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エルサレム旧市街散策~オリーブ山からの眺めとゲッセマネの園 イスラエル編②

エルサレム
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エルサレム旧市街散策~オリーブ山からの眺めとゲッセマネの園 僧侶上田隆弘の世界一周記―イスラエル編②

4月3日。今日は朝からエルサレム旧市街を散策する。

この旧市街のエリアの中に、世界三大宗教の聖地が一堂に会しているのだ。

地図を見て頂くとわかる通り、エルサレムの旧市街は1キロ四方にも満たないくらいの大きさだ。

その中に、歴史上重大な役割を果たす宗教施設が密集して建っているのだ。

今日の散策のスタートは旧市街の東側にあるオリーブ山。

ここから旧市街を眺めることができる。

まずは全体像を把握しようという狙いだ。

まず手前に見える壁がエルサレム旧市街の城壁だ。この壁の先からがエルサレム旧市街にあたる。

そしてなんといっても、圧倒的な存在感を示すのが岩のドームだ。

これがイスラム教の聖地である。

ドームの屋根は金色に輝き、壁面は青のタイルで彩られている。石灰岩の壁しかないこのエルサレムの景色にあって、その金色と青が一層際立っている。

この距離から見ても美しい。

そして写真の奥には高層ビルも見える。

そのエリアは新市街と言われ、モダンな街並みが広がっている。その街並みにぼくは後々衝撃を受けることになる。

オリーブ山から旧市街の方向へ向かって坂道を下っていくと、緑豊かなエリアにぶつかる。

それがゲッセマネの園だ。

ここには立派なオリーブの木が植えられている。ゲッセマネという地名の由来もこのオリーブの木から来ているそうだ。

ここが有名なのは、新約聖書においてイエス・キリストの身に起きた重要な物語の舞台としてここが登場するからである。

地面にひれ伏したイエス(ヴァシリー・ペロフ作)Wikipediaより

イエスは最後の晩餐の後、この地で神に祈りを捧げた。

そしてもう一つ、このゲッセマネの園こそ、イエスが弟子のユダに裏切られて捕まってしまう場所なのだ。

キリスト教徒にとって、イエスが裏切られ捕えられてしまうというのは決定的に重要な出来事である。

ここでイエスが捕えられた後、そのまま十字架での処刑へと進んでいくからだ。

イエスの死がどんな意味を持つのか。ユダの裏切りは本当は何を意味していたのだろうか。

それを話し出すとおそらくそれだけでとてつもない分量になってしまう。

キリスト教に馴染みが薄いぼくたちにとって、それらはなかなか触れることのない問いだ。

だが、キリスト教徒はイエスの死を非常に重く考えている。

なぜイエスは死ななければならなかったのか。

イエスが救い主ならばなぜ自分を救わないのか。

そういう議論の積み重ねが今日のキリスト教につながっているのだ。

一番大きなオリーブの木の下に、「Peace」という文字が形作られていた。

世界の紛争地の象徴として語られるイスラエルにあって、この「Peace」がなんとも皮肉に感じられてしまったのはぼくの見方が歪んでいるからなのだろうか。

宗教は平和を願う。

だが、それは自分の集団内での平和であることが往々にしてある。

ぼくはいつもそのことに苦しむ。

人を救うはずの宗教が人を傷つける理由になるという宗教の負の側面も、ぼくは認めなければならないのだ。

「自分たちが絶対に正しく、相手は悪いものだ。

宗教はそういう風に相手を区別する。だから悪いのだ。宗教なんて必要ない。」

言いたいことはわかる。でも、これは極論だ。

宗教はそんなに単純に割り切れるようなものではない。政治や時代や文化や経済など、あらゆるものが絡んで存在している。

たしかに宗教の言う平和は自分の集団内の平和だという側面はある。

でも、それだけが宗教のすべてではない。

きっとそれをも超えていけるあり方があるはずだ。

時代が経るにしたがって、変わっていくものがあるはず。

ぼくはそう信じたい。

この木の前でもの思いにふけりながら、旧市街に向けて再び足を踏み出すのであった。

続く

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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