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江田郁夫編『中世宇都宮氏』概要と感想~親鸞を関東に招いた一族?法然に深く帰依した宇都宮頼綱を輩出した関東の名門武家の存在

中世宇都宮氏
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江田郁夫編『中世宇都宮氏 一族の展開と信仰・文芸』概要と感想~親鸞を関東に招いた一族?法然に深く帰依した宇都宮頼綱を輩出した関東の名門武家の存在

今回ご紹介するのは2020年に戎光祥出版より発行された江田郁夫編『中世宇都宮氏 一族の展開と信仰・文芸』です。

早速この本について見ていきましょう。

宗教者を祖とする特異な一族は、なぜ全国各地に繁栄できたのか。
源頼朝・足利尊氏・豊臣秀吉らを支えた東国屈指の名門武士団の多面的な存在形態を、政治・文化・宗教との関係から明らかにする

戎光祥出版商品紹介ページより

今作『中世宇都宮氏 一族の展開と信仰・文芸』は親鸞を関東に招いたとされる名門士族宇都宮氏について詳しく知れるおすすめ作品です。

私達浄土真宗僧侶にとって親鸞聖人がなぜ流罪先の越後から京都に帰らず関東に向かったのかというのは永遠の謎です。もちろんこれまでも数多くの伝承や学説が提出され、様々な仮説が存在していますが親鸞聖人自身が何も語っていない以上、史実として確定することはできません。

そんな中近年、歴史学者今井雅晴氏によって関東における親鸞聖人の研究が注目されています。当ブログでも今井氏の『親鸞聖人の一生』『親鸞の伝承と史実 関東に伝わる聖人像』をご紹介しましたが、まさにそれらの本で重要なポイントとして語られているのがこの宇都宮氏の一族なのです。

宇都宮頼綱(1178-1259)『英雄百首』(歌川貞秀画)Wikipediaより

特に上の画像にある宇都宮頼綱は鎌倉幕府の重鎮として活躍した人物で、和歌の達人としても知られていました。彼は京都との繋がりも強く、京風の文化を身にまとった人物だったそうです。

また、この宇都宮頼綱は熊谷直実の紹介で法然教団の一員として出家したことでも知られています。正確には法然の高弟の証空の弟子になり、その後も法然教団や証空の支援に力を惜しまなかったとされています。

そして真宗僧侶である私にとって重要なのはこの宇都宮頼綱が法然教団と接点を持ったことから、親鸞聖人の関東招聘にこの一族が何らかの影響をもたらしたのではないかとされている点です。今井雅晴氏によればこの宇都宮氏がいたからこそ親鸞聖人が常陸郡笠間の稲田草庵を拠点にできたのではないかと指摘しています。

稲田草庵があった場所に建立された西念寺

親鸞聖人はこの草庵を拠点におよそ20年関東で布教活動を行っています。こうした活動ができたのも宇都宮氏のバックアップがあったのではないかとされています。

本書ではその宇都宮氏の成り立ちや宇都宮頼綱の信仰など、親鸞聖人の関東滞在を考える上で非常に貴重な情報を知れるおすすめ参考書です。

親鸞聖人の関東時代はなかなか話題に上りにくいテーマではありますが、この時代の親鸞聖人の足跡を辿ることも重要なのではないかと今井雅晴氏の著作を読んで改めて感じた次第であります。

本書はその助けになること大の貴重な参考です。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

以上、「江田郁夫編『中世宇都宮氏』概要と感想~親鸞を関東に招いた一族?法然に深く帰依した宇都宮頼綱を輩出した関東の名門武家の存在」でした。

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中世宇都宮氏 一族の展開と信仰・文芸 (戎光祥中世史論集 9)

中世宇都宮氏 一族の展開と信仰・文芸 (戎光祥中世史論集 9)

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この記事を書いた人

真宗木辺派函館錦識寺/上田隆弘/2019年「宗教とは何か」をテーマに80日をかけ13カ国を巡る。その後世界一周記を執筆し全国9社の新聞で『いのちと平和を考える―お坊さんが歩いた世界の国』を連載/読書と珈琲が大好き/

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