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光永圓道『千日回峰行を生きる』概要と感想~千日回峰行とは何かを学ぶのにおすすめの参考書
今回ご紹介するのは2015年に春秋社より発行された光永圓道著『千日回峰行を生きる』です。
早速この本について見ていきましょう。
断食・断水・不眠・不臥の堂入りの行など、比叡山に伝わる超人的な荒行、回峰行とは何か。
千日回峰行を満行し、今年、十二年籠山行をも満行した大阿闍梨が、その全てを赤裸に語る、驚異の書。
現代において「行」の意味するものとは何か。写真等多数。
Amazon商品紹介ページより
行者の服装(1954年7月発行の国際文化情報社「国際文化画報」より) Wikipedia
本書『千日回峰行を生きる』は比叡山で行われる超人的な修行「千日回峰行」とは一体何なのかを知れるおすすめ作品です。
私がこの本を手に取ったのは前回の記事で紹介した『親鸞像の再構築』という本がきっかけでした。
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本書収録の沙加戸弘著「『恵信御房文書』管見」という論文で恵信尼と親鸞における非常に興味深い事実を知ることができます。
この本の中で親鸞聖人が95日間比叡山から六角堂に参籠していたのは比叡山の回峰行の伝統があったからではないかという説が唱えられていたのです。私はその言葉を聞き震えました。浄土真宗では親鸞が比叡山から離れたことが強調されますが、そうは言ってもやはり親鸞は比叡山の伝統の中に生きていたのだということを改めて気づかされたからです。
というわけで私は親鸞聖人がいた比叡山の伝統をもっと知るために千日回峰行について学べる本はないかと探し始めたのでありました。そして出会ったのが本書です。
本書の著者光永圓道氏は千日回峰行を満行された行者さんです。本書ではそんな光永氏の出家のお話から千日回峰行に挑むまでの道のり、そして回峰行の実体験がわかりやすく説かれます。何より、著者の光永氏の誠実なお人柄がにじみ出てくるような文章で、読んでいるだけでそのひたむきな仏道修行が伝わってくるようです。
ただ、そうは言ってもやはり千日回峰行は常軌を逸した過酷さです。読んでいて唖然とするような内容が語られます。もはや人間業と思えないほどの過酷さです。
そんな信じられないほど過酷な回峰行ですが、なぜそれほど厳しい修行を自ら進んでしなければならないのか、これが私達一般読者からすると非常に興味深いところだと思います。
本書ではそんな疑問についても筆者の率直な思いが綴られています。
私はこの本を読んで頭が上がりませんでした。そして同時に現代においてもこんなに真摯に仏道修行に励んでおられる方がいるということに救いを感じました。
やはり比叡山はすごい。私は素直にそう思います。
そして法然や親鸞、栄西、道元、日蓮などの祖師達も皆比叡山で学び、そこから自らの道を切り開いていきました。逆に言えば、比叡山での学びがあってこその祖師達であります。そうした意味でも比叡山という存在に対して私は畏敬の念を持たずにはいれません。
本書はそんな比叡山で大切にされて来た仏道修行について詳しく知ることができるおすすめ作品です。
そして私はこの本にあまりに刺激を受けたため実際に親鸞聖人が歩いた比叡山雲母坂を登山してきました。
比叡山雲母坂
回峰行の起点 無動寺明王堂
親鸞聖人が歩いた山道を追体験するべく比叡山登山に挑戦した私でしたが、本当に素晴らしい体験となりました。この時の体験は「比叡山登山記(京都修学院~延暦寺)~親鸞聖人も歩いた雲母坂ルートを追体験!」の記事でまとめていますのでぜひ合わせてご参照頂けましたら幸いです。
以上、「光永圓道『千日回峰行を生きる』概要と感想~千日回峰行とは何かを学ぶのにおすすめの参考書」でした。
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千日回峰行を生きる
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