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『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題について』あらすじと感想~教皇が若者達に送る熱いメッセージ

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『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題についてー』概要と感想~教皇が若者達に送るメッセージ

ビル・クリントンアメリカ合衆国大統領と(1993年Wikipediaより

今回ご紹介するのは中央出版社より1982年に発行されたD・アリメンティ、A・ミケリーニ共著、池田敏雄訳の『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題についてー』です。

ヨハネ・パウロ2世は若者たちとの対話を非常に大切にした人物でした。彼は教皇になる前から学生たちとの交流を重んじ、彼らとの強い結びつきを持っていました。

この本はそんなヨハネ・パウロ2世による若者達へのメッセージが語られる作品となっています。

宗教離れが進み、物質中心主義となった世界。何を頼りにしていいのか、どう生きればいいのかという道筋を失ってしまった現代人に対し、ヨハネ・パウロ2世は語りかけます。

訳者あとがきではこの本について次のように述べられています。

本書からは教皇ヨハネ・パウロニ世が、いかに若者を愛し、若者に期待を寄せ、将来のよりよい世界と教会とを築いて欲しいか、その祈りにも似た願望が伝わってくる。教皇のことばは何も若者向けだけに限らず、一般人にも向けられているのだが、老若男女を問わず、若々しさのしるしである夢、希望、前進、たゆまぬ努力、自他や社会の刷新のエネルギーをもって、人生に意味を与えるようにという呼びかけでもある。いくつになっても若々しい気概をもって、たくましく、人生の道を前向きに進むようにという呼びかけであるから、本書は若者や信徒に限らず、一般人にも向いていると思う。しかも、本書に出ている教皇のことばは、若者のかかえる問題以外に、労働、経済、社会、政治、家庭、信仰生活、祈り、平和、暴力、戦争、人権など幅広い分野にわたるものであり、人生をいかに、よく生きるためにはどうしたらよいか、そのための適切な指針となっている。

中央出版社、D・アリメンティ、A・ミケリーニ共著、池田敏雄訳『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題についてー』P323

最後に「教皇のことばは、若者のかかえる問題以外に、労働、経済、社会、政治、家庭、信仰生活、祈り、平和、暴力、戦争、人権など幅広い分野にわたるものであり、人生をいかに、よく生きるためにはどうしたらよいか、そのための適切な指針となっている」というのは重要な指摘です。

この本では実際の私生活において私たちがどう生きるべきかということをキリスト教の観点から説いてくれます。単に神学的なことを話すのではなく、私たちの人生に密接に関わるものとして教皇はわかりやすく語りかけます。

そして教皇は若者を信頼し、彼らが希望であることを強調します。

私はこの本の中で語られた次の箇所が印象に残っています。

ヨハネ・パウロニ世は中に入られる前に、教皇を讃えるために広場に集まっていた数知れぬ青少年に向かって、こう言われる。「あなたたちの肩に世界の未来がかかっている。あなたたちは教会の希望、私の希望なのである」。(中略)

バチカン大聖堂で十一月八日、水曜日に行なわれた一般謁見の中で、一万一千人の青少年に向かって、こう言われる。「教皇はすべての人の幸福を望むが、とりわけ若い人たちに対してそう望む。若い人たちはとくに、キリストのみ心にかなう人たちだからである。キリストは子供といっしょにいることを喜ばれ、青少年とは特別に親しくされたのです。主の召し出しはとくに青少年に向けてなされ、いちばん年下のヨハネは、とりわけ主にかわいがられたのである」。ヨハネ・パウロニ世はさらにことばを続けて言われる。「あなたたちのことに思いをはせる時、これからあなたたちの生活に起こること、あなたたちがこれからの世界でどういう役割を果たさなければならないかを考えると、いささか身が縮む思いがするが、信頼の気持ちは変わらない。あなたたちの生活のかてとして、次の三つの考えをあなたたちに残しておきたいと思う」。

ーイエズスをさがし求めること。
ーイエズスを愛すること。
ーイエズスのあかし人となること。

中央出版社、D・アリメンティ、A・ミケリーニ共著、池田敏雄訳『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題についてー』P20-21

ヨハネ・パウロ2世は若者に希望を託しています。その真摯な姿は確実に若者たちに伝わり、世界中の若者たちがヨハネ・パウロ2世を慕い、大歓声で迎えることになりました。

こうした若者との交流は前々回に紹介したヨハネ・パウロ2世の伝記でも何度も出てきましたし、DVDの映像でもその熱狂ぶりはこちらが驚くほどでした。

若者にその熱意や希望のメッセージがこれほどまでに伝わるヨハネ・パウロ2世のカリスマ性を感じられました。

伝記や本、そしてDVDを見た私もヨハネ・パウロ2世に魅了されたひとりです。

この本は若者に向けたメッセージがたっぷりと収録されています。若者だけでなく全ての方にも伝わる希望のメッセージです。生きづらい世の中においてどう生きるべきなのか、それをヨハネ・パウロ2世はこの本で語ります。

とてもおすすめな1冊です。ヨハネ・パウロ2世に興味のある方にはぜひ読んで頂きたいです。

以上、「『教皇ヨハネパウロ二世との対話ー人生・社会・宗教問題について』教皇が若者達に送る熱いメッセージ」でした。

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教皇ヨハネ・パウロ二世との対話: 人生・社会・宗教問題について

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※2023年7月24日追記 ヨハネ・パウロ2世のお墓参り

サンピエトロ大聖堂内のヨハネ・パウロ2世のお墓

私は2022年にバチカンを訪れ、念願のヨハネ・パウロ2世のお墓参りをすることができました。

その時の体験を以下の記事「(37)サン・ピエトロ大聖堂の『カテドラ・ペトリ』~ベルニーニ芸術の総決算!空間そのものも作品に取り込む驚異の傑作!」内でお話ししていますのでぜひご参照ください。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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