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倉本一宏『藤原氏』概要と感想~奈良・平安時代の中心一族の流れを知るのにおすすめの参考書

藤原氏
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倉本一宏『藤原氏ー権力中枢の一族』概要と感想~奈良・平安時代の中心一族の流れを知るのにおすすめの参考書

今回ご紹介するのは2017年に中央公論新社より発行された倉本一宏著『藤原氏ー権力中枢の一族』です。

早速この本について見ていきましょう。

「大化改新」で功績を残したとされる鎌足に始まる藤原氏。律令国家を完成させた不比等から四家の分立、ミウチ関係を梃子に天皇家と一体化した摂関時代まで権力中枢を占めつづける。中世の武家社会を迎えても五摂家はじめ諸家は枢要な地位を占め、その末裔は近代以降も活躍した。本書は古代国家の成立過程から院政期、そして中世に至る藤原氏千年の動きをたどる。権力をいかにして掴み、後世まで伝えていったかを描く。

Amazon商品紹介ページより
藤原道長(966-1028)Wikipediaより

本書『藤原氏ー権力中枢の一族』は奈良・平安時代の主役とも言える一族、藤原氏の全体像や流れを学ぶのにおすすめの参考書です。

この本について著者は冒頭で次のように述べています。

藤原氏こそ、日本の歴史を動かしてきた主役である。

この列島に国家が形成される過程の七世紀後半から、八世紀の古代国家の成熟過程、十世紀に王朝国家という新しい支配体制に転換する過程、そして十一世紀の摂関政治という政治体制から院政への流れにおいて、藤原氏はつねにその権力の中枢に位置していた。

それどころか、日本が中世の武家社会を迎えてもなお、藤原氏から分立した諸家は重要な位置を占め続けて、「明治維新」に至った。そして近代でも、しばしばその顔を覗かせる。

また、地方に地盤を作った藤原氏の中には、武士化して地方の支配者になった家も数多く見られる。現在の日本人には、かなりの割合で藤原氏の血を引いている人々が存在すると言えるのではなかろうか。

この本では、主に古代国家の成立過程から院政期、そして中世の成立までを舞台として、この藤原氏がいかにして権力をつかみ、それを形を変えながらも後世にまで伝えていったかを描いていきたい。

その様相の中に、日本という国家の権力や政治、そして社会や文化の構造を解明するための手がかりが潜んでいるはずである。たとえば、日本型の王権や権力中枢の問題、政治システムや政治意思決定、官僚制の問題、氏や家といった社会構造の問題、日本文化の問題、そして何より、天皇と臣下との関わりなどである。天皇という君主が武家政権成立後も日本に存在し続けたという歴史事実の謎を解く鍵が、藤原氏の皇位継承構想や政権戦略の中に隠されているように考えられるのである。

中央公論新社より発行された倉本一宏著『藤原氏ー権力中枢の一族』Pⅰーⅱ

藤原氏の始まりは大化の改新で有名な中臣鎌足にさかのぼります。そこから息子の藤原不比等が奈良の律令制を整備し、その四子たる武智麻呂、房前、宇合、麻呂の時代を迎えます。有名な南家、北家、式家、京家の始まりです。

奈良平安の歴史はこの四家を中心に展開されます。後の藤原道長達の摂関政治の直接のルーツになります。

ただ、この四家が登場し始めた頃から登場人物が多くなりすぎて頭が混乱しだすという状況になりがちです。私も大学受験の日本史でものすごく苦労したのを覚えています。そして今私も奈良平安時代の歴史を学び直している中で、やはりこの藤原氏の多さに苦戦しています。

そんな中本書『藤原氏ー権力中枢の一族』は藤原氏にスポットを当ててその流れを見ていけるので複雑な藤原氏の系図をすっきり学ぶことができます。

ただでさえ藤原氏に関しては情報量が膨大です。そんな中他の人物や出来事も網羅すると大変なことになります。そこをこの本では藤原氏に集中して学ぶことができますのでこれはありがたい一冊です。私も混乱していた藤原四家の展開について改めてじっくり学ぶことができました。

著者の語りもわかりやすく、読みやすい一冊となっています。専門用語や出来事の羅列ではなく、歴史の流れを感じることができる参考書です。

日本史の流れを知る上で藤原氏は避けることができない存在です。その藤原氏の全体像を学べるおすすめ本です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「倉本一宏『藤原氏』概要と感想~奈良・平安時代の中心一族の流れを知るのにおすすめの参考書」でした。

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藤原氏―権力中枢の一族 (中公新書)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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