仏教

スリランカスリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

石野明子『五感でたのしむ!輝きの島スリランカへ』~魅力満載の観光地としてのスリランカを知るのにおすすめのガイドブック!

本書『五感でたのしむ!輝きの島スリランカへ』は観光地としてのスリランカを知るのにおすすめのガイドブックです。この本を読めばスリランカに行きたくなること間違いなしです。魅力あふれるスリランカの名所やグルメなどを楽しく見ていくことになります。

それにしてもこの本の写真の素晴らしさたるや!ただ単に写真が上手というだけでなくスリランカへの愛も感じます。レイアウトも綺麗で見やすく、読んでるだけでワクワクしてきます。

これはぜひぜひおすすめしたいガイドブックです。

南方熊楠僧侶の日記

嶋本隆光『南方熊楠と猫とイスラーム』~従来の熊楠像は本当に正しかったのか?偉人研究のあり方を問う刺激的な一冊!

本作『南方熊楠と猫とイスラーム』は従来の南方熊楠に関する参考書とは一線を画す作品となっています。

南方熊楠といえば「天才的な資質をもった博物学者、民俗学者」として知られており、粘菌や植物の研究でも有名です。

南方熊楠は超人的な資料収集や研究範囲の広さによって後の研究者からも尊敬を集めるようになります。そしてその研究者たちによって語られた南方熊楠はまさに時代を先取りした天才、偉人として讃美されることになりました。

ただ、この南方熊楠という人物ははたしてその通りの偉人であったのか。後の研究者たちの讃美に満ちた南方熊楠像は本当に正しいものだったのかということを本書では丁寧に見ていくことになります。

今話題の清水俊史著『ブッダという男』の南方熊楠版ともいえる刺激的な作品です!

南インドインド思想と文化、歴史

辛島昇・坂田貞二編『世界歴史の旅 南インド』~写真満載!チェンナイなど北インドと異なる独特な建築や文化を学ぶのにおすすめ!

今作『世界歴史の旅 南インド』は北インドとは異なる文化を持つ南インドのおすすめのガイドブックです。

本書の特徴は何と言っても写真が満載な点にあります。素晴らしい写真を見ながら南インドの歴史を辿っていくと、自分も南インドにぜひ行ってみたくなります。

私達はインドというと、ひとつのインドを思い浮かべてしまいがちですが、インドは広い!(笑)

日本でも関東と関西では文化が違うように、インドも北と南、いや全方位においてそれぞれの文化があります。

この本を読めば南インドの雰囲気が伝わってきます。 写真も満載ですので南インド入門に格好のガイドブックとなっています。

近現代南インドのバラモンと賛歌インド思想と文化、歴史

小尾淳『近現代南インドのバラモンと賛歌』~タミル人とバクティ信仰。南インドの文化を学ぶのにおすすめ

インドの宗教や文化について数多くの本はあれど、南インドの音楽に特化して書かれた本は貴重です。私もこの視点からインド文化を考えたのは初めてのことでとても新鮮な気持ちでこの本を読むことができました。

私自身、最近ガンジス川上流の聖地ハリドワールやリシケシでヒンドゥー教の祈りの音楽を聴くことになりました。

そのメロディーが今でも耳に残っています。なぜか忘れられない印象的なメロディーでした。初めて聴く私ですらこうなのですからインドの方にとったらどれだけ愛着のあるものだったことでしょう。

本書は当時の音楽家達やその音楽について語られるのでかなりマニアックですが、北インドとは異なる南インドならではの空気感が感じられる興味深い作品です。

思想としての全共闘世代三島由紀夫と日本文学

小阪修平『思想としての全共闘世代』~60年代からの時代精神を著者個人の語りから感じることができるおすすめ作品

学生紛争とは何だったのか。

あの時代を知らない私からすれば、あまりに不思議でどう理解してよいかもわからぬ複雑怪奇な存在でした。

本書は著者の個人的な語りを通して全共闘や赤軍まで見ていきます。

全共闘や学生紛争についての入門として本書は非常におすすめです。この時代を知らない私達若い世代こそこの本を読むべきではないかと思います。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

