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(82)ラージギル(王舎城)でブッダが寄進された竹林精舎へ

竹林精舎
目次

【インド・スリランカ仏跡紀行】(82)
ラージギル(王舎城)でブッダが寄進された竹林精舎へ

昨晩遅く、ラージギルに着いた私は、翌朝早速仏跡巡りを開始した。

ラージギルはブッダ在世当時の大国マガダ国の首都として知られている。だがブッダの死去後はマガダ国の首都がパータリプトラに移りここもすっかり寂しい土地へと変わってしまったとのこと。無論、当時の王宮なども残っていない。

しかしそのラージギルも近年観光地化が進み、見ての通りの看板が堂々と掲げられていた。仏跡にこれはどうなのだろうと苦笑いである。

私が最初に訪れたのは竹林精舎というブッダ滞在の地だ。

その名の通り、敷地内はたくさんの竹が生えていた。

ここでこの竹林精舎の由来についてざっくりとお話ししよう。

マガダ国はブッダが出家してから最初に向かった地でもある。そしてこの地でかつてブッダはマガダ国王ビンビサーラと出会うことになった。(その出会いについては「⑺ビンビサーラ(頻婆娑羅)王との運命的な出会い!ブッダ出家後最初の目的地マガダ国の王舎城へ」の記事参照)

そしてその時すっかりブッダに心奪われたビンビサーラ王は「もしあなたが道を達成された時は、ぜひまたお会いしましょう。その時はぜひ私の国に再びおいで下さい」と約束し、別れることになった。

そして幾年を経てその約束が果たされる時が来たのである。

あの時の約束通り、ブッダはビンビサーラ王のマガダ国へやって来た。かつて修行者だった頃からブッダは圧倒的なオーラを放っていたが、今や悟りを得てさらに輝く姿にビンビサーラ王は深く感銘を受けた。昔を懐かしみながら王はブッダの教えに耳を傾け、ブッダを改めて自らの王宮に招待する。

後日、王は手厚くブッダやその弟子たちを歓待した。そして王はブッダに次のように切り出したのだ。

「尊い方よ、わたくしはあなたに竹林園を寄進したいと思います。そこは街から遠すぎず近すぎず、喧噪もなく静かで、瞑想するには素晴らしい場所です。ぜひここをあなたの教団の拠り所として頂きたいのです。いかがでしょうか。」

ブッダはその申し出を謹んで受け入れた。これが竹林精舎の成り立ちである。

マガダ国周辺は岩山や乾燥地が多く、このような緑豊かな竹林は珍しいとのこと。たしかにこの精舎は穏やかで涼しげな空気が感じられ、居心地の良い場所であることを体感した。

この竹林精舎はブッダにとってもお気に入りの場所だったようでこれから先何度もここで長期滞在を繰り返したとされている。

ちなみにであるが、ラージギルにはこの竹林精舎の近くに温泉精舎と呼ばれるインドで唯一の温泉があり、現在でも現地の人々が利用している。

温泉精舎の入り口

現在はヒンドゥー教の聖地のようになっており、ここで温泉に浸かりながら沐浴し身を清める場となっている。

私もここを訪れたのだが、中に入って温泉があるエリアまで行ってぎょっとした。階段を降りたその先に横7、8メートル、奥行き数メートルほどの浴槽があり、そこにぎゅうぎゅう詰めになって現地の方が温泉に浸かっていたのだ。

インドの沐浴は男性は下着以外は裸で沐浴するが女性は服を着たまま行う。というわけで男女一緒にこの浴槽に浸かっていたのだが、上から見ただけでもそのお湯がかなり濃い灰色に濁っているのが見えたのである・・・。身体の弱い私はもちろん近づくこともなく退散であった・・・。

私が訪れた日は満月の祝日で特別人が多かったようだが、今なおここは多くの人を惹きつける場所だそう。ブッダもここで入浴したのではないかとも言われている。

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【インド・スリランカ仏跡紀行】の目次・おすすめ記事一覧ページはこちら↓

※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。

「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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