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ヴラスタ・チハーコヴァー『プラハ幻景 東欧古都物語』概要と感想~プラハはなぜこんなにも美しいのか
今回ご紹介するのは1993年に新宿書房より発行されたヴラスタ・チハーコヴァー著、村山恒夫訳『プラハ幻景 東欧古都物語』です。
早速この本について見ていきましょう。
プラハはなぜ美しい?
無血のビロード革命を遂げた市民の目がとらえる古都の現在。「ハヴェル大統領のプラハ」を新たに収録。好評のロングセラー、待望の新版発行
錬金術師が、パタフィジシャン(空想科学者)が、カフカが生きた街プラハ。
古代・中世・現代が交錯する、百塔の都プラハ。
プラハっ子の美術評論家がその魅力をあますことなく語る。
東欧の古都プラハの新しいロマンティック・パノラマ
新宿書房、ヴラスタ・チハーコヴァー、村山恒夫訳『プラハ幻景 東欧古都物語』帯より
この本は言葉に尽くせぬほど美しい街プラハの魅力とその秘密を余すことなく解説してくれる作品です。
そして驚きなのが、あの松本清張がこの本の紹介文を書いているということです。
ボヘミアの名は日本では早くから抒情的な連想をともなって知られている。
だがこの地へ日本人の訪間者は少なく、まとまった紀行文が出ていない。
著者はプラハ生れの女性ジャーナリストで、東京に長く生活したこともあって、日本人の感情性格を親友のように理解している。
この本には、プラハを中心に「霧の多い国」から生れたファンタジーに富むさまざまな説話が語られている。
未知のボヘミアの神秘を、著者は近代感覚で表現する。
その流麗な文章に、だれもがこの国のとらわれびととなろう。
作家 松本清張
新宿書房、ヴラスタ・チハーコヴァー、村山恒夫訳『プラハ幻景 東欧古都物語』より
この紹介文のなんと味わい深いこと・・・!
この本はプラハの街の成立時の伝説や神話から、中世、現代へとつながるプラハの知られざる歴史や文化を見ていくことになります。
私も2019年にプラハを訪れ、その美しさに魅了された一人です。
ただ、その時はまだまだ勉強しきれなかったこともあり、見逃してしまった場所や素通りしてしまった場所が多々あったのでした。
この本を読んでいると、「あっ!ここ見たことある!」「ちょっと足を延ばせば行けたのになぁ・・・!」という場所がいくつも出てきました。
写真やイラストも豊富で、読んでいてとても好奇心がそそられる内容となっています。
そして建物や歴史的スポットの興味深い歴史もさることながら、プラハの伝統工芸のガラス細工の奥深さも読んでいてとても面白かったです。
また、当ブログでも紹介してきたチャペック、ハシェクなどの文学者の話や、プラハにおける文学、芸術、精神性の解説もかなり詳しく語られるのでこちらも非常に参考になります。
巻末の「ハヴェル大統領のプラハ」というコラムも素晴らしいです。現地のことを詳しく知る著者ならではの視点から見た新生チェコの姿が語られます。一見華々しく見えるビロード革命の成功の影で難しい舵取りが要求されている微妙な政治状況をここで知ることができます。
ハヴェル大統領についてはこれまでも当ブログで紹介してきました。彼の主著『力なき者たちの力』は驚くべき名著です。そんな彼の違った側面をこのコラムから感じることにもなりました。
チェコをもっともっと知りたい方にとてもおすすめな1冊です。かなりディープなプラハを知ることができる作品です。
以上、「ヴラスタ・チハーコヴァー『プラハ幻景 東欧古都物語』プラハはなぜこんなにも美しいのか」でした。
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