明日はそんなに暗くないスリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

E・サラッチャンドラ『明日はそんなに暗くない』あらすじと感想~マルクス主義の学生による武装蜂起が起きた1971年スリランカを題材にした小説

この小説とこのタイミングで出会えたことに縁を感じずにはいられません。スリランカに行く前に、私はこの小説を読まねばならなかったのだと強く感じています。

日本の学生紛争について考える上でもこの作品は非常に重要な示唆を与えてくれる作品です。

小説としても非常に読みやすく、私も一気に読み切ってしまいました。さすがスリランカを代表する作家です。

スリランカについてまた新たな視点をくれた素晴らしい作品でした。

ぜひぜひおすすめしたい作品です。

亡き人スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

E・サラッチャンドラ『亡き人』あらすじと感想~あのおしんに匹敵!日本を舞台にスリランカで絶大な人気を博した小説二部作!

あの「おしん」を超える影響力を持っていたスリランカ小説があったとは驚きでした。

著者のサラッチャンドラは実際に1955年に日本を訪れており、その時の強烈な体験が本書にも強く作用していることがうかがわれます。

特に第一部の「亡き人」では語りの主体がスリランカ人画家のデウェンドラにあります。異邦人の彼から見た当時の日本がどのようなものだったかが非常に鮮明に描かれています。その一端はすでに上の解説でも垣間見ることができますが、当時のスリランカ人はこの小説を読んで日本という国をイメージしていたわけです。

当時のスリランカ人が日本をどう見ていたのかということを知る上でもこの作品は貴重なものになるに違いない、そう思い私はこの本を手に取ったのでありました。

祭りと社会変動スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

渋谷利雄『祭りと社会変動—スリランカの儀礼劇と民族紛争—』~スリランカの伝統文化と紛争の背景を学ぶのにおすすめ

この本では農村における人々の生活を見ていくことになります。特に本書のタイトルともなっている儀礼劇についての考察はとても貴重です。一見非科学的にも見える伝統儀礼に込められた深い意義やそこから見えてくるスリランカの複雑な社会事情にきっと驚くと思います。

こうした伝統的な儀礼については以前当ブログでも紹介した上田紀行『スリランカの悪魔祓い』もおすすめです。二冊セットで読むとさらに理解が深まること間違いなしです。

ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

スリランカ海村スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

高桑史子『スリランカ海村の民族史』~海に生きる人々の生活を政治経済、内戦、津波被害の観点から見ていく参考書

この本では単に海村の人々の生活を見ていくだけでなく、政治経済、内戦、宗教、津波被害など大きな観点とも関連づけて語られていきます。

特に、スリランカの仏教を学んでいる私にとっては海村における宗教の問題は非常に強い関心がありましたのでこれはありがたい参考書となりました。

教義や歴史書を読むだけでは見えてこない生活レベルの信仰を考える上でもこの本はとても刺激的です。

そして津波被害とそこからの復興や問題点なども考えさせられるのも大きいです。ビーチリゾートとしても有名なスリランカですが本書を読めば今まで想像もしていなかった海村の存在を知ることになります。私も函館という港町に住んでいるので、海と共に生きることは全く他人事ではありません。日本の多くの方にもその感覚は通じるものがあると思います。

スリランカ水利研究序説スリランカ、ネパール、東南アジアの仏教

中村尚司『スリランカ水利研究序説』~灌漑農業から見るスリランカ。古代に栄えた高度な治水の歴史を知るのにおすすめ

本書『スリランカ水利研究序説―灌漑農業の史的考察』はそのタイトル通り、スリランカの灌漑農業の歴史について学べる作品です。

スリランカはおよそ2000年ほど前から高度な治水技術を持っており、その灌漑農業は国家運営の肝とでも言うべき重要性を持っていました。

「技術ある所に王権あり。王権あるところに宗教あり」ということで、高度な技術とそれを運営する国家は不可分の関係であり、さらにはその権威の正統性を担保する宗教も絡んできます。

これまで私は宗教や政治の観点からスリランカを見てきましたが、この本では灌漑農業という切り口からスリランカを見ていくことになります。いつもとは違った視点からスリランカを見ていける本書はとても刺激的でした。