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トニー・ジャット『ヨーロッパ戦後史』あらすじと感想~歴史書の金字塔!世界の仕組みを学ぶのに最高な1冊!

目次

トニー・ジャット『ヨーロッパ戦後史』概要と感想~学生にこそおすすめしたい!世界の仕組みを学ぶのに最高な1冊!

今回ご紹介するのは2008年にみすず書房より出版されたトニー・ジャット著、浅沼澄訳『ヨーロッパ戦後史』です。

写真で見てわかりますようにこの本はとてつもないボリュームとなっています。この大きさで上下巻合わせて1000ページ超の大作です。そして先に言っておきます。この本もものすごい本でした。

この本について裏表紙の言葉を紹介すればこの本がいかに優れた本か一目瞭然だと思います。早速見ていきましょう。

この本の傑出ぶりは余人には容易に成就できないものだが、褒めるのは簡単だ。文章は生き生きしており、内容は大国から小国に至るまで、まことに超人的な広がりをもち、そして何よりも、この本は才気煥発である。どのページを開いても、思いがけないデータが載っているか、新鮮な考察が述べられているか、あるいはすでにおなじみの考察に斬新な再考察が加えられているのである。——ルイス・メナンド(『ニューヨーカー』)

その知識は広大、思想は深遠である。読んでいると、第二次大戦の瓦礫やソヴィエト共産党の冷酷な全体主義支配からのヨーロッパの帰還について、ジャットの出張個人セミナーに出席している気持になる。——デイヴィッド・ハルバースタム

重大な歴史事件の記述と鋭敏で独創的な政治分析とを結び合わせること、東西ヨーロッパを均しくカバーすること、その登場人物たちの行動ぶりや逃避ぶり、偉業や失敗に対して辛辣かつ正確公正な判断を下すこと、こうした点でジャット氏をしのぐ人はいない。——スタンレー・ホフマン(『フォーリン・アフェアーズ』)

各紙誌絶賛のうちに、『ニューヨーク・タイムズ』年間ベストテン、『タイム』年間必読書、ピュリッツァー賞最終候補。いま最も注目される歴史家の快著。「ヨーロッパ戦後史のスタンダードの地位を獲得し、またそのエンサイクロペディアとしての高い評価を受けることに成功した。今後もそれは揺らがぬであろう。」(長部重康・本書解説より)

みすず書房、トニー・ジャット、浅沼澄訳『ヨーロッパ戦後史』上巻裏表紙

各評者からの並々ならぬ絶賛の声がここで書かれています。特に一番最初の書評の「内容は大国から小国に至るまで、まことに超人的な広がりをもち、そして何よりも、この本は才気煥発である。」という言葉はなんとうまくこの本を言い表していることかと驚きました。

たしかにこの本を読んでいて、著者のトニー・ジャットの怪物ぶりがものすごく感じられます。まさしく超人的な知の広がりです。単に歴史の出来事を並べるだけでなく、当時の国際情勢や文化、経済、思想、あらゆるものが繋がっていきます。読んでいてただただ度肝を抜かれます。それほどこの本は幅広くかつ深くヨーロッパの歴史を教えてくれます。

下巻の本解説はみすず書房のHPより引用します。


1945年から71年までを扱った上巻を継いで、下巻(1971-2005)では、繁栄の60年代が終わったあとの停滞と失意の時代から筆を起こし、新たな現実主義と連合への道を歩む西欧と、ソ連崩壊の後で分裂に向かう東欧、たび重なる民族と国家をめぐる戦争、グローバリズム、EU結成まで、多様なヨーロッパの生き方を描く。事実とその意味を百科事典的ともいえる具体性で描写しながら、かつ世界全体との関係も説得的に表現し、政治経済・文化芸術・市民の欲望までのうねりを縦横に提示した、歴史学の達成。

みすず書房HPより

最後の言葉はものすごいですよね。「歴史学の達成」です。それほどこの本は世界的に評価された1冊とされています。

この本の内容については残念ながらここで紹介することはできません。あまりに膨大でどこをどう紹介していいのか正直わかりません。

ただこの本を読んでいくうちに何度も思ったのは、「もしこれを学生の頃に読んでいたら自分はどうなっていただろう」ということでした。

先ほどもお話ししましたように、この本では著者の超人的な知の広がりを目の当たりにすることになります。読んでいてまさしく、自分の知っている世界が広がる感覚・・・歴史における地理的、文化的な横軸がどこまでも広がり、時間という縦軸がぐ~っと伸びていく感覚・・・うまく言い表せないのですがこの本を読んでいると「自分の世界が広がる」という感覚を味わうことになります。

