第三結集の地パータリプトラ~「ブッダの渡し」があった場所としても有名なマガダ国の新首都
【インド・スリランカ仏跡紀行】(81)
第三結集の地パータリプトラ~「ブッダの渡し」があった場所としても有名なマガダ国の新首都
ケサリア大塔、ヴァイシャーリーと訪問を続けた私の次の目的地はパータリプトラという地。現在はパトナーという名の大都市である。
ガンジス川に面したこの街はブッダ在世時から交通の要衝であり、ブッダもここからガンジス川を渡り最後の旅へと向かっていったとされている。「ブッダの渡し」と呼ばれるのはこうした理由による。
また、この地が仏教の歴史において重要なのはここで第三結集が行われたとされているからである。「結集(けつじゅう)」とはブッダ亡き後、その教えを統一し確定するための集会のことである。その3回目がここパータリプトラのクムラハールという地で行われたのだ。
ヴァイシャーリーを出発しておよそ2時間後、ついに私達もガンジス川と対面した。私にとっては昨年8月のハリドワール以来のガンジスである。中流域のガンジスを見るのはこれが初めてだ。やはりとてつもなく大きな川である。これには私も興奮した。
クムラハール周辺までやって来た。
現在はここは遺跡というよりは公園のようになっている。
こちらはアショーカ王柱・・・ではなく、当時の建物の柱だそうだ。実に紛らわしい。
私も最初に見た時はすっかり勘違いをしてしまった。もし本当にアショーカ王柱だったらこんな無造作には置かれるはずはないだろう。
そしてここクムラハールは仏教の遺跡というより、地元の公園という雰囲気である。ガイドさんによればここは若者のデートスポットして人気だそうだ。たしかにここは静かで雰囲気もよい。ゆっくり座れるところもある。なるほど、これはたしかに若者達が集まって来てもおかしくない。
そしてこの遺跡には小さな博物館もあり、そこには当時の発掘の様子やこの遺跡の沿革について解説されたボードが展示してあった。
そして左の展示を読んで驚いたのだが、そもそもパータリプトラという古代都市がここパトナにあるのがわかったのが18世紀後半だったというのは実に興味深かった。それまで考古学的な証拠がなかったため正確な位置まではわからなかったようなのである。「さすがインド」と思いたくなるところだが日本の邪馬台国も同じようなものかとふと我に返る。資料が乏しい古代遺跡を特定するというのはやはり大変なことなのだ。
この博物館には他にも年代ごとの発掘風景の写真が展示されていて、古代遺跡がどのように埋まっていたのかがよくわかった。出土品や彫刻などはほとんどない小さな博物館だが、こうした発掘写真やその経緯がわかりやすくまとめられていて、私としてはありがたい場所であった。
ちなみに、先ほど見た紛らわしい柱はこの模型のようなものだったのではないだろうか。ガンジス川の岸辺には川を渡るための渡し場が作られていた。あの柱はそのホールの一部だったのではないかと言われている。そしてここはブッダが最後の旅に出るときに渡ったことから「ブッダの渡し」とも呼ばれている。
また、ここパータリプトラはブッダ時代の大国マガダ国の新首都でもある。ブッダ在世時の旧首都はラージギル(王舎城)という場所で、そこは霊鷲山などブッダゆかりの地が近くにあることでも有名だった。後の記事でラージギルについてお話しするが、ここパータリプトラはガンジス川流域ということで交通の便が非常によい。
そのためここがマガダ国の新首都になり、さらにはアショーカ王で有名なマウリヤ王朝の首都としても繁栄することになる。残念ながらその後は王朝の崩壊とともにすっかり荒廃してしまうことになるのだが、ここがインドの歴史において非常に重要な地であったことは間違いない。
クムラハールを出発した私達は本日の最終目的地ラージギルを目指してひた走った。パトナーからラージギルの宿までは早くても3時間近くはかかる。もうすでに日は傾き始めた。田舎の夜のインド道は危険だ。特にここパトナーやラージギル、ブッダガヤもあるビハール州は治安が悪いことで有名なのだ。近年はモディ政権による強力な取り締まりによって治安はある程度改善されたが、以前はマフィアが跋扈する危険地帯だったそう。そのため日が暮れたらまず外には出ないとガイドさんは言っていた。さすがに緊張感が高まった。
インドの田舎道をひた走る。
まずい、暗くなってきた・・・。
ようやくラージギル周辺に到着。すっかり夜。あと少しで宿へ到着だ。
ラージギル周辺は大変な混雑でなかなか車も進めなかった。ここ最近の観光地化で人口が急激に増えたためこのような混雑が起きているのだそう。周辺もホテルがどんどん建ち、数年前とはかなり違った風景になっているとガイドさんも言っていた。インドはどこに行っても急速な変化が起きている。あのサンカシャですら少しずつ変わりつつあるのだ。ならばこうした有名仏跡は推して図るべしである。
こうして私の最もハードな一日は終了した。さすがに限界である。私は泥のように眠った。
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※以下、この旅行記で参考にしたインド・スリランカの参考書をまとめた記事になります。ぜひご参照ください。
〇「インドの歴史・宗教・文化について知るのにおすすめの参考書一覧」
〇「インド仏教をもっと知りたい方へのおすすめ本一覧」
〇「仏教国スリランカを知るためのおすすめ本一覧」
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