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飯島周『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』あらすじと感想~チェコの天才作家チャペックを知れるおすすめ入門書

目次

飯島周『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』概要と感想~チェコを代表する天才作家チャペック

今回ご紹介するのは2015年に平凡社より発行された飯島周著『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』です。

早速この本について見ていきましょう。

『ロボット』や『山椒魚戦争』などのSFから、『ダーシェンカ』『園芸家の一年』などのユーモア溢れるエッセイまで、幅広い作品で知られるカレル・チャぺック。
あたたかく優しいまなざしで、自然やふつうの人々を描く一方、「ジャーナリストとしての観察眼、哲学者としての思考力、劇作家としての表現カ」を武器に、権力やファシズムと闘い続けた。
彼の生涯と作品を辿り、その魅力と全体像に迫る。
チェコで、日本で、世界で、今も愛され続ける秘密。

平凡社、飯島周『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』より

この作品はカフカに並ぶチェコの人気作家カレル・チャペックの生涯や作品をわかりやすく解説したものになります。

カレル・チャペック(1890-1938)

ここでチャペックについてざっくりとしたプロフィールを見ていきましょう。

チェコを代表する作家。38年にノーべル文学賞候補となったが、その直後に48歳で死亡した。生きていれば受賞は確実だったと言われている。「ロボット」という言葉を造ったことでも知られる。その作品にはヒューマニズムと、人間の真実を追究する哲学性と、暖かいユーモアか流れている。文筆を通して、マサリク大統領の人道主義的民主主義の政治を側面から支援した。代表作には、ルネ・ウェレックが哲学的小説の世界的傑作と評した三部作『ホルドゥバル』『流星』『ありきたりの人生』などがあり、『ロボット』『山椒魚戦争』などの作品が邦訳されている。

成文社、カレル・チャペック、石川達夫訳『マサリクとの対話―哲人大統領の生涯と思想―』より

生きていればノーベル賞は確実だったと言われるほどの作家だったというのは驚きですよね。

ですが、実際彼の作品を読めばそれも頷けます。特に私が初めて読んだ彼の作品、『ロボット』の衝撃たるや!

上のプロフィールにもありますように「ロボット」という言葉を生み出したのはこのチャペックです。

今当たり前のように使っている「ロボット」という言葉がチェコの文学者によって生み出されていたというのは驚きですよね。

そしてこの作品が面白いこと面白いこと!1920年に発表されたこの作品ですが、その先見性には驚愕するしかありません。次の記事でこの『ロボット』については紹介していきますが、チャペックの天才ぶりは恐ろしいほどです。

さて、飯島周著の『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』に戻ってきましょう。この本の「はじめに」では次のように書かれています。少し長いですがチャペックとこの本についてとてもわかりやすくまとめられていますのでじっくり見ていきます。

ヨーロッパのほぼ中央に位置する千年の古都プラハ―「北のローマ」「黄金の都」とも「百塔の町」とも呼ばれたこの地は、地政学上の理由で、東西南北から押し寄せる政治的・文化的潮流に洗われ、その歴史全体を通じて、数多くの変遷を経ながらも、学問・芸術の花を咲かせてきた。とりわけ、近代になって、ハプスブルク王朝の支配を脱し、哲人大統領T・G・マサリク(一八五〇―一九三七)の下に結成されたチェコスロヴァキア共和国の一九二〇年代・三十年代、すなわち第一次世界大戦から第二次世界大戦までの戦間期はいわゆる「束の間のルネサンス」の中心地として、さまざまな作家や芸術家がいわば綺羅星のごとく輩出した。

それら数多の星のなかで、際立つ光を放ったのはカレル・チャぺック(Karel Čapek 一八九〇―一九三八)である。文芸の各ジャンルばかりでなく、ジャーナリストとして死の直前まで健筆を揮った。その作品の数とともに質においても、さらに国際的な評価の点でも、まさに当代随一の存在であった。

五〇年に満たぬその生涯の中で、チャぺックの残した著作物の多さは驚くべきだが、同時に感心するのはその趣味の多様性である。犬や猫ばかりでなくさまざまな植物にも愛情を注ぎ、絵画・音楽を鑑賞し、映画を制作し、飲食物や衣裳、その他日常生活に関係するあらゆる物事に関心をもっていた。最終的には、「興味の源泉として、人間ほど汲めども尽きせぬものはない」とこの作家は告白している。その作品のすべての根底には、この視点が据えられている、と言っても過言ではあるまい。

人間に対する興味は、人間性についての深い認識へと進み、さらに人間性の尊重と擁護にまで発展する。チャぺックが一九三〇年代のヨーロッパを席巻しつつあったナチスドイツの人権無視に抵抗したのは当然の結果であった。文筆、言論によるその抵抗が、この作家の命運に大きく影響したことは容易に想像できる。(中略)

いずれにせよ、日本におけるチャぺックの知名度は非常に高く、本国を除けば世界で一番愛好者が多いとさえ言われている。地理的にも、文化的にも遠い国と思われるチェコと日本で、この作家がそんなにも耳目を集める理由は何だろうか。これは解きやすからぬ謎であるが、チャペックの魅力的な文章の背後にはそれに劣らず深い人間像がうかがわれる。そこでその生涯を追い、多様な作品と人間関係、そして社会活動を辿り、その底にある素顔の魅力を探ってみたい。


平凡社、飯島周『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』P7-9

この作品はチェコを代表する作家チャペックのことを知るには最適です。彼の生涯や思想、作品をわかりやすく解説してくれます。

チャペック作品と合わせてこの本を読むことでよりチャペック作品を楽しむことができます。

とてもわかりやすく、読みやすい本ですのでおすすめです。

そして次の記事からは以下のチャペック作品を紹介していきます。ぜひ引き続きお付き合い頂けましたら幸いでございます。

『ロボット』
『絶対製造工場』
『山椒魚戦争』

『白い病』
『イギリスだより』
『マサリクとの対話―哲人大統領の生涯と思想―』

『カレル・チャペックの闘争』
『マクロプロスの処方箋』

以上、「チェコの天才作家チャペック!飯島周『カレル・チャペック 小さな国の大きな作家』」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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