世界は世界と繋がり合っていること、そして時の流れがいかに世界にとって大きな意味を持っているかを感じさせられます。

戦後ヨーロッパのことを自分がどれだけ知らなかったかということも思い知らされます。私は1990年生まれです。すでにベルリンの壁は崩壊しています。ですので戦後期や冷戦時代のことはまったくわからないまま過ごしてきました。しかも私が初めてヨーロッパに行ったのは2019年のことです。その時ですらヨーロッパ戦後史についてはほとんど何も知りませんでした。

これは私だけではなく多くの若い世代の人についても言えることではないでしょうか。いや、私よりもかなり上の世代の方でも改めて戦後ヨーロッパはどんな歴史を経ていたかと聞かれても、なかなかわからないのではないでしょうか。

少なくとも私はメディアで見たヨーロッパや、観光地化されツーリストとして訪れたヨーロッパのイメージしか私の頭の中にはなかったのでした。

そんな私がドストエフスキーを学ぶ過程でソ連史を学び、今こうして戦後の世界を学ぶことになりました。

私がこれまで知っていた、いや知っていたと思い込んでいたヨーロッパ像とは全く違うヨーロッパがそこにはありました。

戦後の混沌がどれだけ厳しいものだったのか。ヨーロッパの国々はその時どんな思惑を持って動いていたのかということをこの本では学ぶことができます。

そしてそこと密接につながる文化。これもこの本の特異な点です。著者のトニー・ジャットの映画の知識は並大抵ではありません。また、音楽や文学についても語られます。さらに高尚な文化だけでなく人々の日常生活やライフスタイルについても言及していきます。ヨーロッパの人々の暮らしがどのように成り立っていったのかを語るトニー・ジャットの語りは本当に刺激的です。

私は30歳を過ぎてからこの本と初めて出会いました。2019年に海外へ旅もし、今はロシア史や冷戦史も学んだ上でこの本を読みました。それですらこれだけ衝撃を受けたのです。もしこれがまだ世界のことなどほとんど知らない学生の時だったとしたらそれこそ世界の見え方がひっくり返っていたかもしれません。そしてトニー・ジャットのおかげでもっと広い世界を見ることができるようになっていたかもしれません。

もしそうなっていたら今とはまったく違った人生を歩んでいたかもしれない。そんなことすら思ってしまったのでした。

もちろん、今の人生にまったく悔いはありません。今は今、私の世界を生きています。

ただ、この本は若い人ほど読んだ方がいいと思います。特に学生に打ってつけだと思います。何せとてつもないボリュームの本です。社会人になって仕事でへとへとな状態で読むのはかなり厳しいと思います。時間も体力もまだ余裕がある学生こそぜひ読んでほしいなと思います。

そして記事を書いている今ふと思ったのですが、ある意味この本はそういう「志」を与えてくれる本なのかもしれません。世界を知り、視野が広がることは、「より世界を知りたい」、「自分は世界で何ができるのか」という思いに繋がっていくのではないでしょうか。知らない世界を知るということは自分の志を見つけるきっかけになるかもしれません。

パワーあふれる学生こそぜひこの本を読んでほしいなと思いました。もちろん、学生でなくとも何歳の方が読んでもこの本はものすごく面白いです(笑)ぜひ臆せずに手に取ってみてください。きっとトニー・ジャッドの化け物ぶりに驚くことになります。この本は決して難しい本ではありません。難解な歴史用語や哲学用語の羅列ではなく、その知識の幅の広さ、深さが尋常ではないのです。分厚くて難しそうだからという理由で敬遠するのは非常にもったいないです。この点を最後に強調したいと思います。

今回は本の内容というより私の感想を書き綴ってしまいました。ある意味、これだけの思いを起こさせる本であるということが伝わってくれれば、それはそれでありがたいことだと思います。非常におすすめな1冊です。

以上、「世界の仕組みを学ぶのに最高な1冊!トニー・ジャット『ヨーロッパ戦後史』」でした。

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ヨーロッパ戦後史(上)1945-1971

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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