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『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』あらすじと感想~代表作『ラス・メニーナス』で有名!印象派画家マネが『画家たちの画家』と絶賛したスペインの巨匠

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『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』概要と感想~代表作『ラス・メニーナス』で有名!マネが『画家たちの画家』と絶賛したスペインの巨匠

今回ご紹介するのは2018年に東京美術より発行された大髙保二郎、川瀬佑介著『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』です。

今回ご紹介するのは2007年に東京美術より発行された小林賴子著『もっと知りたいフェルメール 生涯と作品』です。私が読んだのは2018年改訂版第3刷版です。

私はこれまでひのまどかさんの「作曲家の物語シリーズ」でヨーロッパの音楽の歴史をたどってきました。

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この伝記シリーズは作曲家の人生だけではなく時代背景まで詳しく見ていける素晴らしい作品です。そしてその中で出会ったのがメンデルスゾーンであり、そこから私はイギリスの大画家ターナーに興味を持つようになりました。

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そしてこの『もっと知りたいターナー 生涯と作品』がこれまた面白く、これを読んで今度は絵画を通してヨーロッパの歴史、思想、文化を見ていきたいなと私は思ってしまいました。

正直、本を読んでいくスケジュールがかなり押していて厳しい状況なのですが、東京美術さんの絵画シリーズ「ABC アート・ビギナーズ・コレクション」は内容が濃いながらコンパクトに絵画を学んでいけるので今の私にはぴったりなような気がします。

では、早速この本について見ていきましょう。

17世紀、スペイン文化の全盛期に、その画業のほとんどを宮廷画家として活躍したバロックの巨匠ベラスケス。エル・グレコやゴヤとともにスペイン絵画を代表する画家のひとりで、印象派の父・マネは「画家たちの画家」と絶賛しました。ベラスケスが西洋絵画史上で傑出した存在とされる理由とは何か。近世・近代をも凌駕する彼の芸術の秘密とは何か。本書はさまざまなテーマを設け、その芸術の革新性に鋭く迫ります。時代背景、出自、同時代の画家たち、イタリアやフランドル絵画との関係など、最新の研究成果も盛り込まれた充実の評伝画集です。


Amazon商品紹介ページより
ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)Wikipediaより

ベラスケスは17世紀のスペインで活躍した画家です。

ベラスケス『ラス・メニーナス』1656年Wikipediaより

ベラスケスといえばやはりこの絵ですよね。私もマドリードのプラド美術館でこの絵を観た時はその魅力でしばらくそこから動けなくなりました。

プラド美術館 撮影上田隆弘

絵画史を代表する傑作とされる理由もわかる気がしました。

さて、このベラスケスについてプロローグでわかりやすくまとめられていましたので紹介します。少し長くなりますがじっくり読んでいきます。

理想化された世界をアカデミックに描き出すことに辟易し、レアリスムを開拓した19世紀フランスの画家エドゥアール・マネはべラスケスを「画家たちの画家」と呼んだ。彼は1865年、スぺインを訪れプラド美術館でべラスケスの真価に開眼、表面的な再現を超越した絵画独自のリアリズムの一つの頂点をそこに見出す。画業の大半をフェリぺ4世の宮廷画家として過ごしかつ寡作家(現存数で120点程)であったべラスケスの作品の多くは、長らくスペインの王宮で秘蔵され、スパイン国外では広く知られていなかったのである。しかしマネによる「発見」以降は、べラスケスは西洋美術史における最大の画家の一人として不動の地位を与えられている。

べラスケスの芸術は一見平明ながら、「寡黙」でとっつきがたい印象が持たれる。彼の生涯には、人をあやめたり、破産したりするような波乱に満ちたエピソードに欠く。「謹厳」な肖像画を制作し、制作のかたわら宮廷の雑務をこなす廷臣としても、「実直」な人生を歩んだように見える。マネがべラスケスに熱狂し、その後の芸術家たちによっても称賛される理由は、いったい何なのであろうか?。

ここで導入として、べラスケス芸術の革新性を3点に要約してみよう。1点目は、描く対象に向けたまなざしの「無差別」さである。べラスケスは、相手がどのような社会的身分の人であっても「個」として受け入れ、対峙する。モデルの身分や境遇の違いを消し去るのではなく、それを受け入れつつ一人の人間として差別なく向き合い、その人間性を浮かび上がらせる。その特徴は一連の矮人の肖像画に最も顕著に表れている。

2点目は、雰囲気のリアリズムだ。それは、あらゆるディテールを緻密に積み上げてゆくミクロな写実ではなく、重要性や遠近に応じて取捨選択した、マクロな写実、場面全体のリアリズムである。遠くから見ると一つのモチーフとして形を成す荒い色の染みの集積や、ニュートラルなグラデーションによる肖像画の背景は、その最たる例だ。それは人間の視覚の特性を逆手に取った、描き手主体のいわば主観的なリアリズムであり、べラスケスが印象派の技法の先駆たる理由でもある。

3点日は、作品に表された空間(=虚構)と現実空間をつなぐ関係の複雑さにある。それは、作品に介在する視線の複数性、とも言い換えられるだろう。《ラス・メニーナス》(82頁)に描き込まれた画家は、巨大なカンヴァスに何を描いているのか?奥の鏡に映る国王夫妻は、どこに立っているのか?決して答えの出ないそのやり取りにこそ、絵画が単なる自然の模倣のように見えながらもそれに留まらないこと、そしてむしろそれが芸術家によって作り出された虚構であることが巧妙に仄めかされているのである。その意味では、遠ざからないと形を成さない色の染みもまた、現実と虚構の境界をあいまいにし、絵画でしか成し得ない写実の世界の形成に加担しているのである。べラスケスがマネを熱狂させ、また再現芸術としての西洋美術史の頂点を占める理由は、こうした点にあるのではないか。


東京美術、大髙保二郎、川瀬佑介『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』P2-3

ベラスケスの特徴がわかりやすく解説されていますよね。

また、モネやルノアール、セザンヌなどで有名なフランス印象派絵画への道筋を切り開いたエドゥアール・マネとベラスケスの関係も興味深かったです。

エドゥアール・マネ(1832-1883)Wikipediaより
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マネと印象派については上の記事でも以前紹介しました。

後に世界を席巻するフランス印象派の成立にスペインの宮廷画家ベラスケスの影響があったというのは非常に興味深かったです。そういう目線で現地で観れていたらもっと楽しく鑑賞できたのになと思ってしまいました。

『ラス・メニーナス』の他にもベラスケスの傑作はまだまだあります。

この本ではそんなベラスケスの作品をたっぷり味わうことができます。解説もわかりやすく、当時の時代背景も学ぶことができるのでとてもありがたい入門書でした。

そしてこのベラスケスですが、よくよく考えてみるとこれまで当ブログでも紹介したクロードロランニコラ・プッサンと全く同じ世代の画家だったのです。

ベラスケスは1599年から1660年まで生きた画家でした。そしてクロード・ロランは1600年から1682年、ニコラ・プッサンは1594年から1665年というまさしく同時代人です。

この本によればベラスケスはイタリアに何度も旅行に出かけ、プッサンとは深い交流もあったそうです。

後の印象派の成立に強い影響を与えたクロード・ロラン、ニコラプッサンとベラスケスのつながりも知れてこの本は非常に参考になりました。

この本もとてもおすすめです。スペイン旅行に行かれる方には特におすすめしたいです。

以上、「『もっと知りたいベラスケス 生涯と作品』代表作『ラス・メニーナス』で有名!印象派画家マネが『画家たちの画家』と絶賛したスペインの巨匠」でした。

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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