けない重みが伝わってくる。しばらくは、これを越える音楽家の伝記は出てこないのではなかろうか。最近の子ども向き伝記出版では出色である等々……子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています。
リブリオ出版、ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』2003年第12刷版
一応は児童書としてこの本は書かれているそうですが、これは大人が読んでも感動する読み応え抜群の作品です。上の解説にもありますように「子どもと大人が共有できる入門書として、各方面で最高の評価を得ています」というのも納得です。
ほとんど知識のない人でも作曲家の人生や当時の時代背景を学べる素晴らしいシリーズとなっています。まさしく入門書として最高の作品がずらりと並んでいます。
そして今回ご紹介する『バッハ―「忘れられていた巨人」』もやはり素晴らしかったです。
バッハといえば、以下のような美しいメロディーが印象的ですよね。
クラシックに詳しくない人ですらバッハの曲を知らない人はいないのではないでしょうか。
ですが、それほど多数の名曲を生み出したバッハですが、実際この人がどの年代を生きた人で、どこでどんな生活を送っていたかということになるとなかなかわからないというのが実際のところではないでしょうか。私もこの本を読むまでほとんど何も知りませんでした。
バッハ(1685-1750)はドイツのライプツィヒを拠点に活躍していました。しかし人々は彼の真価を理解できず、死後、その存在は忘れ去られてしまっていたのでした。
しかし1830年代頃からバッハを深く尊敬するメンデルスゾーンが彼の名曲を人々に知らしめたおかげでライプツィヒをはじめ、世界中にその偉大さが認識されることになりました。このメンデルスゾーンの働きは以下の日野まどか著『メンデルスゾーン―「美しくも厳しき人生」』でドラマチックに語られていますのでぜひおすすめしたい一冊です。
あまりに偉大な天才は当時の人には理解されず、時代を経てから初めて真に理解されるということをまさに体現するエピソードがこの本では語られます。
著者によるあとがきでは次のように述べられていました。少し長くなりますがこの本の雰囲気をより知ることができるのでじっくり見ていきます。
このバッハの物語を書きながら、私はいつもいつも頭のさがる思いでいっぱいでした。だいたい今の時代のだれが、これほど勤勉に、まじめに、無私無欲に生きられるでしょうか。いえ、今の時代といわず、いかなる時代の人びとも。いわんや芸術家なるものは、わがままで、お金にだらしがないといわれるイメージを、バッハひとりが完壁にぬぐい去っているかの観もあります。バッハにくらべると恋や失恋にインスピレーションを借りて作曲に熱中した後世の作曲家たちの、なんと子どもっぽく見えてしまうこと!とはいえ、バッハみたいな人が身近にいたら、これまた大変なことでしょう。私とてもちろん、あの厳格さにはとうていついてゆけないと思うと、バッハ自身にも、そしてバッハの二人の奥さんにも、二重に頭がさがるのです。
さがると同時に、私は今になってようやくバッハの音楽を正しく理解できたような気がしました。バッハの音楽には、ヴァイオリンを習いはじめた六歳の頃から、それこそ年がら年中出会っていました。まったくヴァイオリンにかぎらず、ピアノでもフルートでも歌でも、とにかく音楽を志す者は、だれひとりとしてバッハをさけて通ることはできません。初心者から専門家用まで、どの楽器にも、どの分野にも、かならずバッハの音楽が用意されていて、さながら文学の世界における『聖書』のように頑としてそびえ立っているのです。
そのバッハの音楽を、私の学生時代のフランス人やドイツ人の師は、「祈りの音楽だ」と説明しました。そしてまた、その響きは、「パイプオルガンの響きだ」とも説明しました。はあ、そうですか、とその時は漠然とわかったような気がしたものですが、今回東ドイツへいき、バッハゆかりの町と教会を回ってみて、その意味がはっきりとわかりました。
なによりもバッハの音楽はキリスト教の中の新教(プロテスタント)の精神を土台としており、その教えが説かれる『教会』という場を念頭に書かれており、そこに集まる信者に訴えるために書かれているのです。バッハの書いた教会音楽とは、いわば音楽の形を借りたお説教といってもよいでしょう。今でもバッハの音楽が、バッハの時代と同じく、日用品として演奏されている東ドイツは、それだけ敬虔なキリスト教国ともいえるのです。これが東ドイツだけではないことは、おいおいに他の作曲家の物語の中でもご紹介してゆきたいと思いますが、ともかくもバッハをとおして、みなさんが、クラシック音楽とキリスト教とは切っても切り離せないものだということを漠然とでもわかっていただければさいわいです。
もちろんバッハは、教会音楽だけではなく、宮廷音楽も世俗音楽もたくさん書きました。教則本もたくさん書きました。バッハの音楽を少しでも知りたいと思うみなさんは、どうぞ手当りしだいバッハをきいてみてください。りくつもなにもいりません。そのうちに、バッハがさまざまな雇い主の注文によって、いかに巧みに音楽を書き分けたか、いかに自己に厳しく、他に愛情をこめて書き分けたかがわかってきて、今の私と同じように、いつかはバッハを最大限に敬う気持ちになられることでしょう。
リブリオ出版、ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』2003年第12刷版 P276-278
この本を読めば当時のキリスト教教会の雰囲気やドイツの時代背景まで知ることができます。そしてそんな社会の中で孤軍奮闘するバッハの尋常ならざる戦いを目の当たりにすることになります。
ものすごく面白い一冊でした。ぜひぜひおすすめしたい一冊です。
以上、「ひのまどか『バッハ―「忘れられていた巨人」』教会バロック音楽の大成者バッハのおすすめ伝記」でした。
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