ユダヤ教の聖地~嘆きの壁に触れる イスラエル編③
ユダヤ教の聖地~嘆きの壁に触れる 僧侶上田隆弘の世界一周記―イスラエル編③
ゲッセマネの園から旧市街城壁の方へ向かっていく。かなりの坂で、歩くのも骨が折れる。
ぼくがここエルサレムに来る数日前までは、この時期には珍しく、雨が降り続いていたようだ。
そのため、いたるところに鮮やかな緑が広がっている。色とりどりの花も美しい。
城壁沿いに道を進んでいく。
視線を左に移すとオリーブ山がそびえている
前回の記事「エルサレム旧市街散策~オリーブ山からの眺めとゲッセマネの園 イスラエル編②」で紹介した旧市街の写真は、この山の上から撮ったものだ。
ずいぶん急な山であるのがお分かりいただけるかと思う。ちなみに、この山の斜面にびっしりと建てられているのはユダヤ人のお墓だ。
さて、いよいよエルサレム旧市街に入っていく。
旧市街の南側にある糞門。ここから入っていく。
名前の由来はここからごみを外へ搬送していたということらしいが、実際の位置はこことは違う場所にあったとも言われている。
何はともあれ、ここから入っていくとすぐそこに嘆きの壁がある。
だがさすがは聖地、セキュリティチェックがある。
金属探知機のゲートと、手荷物のX線検査を入場ゲートで済まさなければならない。
検査を終えると、嘆きの壁の前の広場に出る。
かなり大きな広場だ。観光客でここもいっぱいだ。
この写真の右方向に、嘆きの壁がある。
さあ、進んでみよう。
エルサレムを歩いていると、ユダヤ超正統派の方と頻繁にすれ違う。
黒のロングコートに黒いシルクハット。こめかみの上あたりから伸ばしたもみあげは首のあたりまで垂れていて、伸ばしたひげも印象的だ。
もちろん、ここ嘆きの壁にもたくさんの超正統派の人が祈りに来ていた。
ここが世界の他の場所とは違うということを感じさせる。
嘆きの壁に近づくには「キッパ」と呼ばれる小さな帽子のようなものをかぶらなければならない。
「キッパ」を持っていない人はどうしたらいいの?
ご安心あれ。
「キッパ」を持っていない観光客のために、壁の入り口で無料で貸してくれるのだ。
ちなみに、これがキッパ。これを頭の上にちょこんと乗せるのだ。
そしてうっすら見えているが、この写真の奥の方がもう嘆きの壁だ。
嘆きの壁は目と鼻の先にある。
これが嘆きの壁だ。
平日の昼間だと、人でごった返すということはない。
だが壁に沿って多くの人々が祈りを捧げている。
近くに寄ってみると、超正統派の方たちは壁に手を押し当て、まるでお辞儀をするかのように頭を前後に揺らし続けながら手にした聖書を読んでいる。
特に大きな声で読むというわけでもなく、ぶつぶつと聞こえてくるか来ないかの声で、各々がそれぞれのペースで祈りを捧げているようだ。
ぼくもここまで来たのだ。せっかくだから壁に触れてみよう。
壁に手を触れ、他の人たちと同じように、頭を下げ、目を閉じてみる。
すると不思議な感覚がぼくの中に起こる。
壁に触れた手を通じて、自分というものの境界が拡張していくような・・・
自分というものが壁に吸い込まれていく、いや壁そのものとつながっていくような感覚。
自分ひとりというよりかは壁そのもの、そして同じく壁に向かって祈りを捧げる人たちとの奇妙な一体感のようなものを感じたのだ。
あくまでこれはぼくの主観的な感覚にすぎない。
でも、ここがなぜこんなにも人を引き寄せるのかというのがほんの少し感じられたような気がした。
だからこそここは聖地なのだ。
ユダヤ教という文化と歴史を持っていないぼくですらこうなのだ。
ユダヤ人にとってこの壁のもたらす宗教的な一体感はどれほどのものになるのだろう。
ぼくには想像できない。
そして壁の右側には仕切りが立っている。
なぜこのような仕切りがされているのだろう。
その答えは、この仕切りの向こう側は女性と子供のためのお祈り場所になっているからだ。
男性と女性は完全に分けられているのである。
仕切りの向こう側はこのようになっている。
ユダヤ人の小学生くらいの子供たちだろうか。多くの子供たちが遠足のような形で先生に率いられてここに来ている。
そして子供たちがここで元気な声で歌を歌っていたのである。
正直、嘆きの壁で嘆いている人をぼくは一人も見なかった。
嘆き悲しむ声よりも、この嘆きの壁では子供たちの元気な歌声が響いている。
厳かな雰囲気とはまた違った空気が流れていた。
嘆きの壁に触れることで、聖地としての存在感をぼくは感じることが出来た。
だがその一方でのどかな雰囲気の嘆きの壁も目の当たりにすることとなった。
ぼくが見た平日昼間の嘆きの壁はこのようなものだった。
だが、またあとの記事ではまったく違った姿の嘆きの壁を紹介することになる。
さて、次に向かうはイエス・キリストのお墓、聖墳墓教会だ。
続く
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